独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばい日記
クロソイ編 2008年5月の日記





はじめまして〜
クロソイの母ですわ
2008年5月
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 2008年5月31日 少し大きく (飼育11日目)

10日ほど前,職場にカブトムシが現れました。
小学校時代によく採りに行ったことを思い出します。
しかし,こいつの幼虫は母親に不評でした・・・
宮古周辺では毎年5月ぐらいから姿を見かけるようになります。
しかし,今の宮古は季節を逆戻り。
曇り空と肌寒い日々が続き,カブトムシも動きが鈍いです。
明日から6月,そろそろ梅雨の時期でしょうか。



そんな中,クロソイの飼育は土曜も日曜も関係なく進んでいます。
餌をあげたり,底掃除をしたりと,目が離せません。
現在,全長は10mm。飼育開始時は7mmだったので,約3mm大きくなりました。
たった3mmですが,この3mmは大きな違いです。
写真で見ると一目瞭然。




←飼育開始時の仔魚(7mm)



←10mmに成長した仔魚

ほっそりしていた体は少したくましくなり,顔立ちもいかつくなってきました。
この頃から背鰭や尻鰭ができ始めます。
与える餌もクロソイの成長に合わせ、ワムシは卒業して,
アルテミアという少し大きいプランクトンや,配合飼料(金魚の餌のようなもの)に移行していきます。

この時期にワムシからアルテミア,アルテミアから配合飼料と,
餌の切り替えが上手くできるかどうかが,非常に重要なポイントとなります。
新しい餌をちゃんと食べているか,毎日,チェックしています。

今のところ落ち着いていますが,油断は禁物です。
まだ弱い仔魚は新しい餌が入ってきたりして,環境が変わるときに体調を崩しやすいのです。

一方,野田の変化は1ヶ月経ってもあまり見られません。
髪が少し伸びたこと,ヒゲをあまり剃ってないので,無精ヒゲが生えていること,などでしょうか・・・
人間的な成長?・・・大器晩成・・・ということにしておいて下さい・・・
 2008年5月27日 底掃除 (飼育7日目)

皆様,クロソイの新しいトピックスは見ていただきましたか?
こうした仕事も行いながら,クロソイの飼育は進行しています。

クロソイを飼育していると,水槽の底には残った餌や糞,死んだ魚が溜まってきます。
これを掃除して取り除くのが「底掃除」という作業です。
しかし,雑にやるとゴミが舞い上がり,かえって水が汚れてしまうので,特に慎重に行います。
そして,重要なのが死んだ仔魚の計数。
何尾死んだかを数えつつ,その状態を観察しなければなりません。













底掃除作業中

飼育を開始して約1週間,1回目の修羅場が訪れます。
この時期には餌を食べてくれないなど,飼育に適さなかった仔魚が
一気に死んでしまうことがあります。
これを「初期死亡」と呼びます。
死んでしまう仔魚が多い年,少ない年とありますが,野田が来てからは,ほぼ毎年見られています。
摂餌の状況が悪かったことから,今年の初期死亡は多そうだな・・・と感覚的にはわかっていたのですが・・・

ここ数日,万単位で死んだ仔魚がみつかります。今日も・・・
飼育開始から合計して,約10万の仔魚が星になってしまいました。
40万尾いた仔魚は既に30万尾・・・
計数をする度にため息をつく毎日です。

しかし,かわいい子どもたちの死を無駄にはできません。
星になった彼らは,残った仔魚たちがこれから成長していくための貴重な情報となって生きるのです!
でもそれを上手く使えるかは野田の腕次第・・・
水中の酸素濃度の低下など,原因が他にないか確認を行い
初期死亡を最小限にするため,対策を検討します。

厳しい状態ですが,それでも頑張って乗り越えなければ道は開けません。










顕微鏡で観察
餌食いは大丈夫?魚に異常は無い?
 2008年5月23日 飯食ってますか〜? (飼育3日目)

野田の昼食はおにぎりと冷凍食品の弁当です。
誰も作ってくれる人がいないので,自分で作っているのですが
食欲旺盛な野田のおにぎりは通常の3倍くらいのボリュームに見えるようです。
おそらく実質は1.3倍位だと思うのだけど…

さて,飼育が始まって3日目。
クロソイの子どもたちは,とにかく食べます。
約40万尾の仔魚に与えるワムシは1日に3億以上!
一部は食べきれずに水槽から水と一緒に排水されてしまいますが,それでもかなりの量になります。



写真の下の2尾,お腹が膨らんで緑色になっているのがわかるでしょうか?
このように,餌をたくさん食べてくれる仔魚は体全体の状態も良いのです。
今後の成長が期待できます!

