独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
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No.123 クロソイの放流効果2−クロソイって放すと増えるんです。
            なんと!!水揚げ量が4倍以上に増えました−   2008/02/21
宮古栽培漁業センター 野田 勉
 前回は,放流魚がお母さんになって帰ってきているという事例を紹介しましたが,今回はクロソイ種苗の放流により水揚げ量が大幅に増えたというお話です。
写真 朝の宮古魚市場と水揚げされたクロソイ
 クロソイは全長50cm以上に成長するメバルの仲間です。この魚は東北においても大きくなるのが早いうえに,放流してもあまり移動しないことから,北日本では重要な栽培漁業対象魚種となっています。
 岩手県の中央部に位置する宮古湾(図1)では刺し網や定置網でクロソイが漁獲されていますが,水揚げ量は1991年に3.6tであったものが徐々に減り続け,1998年には1t以下になってしまいました(図2)。
 このような状況の中,宮古栽培漁業センターでは1999年からクロソイの種苗放流を開始しました。魚を放すにもただ海へ蒔けば良い・・・と言う訳じゃありません。いたいけな小さな魚を生存競争厳しい世界に旅立たせるわけですから,親元(私のことです)から送り出す大きさや場所,時期など入念にリサーチしました。様々な試験の結果,10cmのクロソイを宮古湾の奥に放流すると高い回収率が得られることが明らかとなりました。

図1 宮古湾 (岩手県の中央部に位置)

図2 宮古魚市場におけるクロソイの水揚げ状況
 このような親の苦労のおかげか,はたまた放したクロソイたちのできが良かったためか,放流を始めた翌年頃から続々と市場に水揚げされ始め(ホップ),その量は3年後に3.4t(ステップ),7年後の昨年に4.2tと,放流開始前の4倍以上(ジャンプ)にまで跳ね上がり,過去最高の値を記録しました。(図2)。
 加えて,市場の水揚げ物に占める放流魚の割合は,なんと全体の約30%となっています。今回お話ししたように,クロソイの水揚げが着実に増加している要因として,お母さんになった放流魚が,次の世代を増やすことにも役立っている可能性があります(前回のトピックス参照)。このように宮古湾におけるクロソイの放流は,お母さんの『産めや,増やせや』効果とあわせて,魚の資源増大に役立った良い例となっています。
 しかし,栽培漁業を効果的に推進するには,私達栽培漁業センターだけでは困難です。実際に水揚げを行う漁業者や,行政を含めた漁業関係者,さらには放流場所に近い場所で生活する住民など,地域全体が連携協力して取り組まなければなりません。

 現在,私達はクロソイの放流効果をより一層高めるため,小さい魚を彼ら本来の『幼稚園』である藻場・干潟に放流する研究を進めていますが,これも地域の協力無くしては不可能です。今後も多方面での連携をお願いしながら,みんなに愛される栽培漁業を模索していこうと考えています。