独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
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No.128 栽培漁業技術シリーズ No.13
     「ヒラメVNN防除に関するこれまでの取り組み」を刊行しました      2008/05/16
本部業務推進部栽培管理課 清水 智仁
クリックで目次紹介 独立行政法人水産総合研究センターでは体系化された栽培漁業に関わる技術を現場へ普及するために技術シリーズを刊行しています。
 平成5年度に製作した「太平洋北区におけるヒラメ種苗生産技術集」の発刊をスタートに,今回の「ヒラメVNN防除に関するこれまでの取り組み」 で通巻13号となりました。
(pdfファイルはこちらから)

 ヒラメは,海産魚の栽培漁業対象種の中で最も放流尾数が多く,年間2,500万尾の種苗が全国2,000カ所近い場所で放流されている最重要魚種です。地域によっては技術開発段階からすでに事業段階へ移行しており,栽培漁業対象種の代表種と言っても過言ではありません。
 また,我が国の養殖業においても生産額約70億円の規模を誇る重要種です。以前よりヒラメ種苗放流に対する期待は高く,本シリーズ第1号がヒラメ種苗生産技術集として発刊された経緯もあります。

 ウイルス性神経壊死症(VNN)については,1989年頃からシマアジの種苗生産過程において鰾が膨張し,水面に浮上して死亡する仔魚が認められ,その症例が報告されるようになりました。
 水産総合研究センターの栽培漁業センターでは,特にシマアジでのVNN発症を契機に,1991年より原因ウイルスの分離・同定や感染経路の特定,検査体制の整備が行われ,さらには,養殖研究所栽培技術開発センターを中心としてウイルス疾病防除を目的とした技術開発が行われ,多くの成果が上げられました。

 ヒラメでも,1995年に水産総合研究センター宮古栽培漁業センターで初めてVNNの発生が確認され,特に1995年から1998年まで,宮古栽培漁業センターでは全く種苗放流ができない深刻な事態に陥りました。
 そこで,原因ウイルスの検出方法や従来の診断方法の改良,感染経路の特定などを行い,これらをもとに種苗生産現場での防除対策への応用が行われました。
 本疾病が発生した当初は,検査が行える機関も限られていましたが,養殖研究所栽培技術開発センターが診断方法について技術研修を行ったことにより,現在では多くの機関で検査が可能になりました。本書の内容は各現場や機関において充分に応用できるものと思います。

 一方で,本書は必ずしも最新の情報を集めているとは言えませんが,当時の担当者が未知の病に苦しみながら,それでも希望を捨てずに技術開発を行った歴史も読み取れ,この貴重な取り組みが,今後,ヒラメのみならず多くの魚種におけるVNN防除対策の参考になるものと考えられます。

原因ウイルス(本誌より)

生殖腺採取作業(本誌より)