独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばいコラム
No.62 クロソイの活躍!踊る担当者?
2009.8.6
宮古栽培漁業センター 野田 勉
今年も無事7月21日にクロソイの種苗生産が終了しました。
昨年(さいばい日記クロソイ編見てね)同様、全てが順調に…
とはいかなかったのですが、担当者のギリギリの所で踏み止める根性と運の強さ、
そして、そんな担当者の飼育に負けてなるものか(?)と
頑張ったクロソイの逞しさのおかげで、生産を乗り切ることが出来ました。

こうして育て上げられたクロソイたちは、
宮古栽培漁業センターのある岩手県のみならず、
青森県や福島県の漁協などで、その後の成長を調べる試験や、
標識放流などで活躍しているほか、イベントホールなどでの展示でも大活躍しています。
クロソイ
特に、夏休みの今の時期は各地で体験学習や放流会などの催し物が数多く行われます。
今回は、こうした場面で活躍するクロソイと、その担当者のお話です。
■2009年7月26日:栽培漁業体験学習
今日は宮古栽培漁業センターで「栽培漁業体験」を行います。
宮古市民の大人から子供まで、様々な方々を招いて、
栽培漁業とは何か、どういう施設でどんな魚を育てているのか…などを紹介し、
みなさんと一緒に施設や魚の見学、給餌作業、稚魚の放流などを行います。

このイベントには職員全員、そして育てている魚もそれぞれ担当分けして対応します。
給餌作業や稚魚の放流担当は「クロソイ」です。
(野田の飼育に耐えて生き残った)元気なクロソイたちは大きさが4cm。
約10万尾いるので、1日に約3kgの餌が必要です。
育ち盛りのクロソイたちは子供たちの怒濤の給餌にも負けず、ガツガツと餌を食べます。
子供たちがその反応に大喜びした後は、いよいよ稚魚の放流です。
野田のお得意「手作り紙芝居」で、クロソイについて簡単に説明して、
今回放流する魚について知ってもらったあと、栽培漁業センター近くの浜で放流します。
クロソイはわりと丈夫な魚で、子供たちに少し触られたくらいでダメージを受けることはありません。
岸壁から放流すると、あっという間に海藻の間に隠れてしまいます。
この丈夫さもあって、こうしたイベントにも適した魚なのです。

放流効果もあり、イベントでは大活躍と、クロソイは本当に素晴らしい!と思っているのが態度に出てしまったのか、
次の日の地方新聞には、偉そうに腰に手をあてて話をしている担当者が載ったのでした…


 腰に手を当てて説明する担当者。7月29日岩手東海新聞より
■2009年8月3日:稚魚放流会
今日は宮古港で行われるお祭り「ボート天国」。
その中のイベントの一つとして、クロソイの稚魚の放流会が行われます。
クロソイは輸送タンクに積まれて、会場へ。
生きた魚に触れることが出来ることに加え、
会場のアナウンス「これから放流会を行います〜」の効果もあり、
みなさん興味津々でやってきます。
放流イベントの時間が近くなると、結構な人数が集まります。

「みんな、ソイって食べたことあるかな〜?」
反応はちらほら…あ、あれ…?
しかし、このあたりでは手頃な値段で魚屋やスーパーに並んでいる魚なので、
きっと食べたことがあるに違いない!と思いながら、
「今度魚売り場で見てみよう〜」と声をかけます。
拡声器を持つ手と、説明する言葉に気合いが入ります。

クロソイについての説明が終わると、次は放流です。
みなさんに一列にならんでもらい、順番に魚の入ったバケツを渡していきます。
放流会は大人気で、中には、「もう一回やりたい!」という子供たちも。
用意した魚がなくなるまで放流は続きました。
気をつけて、大事に放流してね〜

このように、資源の増大のみならず、
各種放流のイベントでも大活躍するクロソイですが、
ヒラメやカレイなどに比べたら、まだまだ有名とは言えません。
栽培漁業の取り組みや、クロソイをはじめとする栽培漁業対象種について広く知ってもらうため、
毎年、こうしたイベントが目白押しの7月末〜8月上旬は、様々な会場に足を運びます。

イベントではクロソイも頑張っていますが、担当者ももちろん一生懸命です。
説明中、知らずに、身振り手振りを伴っていることも多いようで、撮ってもらった写真を後で見て
「こんな格好で説明していたのか…、踊ってるようにしか見えない…」と思うこともあります。
子供たちの目には、放流したクロソイが、さっと泳いでいく姿が映ったと思いますが、
その担当者はどう映っていたのでしょうか。
これは永遠の謎、いや、知らない方がいいのかもしれません…









 パネル説明中。
 身振り手振りで説明する担当者。
 踊っているようにしか見えません…
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