独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
研究情報等
トピックス
No.130 トゲノコギリガザミの量産技術,さらに躍進!
        過去最高の300万尾生産に成功 !!          2008/06/06
玉野栽培漁業センター 芦立 昌一
ノコギリガザミの生態と分布
 ノコギリガザミ類はワタリガニの仲間では最も大きい種で,日本の他にオーストラリアからインド洋西部まで広く分布しています。ノコギリガザミ類は,我が国ではトゲノコギリガザミ Scylla. paramamosain,アミメノコギリガザミ S. serrata,アカテノコギリガザミ S. olivacea の3種の生息が確認され,利根川以南の太平洋側における河口の汽水域に生息しています。このうち玉野栽培漁業センターではトゲノコギリガザミの種苗生産を行っています(写真1)。
 トゲノコギリガザミの寿命は2〜3年で,大きなものでは1kg以上まで成長します。高知県浦戸湾では5〜8月が産卵期で,全甲幅約12cm以上で産卵し,交尾は8〜9月の雌の脱皮時に行われます。雌1尾から200〜500万尾の幼生がふ化します。ふ化後,ゾエア期に5回脱皮してメガロパとなり,さらに1回脱皮して稚ガニとなります。稚ガニの大きさは全甲幅で約3〜4mmです。成長は速く,夏から秋にかけて生まれてから3〜4ヶ月で全甲幅10〜12cmに成長することがわかっています(写真2)。


写真1 トゲノコギリガザミ親ガニ

写真2 トゲノコギリガザミ
    第1齢稚ガニ
これまでの取り組み
 トゲノコギリガザミの種苗生産技術開発は,昭和54年度から玉野栽培漁業センターで始められ,翌年には種苗生産に成功して種苗放流も開始されました。昭和59年度に初めて100万尾以上の種苗生産に成功し,その後発生した疾病についても防除対策を構築することにより,平成6年度以降は毎年100万尾以上の種苗を安定して生産することが可能になっています。また,平成16年度からは大量減耗の原因である感染症等と形態異常の防除技術の開発にも取り組んでいます。

 飼育には撹拌翼を備えた200kl水槽を使います(写真3)。飼育当初は全海水(32〜34‰)で飼育し,徐々に淡水を添加し塩分量を下げ,メガロパ変態時には21〜24‰程度に調整します。これはメガロパになると塩分量の低い河口域に移動し,稚ガニに脱皮し定着するという生態に基づいたものです。
 飼育水にはナンノクロロプシスを添加し,餌料としてシオミズツボワムシを第1〜5齢ゾエア,アルテミアノープリウスを第3齢ゾエア〜メガロパ,配合飼料および冷凍コペポーダを第4齢ゾエア〜稚ガニ,冷凍アミ細片肉をメガロパ〜稚ガニに与えます。飼育水温は24〜30℃で約20日間の飼育で第1齢稚ガニに変態します。生産された種苗の取り上げは排水口に取り上げネットを設置して行い,重量法で尾数を算出します。(写真4〜6)

写真3 種苗生産水槽(200kl)

写真4 取り上げ用ネット
 

写真5 取り上げた稚ガニ

写真6 種苗輸送用水槽とトラック

写真7 換水用ネットに付着した稚ガニ
今年度の取り組み
 今年度は基本的な飼育方法は例年同様でしたが,
1.活力のあるふ化幼生を収容すること
2.活力があり栄養価の高いシオミズツボワムシを給餌すること
3.省力化のためメガロパ以降の餌料を配合飼料主体にすること
等を課題として取り組みました。
 その結果,339万尾の第1,2齢稚ガニを生産することができました。1水槽で218万尾を生産した水槽もあり,いずれも過去10年間では最高の数値でした(写真7,表1,図1)。好結果をもたらした要因のひとつとして,活力のある良質のふ化幼生を収容したことが挙げられますが,218万尾の生産に成功した水槽では夜間に換水したり,酸素通気をしたりと水質悪化防止に努めました。
表1 トゲノコギリガザミ種苗生産結果の概要(平成20年度)
実証試験の取り組み
 生産された種苗は,開発された栽培漁業技術を地域の実状に即した応用技術として確立するため,実証試験用種苗として関係県に提供し,各県と連携しながら中間育成手法および放流手法の開発等に取り組んでいます。