独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
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No.154 平成21年度栽培漁業技術中央研修会が開催されました  2010/02/18
本部研究推進部栽培管理課 清水 智仁
 栽培漁業技術の普及と定着を目的として,栽培漁業技術中央研修会を毎年開催しています。本年度は,平成22年2月8,9日に東京 大手町サンケイプラザで開催しました。
 研修会には,国,都道府県の行政担当者,試験研究機関,栽培漁業センター等の関係者及び講師の計130名が参加しました。

 近年,放流が遺伝的多様性へ与える影響に配慮して栽培漁業を推進することが求められています。そこで「遺伝的多様性の保全に配慮した栽培漁業」をテーマに,種苗放流のリスク評価と保全方法,その管理体制等について講演と討議が行われました。
 まず,東京海洋大学 北田修一教授より「栽培漁業の遺伝的影響に関する実証的考察」,福山大学 谷口順彦教授より「栽培漁業における遺伝的多様性の保全技術」について講演していただきました。
 また,事例紹介として,平成19年度から農林水産技術会議の実用技術開発事業で実施している「種苗放流が遺伝的多様性に与えるリスクの評価と低減技術の開発」の概要を,西海区水産研究所 有瀧真人 有明海・八代海漁場環境研究センター長から,同事業で取り組んでいる,「神奈川県におけるマダイの栽培漁業と遺伝的多様性について」を,神奈川県水産技術センター 一色竜也主任研究員から,「ホシガレイ栽培漁業における遺伝的多様性の保全」を東北区水産研究所 關野正志主任研究員から講演していただきました。
 次に,愛媛大学南予水産研究センター 松原孝博教授から「希少資源マツカワの遺伝的多様性を保つ種苗生産技術」,瀬戸内海区水産研究所 片町太輔研究員から「日本沿岸におけるトラフグの集団構造と放流魚の自然再生産」について講演していただきました。

 参加者からは遺伝的多様性が失われるリスクを回避するための親魚養成方法,特に必要な親魚保有数,多様性保全の取り組みに伴う種苗生産コスト増への対応について,生態系への影響を考慮した種苗放流や資源管理の考え方,これらの取り組みと今後の方向性ついて,活発な議論が交わされました。

 総合討論では,水産総合研究センター研究推進部 岡研究開発コーディネーターを座長に,遺伝的多様性を保全するための管理単位について議論が行われました。
 ここでは,現状の種苗放流では大きな遺伝的多様性の低下は見られていませんが,少なくとも,その魚種の一世代ごとの頻度で遺伝的多様性のモニタリングを行う必要があることや,事業として遺伝的多様性の評価やリスク管理をするためには,親魚養成,種苗生産の過程を含めた広域連携が必要であることなどについて議論されました。

 研修会に参加した方々は,「責任ある栽培漁業」を推進するため,「遺伝的多様性に配慮した種苗放流」を考える上で参考になったのではないのでしょうか。