一方・・・まだワムシを食べてくれていない仔魚も・・・(写真一番上)
水槽に収容してから3日も経っているのに・・・
水槽の中をのぞくと,あの,目のキラキラが見えます。
これは,水中で自分の体勢を保てない,状態の悪い仔魚です。
もちろん,餌も食べていません。近々,星になってしまうでしょう…
今の段階でこのような仔魚がいるのは,あまり良い兆候ではありません・・・
やっぱり収容した仔魚の状態が良くなかったのか・・・又は担当者(野田)の腕か・・・

仔魚はとても小さいので,水槽に寝そべって観察しないと良く見えません。
こうして,心配そうに水槽に張り付く野田がたびたび見られるのは
仔魚の状態が良くないという証拠なのです。









水槽に貼り付いて観察
格好を気にしている場合じゃないのです・・・
 2008年5月20日 飼育開始!

宮古栽培漁業センターには,魚を育てる飼育棟,餌を増やすワムシ培養棟,実験棟など
様々な建物があり,それらを1日に何往復もしなければなりません。
建物と建物の間には屋根などなく,雨の日はちょっと面倒。
傘を差すほどの距離でもないので,もっぱら小走りで移動しています。

今日は台風の影響で,発達した低気圧が上空を通過中。
横なぐりの雨と風が,容赦なく野田のテンションを奪っていきます。
でも,ゆっくりしてはいられません。今年一番の良い仔魚が産まれたのです!
全長を測ったり,数を数えたりした後,飼育するための水槽へ収容し,
ホースを使って,水ごと仔魚を移します。

  水槽へ仔魚を収容


いよいよ飼育開始です。
クロソイは産まれてすぐに餌を食べるので,早速,仔魚の餌の動物プランクトン(ワムシ)を与えます。
また,水槽の水が透明なままだと,魚が密集し過ぎたり,
壁際に寄って体を傷つけたりしてしまうおそれがあるので,
植物プランクトン(クロレラ)を入れて水を緑色にします。
こうすると,全長わずか7mmしかない仔魚の姿はよく見えなくなりますが
仔魚を顕微鏡で観察してみると,早速餌を食べてくれているのがわかります。
全体の魚に対し,餌を食べている魚の割合(摂餌率という)が高いほど,
仔魚は元気で,その後の成長も良いのですが,例年に比べると摂餌率は若干低めです。

水槽内でキラキラしている仔魚もいます。
キラキラ光っているのは魚の目で,これは,ちゃんと泳いでいない,
仔魚の状態が悪いという証拠でもあります…

良い仔魚だと思ったのだけど…大丈夫かな…?
それでも育て上げねば!
不安一杯の中,飼育がスタートしました。
さあ,これからが本番です!










水槽の様子
水が緑色なのは汚くなっているわけではないのです
 2008年5月18日 不吉な予感…

晴れた日曜日の朝,いつもだったら二度寝するのですが…
クロソイ親子が気になって,今日も職場に来てしまいました。

出産は一昨日(16日)から始まっています。
しかし,仔魚(赤ちゃん魚のこと)は一向に良い状態で産まれてくれません。
水槽をのぞくと仔魚がくるくる回転しています。
くるくる回転しているというのは,典型的な良くない状態です。
前回,飼育準備の話を書きましたが,水槽だけあっても仔魚がいなければ始まりません…
朝,仔魚を目の当たりにして,悩ましい思いをする日々です。
もしかして,これからずっとこういう仔魚しか産まれて来ないのではないか…
種苗生産が無事に開始できるのか…
そもそもさいばい日記が続けられるのか…
…不吉な予感ばかりが頭をよぎります…
先日の日記で,「万事順調にいったためしが無い」と書きましたが,
今年は飼育が始まる前から上手くいってません…ううむ…

宮古も暖かくなってきたので,散髪に行ってきました。
いつもの床屋が,たまたま500円引きでした。
ラッキーだったのですが…余計な所で貴重な運を使った気がします…

今度こそは良い仔魚を頼むよ!クロソイのお母様!


水槽前にて仔魚を見て佇む
 2008年5月13日 飼育水槽の準備

小学校の頃,とあるゲームが人気でした。
―スーパーマリオ。
昔,あんなにやり込んだにもかかわらず,なんでキノコをとると大きくなるのか,
26歳になった今でもわかりません。
よく土管から出入りしていますが,元々は配管工らしいですね。

さて,宮古栽培漁業センターでも,配管を組む男が ……野田です。
クロソイの出産に備えて,飼育水槽の準備を行っているのです。
配管以外にも,水槽を洗ったり,ホース類を取り付けたり,海水を溜めたり…

しかし,これが結構大変です。
ホースといっても通常使うものよりも長く,太く,頑丈で,その分,重いからです。
こうした道具を難なく扱えるようになって一人前なのでしょうけど…まだまだホースに振り回されています。


