独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
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No.153 シロメバルの再捕報告が届いています!〜放流後1年目の結果〜  2010/02/10
宮古栽培漁業センター 野田 勉
 宮古栽培漁業センターは,2008年10月にダート型標識を装着した約10cmのシロメバル3,700尾を放流し(トピックスNo.138参照),以降,標識魚の再捕状況を調査しています(さいばいコラムNo.64参照)。

 2009年12月までに合計37件の再捕報告がありました。メバルはメバルだけを取り扱っている釣り専門誌があるほど人気の魚であるためか,釣り人からの報告も多く,37件中17件が一般の釣り人からの報告でした。
 これらの結果から,「放流後1年目」の調査で分かったことを紹介します。
写真1 放流したシロメバル(約10cm)
狭い移動範囲
 標識魚が再捕された場所を調べてみました。
放流場所から15km以上移動していた例もありましたが,2008年に放流した標識魚の78%にあたる29尾は,放流場所から10km以内の範囲で捕獲されていました(図1)。
 このことから,シロメバルは移動範囲の狭い魚であると考えられます。
図1 シロメバルの放流後の移動
全長約20cmまで成長
 再捕された標識魚のうち,全長が判明した個体(32尾)を調べました。
 2009年10月以降,全長19cmのものが3尾再捕されており,これが今までの最大記録となっています。
再捕データをまとめた図2からも,放流魚が順調に成長していることがわかります。



図2 シロメバルの放流後の成長
 現在も標識魚の情報を集めており,放流後2年目に入った今年からは,全長20cmを越える魚の再捕報告も聞かれるのではないか,と期待しています。新しい情報については,また適宜発信していきたいと思います。

 貴重な情報を下さった方々には,この場を借りてお礼申し上げます。
 また,もし標識魚を見つけましたら,こちらまで連絡をお願いいたします。
 シロメバルは漁業のみならず,漁港や船での釣り(遊漁)などの海洋レクリエーションの対象としても関心を集めている魚です。
 宮古栽培漁業センターは,このシロメバルの放流技術開発を進めると同時に,遊漁や漁港活用など,様々な分野と連携した栽培漁業の有り方を模索して行きたいと考えています。

(この内容は岩手県の新聞「岩手日報」の企画掲載「三陸のあす」シリーズでも紹介されました。)
  写真2 成長したシロメバル(19cm)