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宮古栽培漁業センター 野田 勉 | ||||||||
宮古栽培漁業センターは,開所以来,クロソイの種苗放流技術開発を行ってきました。そして,1999年から開始した宮古湾での放流の結果,宮古魚市場でのクロソイの水揚げは放流開始前の4倍になり,さらに漁業関係者による小型魚の保護,それに伴う大型魚の増加など,資源管理の取り組みが積極的に行われるようになりました(トピックスNo.89,123,129参照)。 今年は,今まで行ってきたクロソイの放流を中心とした技術開発から,新しいステップに進みます。以下にその取り組みをご紹介します。 |
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クロソイの放流は,資源にどのくらい影響を与えているのか? | ||||||||
クロソイの種苗放流は,前述のとおり資源の増大に有効であることがわかりました。 それでは,ここでいったん放流を中止したらどうなるのか? 今年度からの新たな取り組みとして,これまで実施してきたクロソイの放流が,どの程度宮古湾の資源量に影響を与えているか把握し,資源が増大した後の栽培漁業の展開について検討するため,放流を休止して水揚げ量の動向を調べることにしました。 しかし,完全にクロソイの調査をやめる訳ではありません。昨年,一昨年と,藻場と干潟へ放流した効果を検証するため,1歳魚,2歳魚になったクロソイのサンプリングなど,必要な調査は継続し,宮古湾での水揚げ状況等をモニタリングしていく予定です。 |
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図1 クロソイの種苗放流の効果と今後の予測 | ||||||||
ソイ・メバル類の新たな放流手法を開発するために〜湾外での放流種への展開!〜 | ||||||||
クロソイは10cmで放流すると,放流数のおよそ20%という高い割合で市場に水揚げされます。しかし,これは宮古湾内に放流した場合です。湾の外に放流すると,その割合は極めて低くなってしまいます。 天然のクロソイは,湾内の藻場・干潟といった場所で育ちます。そのため,こうした生息に適した場所に放流しないと,効果が現れにくい魚なのです。 |
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写真1 イカナゴシラスと一緒に獲れたメバルの稚魚 |
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クロソイの稚魚が,湾内の藻場・干潟に生息していることは,宮古湾で行った調査で明らかになりました。これに対し,湾内の調査ではまったく獲れないのに,魚市場への水揚げ量が多いキツネメバルという魚がいます。また,同様に湾内では稚魚はなかなか獲れないのに,少し沖合で行われているイカナゴシラス漁では,稚魚がよく見つかるメバルという魚がいます。これらの魚は,湾の外,少し深い所で稚魚が成育しているのではないかと推察しました。 湾内で放流して効果の上がるクロソイの他,湾外に放流適地の可能性があるキツネメバルやメバルの技術開発ができれば,様々な場所でソイ・メバル類の栽培漁業が展開できます。 そこで,キツネメバルやメバルの行動範囲や生活場所を明らかにすることを目的として,ダート型標識を装着して,2008年10月9日に全長12cmのキツネメバル2,000尾,10cmのメバル3,500尾を,宮古湾外の同じ場所に放流しました。 今回放流した,ダート型標識の付いたキツネメバルやメバルを見つけましたら,ぜひ,ご連絡ください(参照:放流情報)。今回放流した1尾1尾が,新たな発見につながる可能性を秘めています。移動経路や生息適地を把握するために,皆様のご協力,よろしくお願いいたします。 |
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写真2 ダート型標識を装着したキツネメバル 写真3 ダート型標識を装着したメバル |
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