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宮古栽培漁業センター 野田 勉 | ||||||||
今年のゴールデンウイークは終わってしまいましたが,新緑のこの季節は絶好の行楽シーズンです。どこへ行っても多くの人たちが出歩いています。 海の中でも水温が上がる5月頃はクロソイ達の動きが活発になります。人間達の行楽とは違って,次世代を残すため,沖合深くからお母さん達が一斉に浅い海の湾奥を目指して大移動を始めるのです。その全長は、ほとんどが40cm以上,体重にすると1kgを軽く超えるような大きなお母さん達です。 |
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さて,今回は,このような少し太めのお母さんクロソイも含めた大型魚の水揚げが増加した事例を紹介します。 クロソイは成長が速いので,9月に10cmで放流した魚は,11ヶ月後から漁獲され始めますが,この時点での大きさは平均で全長約20cm,体重は,100g未満と,かなり物足りないサイズです。 一方,放流1年後の8〜10月には成長量が飛躍的に増加しているので,2ヶ月余りで平均体重はおよそ2倍になっています。 魚体が大型になれば単価も上がるため,1尾当たりの値段は小型魚の数倍になります(図1,写真1)。従って栽培漁業の経済効果を高めるには,クロソイが大きくなるのを待って漁獲することが極めて重要です。 |
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ちょっと我慢してクロソイが大きくなってから獲ってくれると良いのだけれど・・・。私たちは市場に水揚げされる小さなクロソイを見てため息をついていました。でも,心を痛めていたのは我々だけではありません。漁業者の皆さんも『何とかしなくては』と感じていたのです。 私たちが小さなクロソイの水揚げに涙していた頃,すでに漁業者の皆さんは,漁獲した小型魚の再放流をし始めていました。 その効果はてきめんでした。 しばらくたつと水揚げ全体に占める小型魚の割合は約2%となり,当初8%であったのに比べて1/4まで減少しました(図2)。加えてうれしいことに,全長40cm,体重1kgを超えるような大型魚の水揚げ尾数が年々増加傾向を示しています。大型魚は天然魚,放流魚ともに増えていることから,漁業者の皆さんが放した小型魚はしっかり生き残って成長し,大きくなってから水揚げされていることがはっきり表れています(図3)。 |
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宮古栽培漁業センターでは,漁業関係者と密接に連絡を取り合いながら,放流や調査を行っています。水揚げに占める小型魚の減少と大型魚の増加は,クロソイの種苗放流によって漁業関係者の意識改革をもたらした好事例です。 今後も,多方面で協力体制を構築しながら,さらなる放流効果の向上に向けて研究開発を進めていこうと考えています。 <関連記事> トピックスNo.89 クロソイの放流効果1−放流した稚魚がお母さんになって帰ってきています− トピックスNo.123 クロソイの放流効果2−水揚げ量が4倍以上に増えました− |
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