配管を組んだり

ホースをセットしたり

水槽のチェックをしたり

排水バルブの確認をしたり…


昨年度は野田の欠陥工事が原因で,配管が外れ
大量に魚を死なせてしまう大失敗をしました …今でも胸が痛む,非常に苦い思い出です。
今年も何度かミスをしているのですが,周りの方々の強力なサポートを得て,何とか事無きを得ています。
もっと注意深く確認をしなければいけませんね…

クロソイの出産日はある程度予想可能ですが,予定日から多少ずれたとしても
こうして事前に準備しておけば安心です。
備えあれば憂いなし!
(先日慌てふためいてしまったので…)

こうして,準備が整いました。あとは出産を待つのみです。
 2008年5月10日 想定外

少し前まで暖かかったのですが,このところ寒い宮古です。
家ではストーブと扇風機が仲良く同居しています。
毎朝,ストーブを点けてからでないと起きられません。
いっそ,このまま二度寝できたらどんなに楽なことか…と思うのですが
そうはいかないのが世の中。

クロソイの出産予定日が近づくと,
毎朝,赤ちゃんが産まれていないかチェックします。
クロソイは夜,日付がかわる頃に子供を産むので
朝イチで確認しなければならないのです。
でも,今日はまだ10日,予定は15日だし,産まれてないだろうなぁ〜と思いながら
出産水槽をのぞくと,
そこにはクロソイの赤ちゃんが泳いでいました…
ええっ,ちょっと待って。
予定より5日も早い!

←今年初の仔魚

水槽の準備も完了してなかったので,水を溜めたり,
赤ちゃんの大きさや数を計数したりして,バタバタ…あ,餌も用意してない…
そんなこんなで完全に冷静さを失った野田が,あわてふためいていると,
クールな諸先輩方から
「これどうするの?」というお言葉を頂く。

冷静になってよくよく見てみると,確かに状態があまり良くありません。
くるくる回転しながら泳いでいたり,既に弱っている赤ちゃんもいたり…
少し餌を与えてみても,食べてくれる赤ちゃんは10尾に1尾程度しかいません。
どうやら,今日産まれた赤ちゃん魚たちは,産まれるにはまだ早すぎたようです。

このような状態を,ここでは「不完全出産」と呼びます。
なかなか餌を食べてくれない魚は,その後の成長や生き残りも良くないのです。
結局,今回産まれた赤ちゃん魚を種苗生産に使うのは中止しました。

…え,産婆さん→野田の腕が悪い…?
それを言われたら何も言えません…
でも次はきっと大丈夫!……だと思います…
 2008年5月8日 お母さんの検診

今度の日曜日は母の日です。
この時期は実家に帰れないので,かわりに三陸の海の幸を送っています。

ところで,みなさん,産まれたときのことを覚えているでしょうか?
野田は産まれたとき,体重が4kg以上もあったそうです。
弟2人は筆者より軽かったのですが,その後逆転し
今では筆者が一番小さくなってしまいました。不思議ですね。

子供をお腹に宿すと1〜2週間に1度,「定期検診」を受けて
赤ちゃんとお母さんの様子をチェックするようです。
うちの母親も,大きなお腹を抱えて,大変だったのだろうなぁと思います…。

クロソイでもこのような検診を行います。
それが,今日行った「カニュレーション」です。
「カニュレーション」とは,細い管をお母さんクロソイのお尻の穴に差し込み,
卵を少し採取して,順調に発達しているか,そうでないかを見極める作業です。

宮古栽培漁業センターでは,約50尾の雌クロソイを飼育していますが
この中から,育ちの揃った,良い卵を持つ親を選び出し,別の水槽に移します。
この方法は,前任の偉大なドクターゴトーことN主任(五島栽培漁業センター勤務)が開発したのですが
卵の様子から,予定出産日まで算出することができるスグレモノです。

今日,採集した卵の発育状態から予定日を計算してみたところ
5月15日頃に出産が開始され,たくさんの子供たちが得られるのは,5月20日ぐらい…と予想されました。
今年は水温が低いせいか,去年より赤ちゃんの育ちが遅いようです。
今後は飼育の準備を急がなければなりません。

気合いを入れて頑張ります!


左:容量150tの大きな水槽からクロソイをすくって…
右:お尻の穴から,お腹の中の子供を少し取り出します



左 :すぐに観察
右上:そろそろ産まれるな(既に魚の形をしています)
右下:もう少し時間がかかるかな(目が出来はじめています)
 2008年5月7日 クロソイのお母さんから

今日は私(クロソイのお母さん)↓から,もう少し詳しく自己紹介をするわね。



生まれは岩手県宮古湾の藻場。年は6歳。
2歳の時に宮古栽培漁業センターにやってきて,今は4年目。
野田より長いのよ。うふふ。
大きさは50cm,重さは2kgくらいかしらね。

前の日記で野田が書いたように,
メバルの仲間では成長が速く,卵じゃなくて直接子供を産むのよ。

クロソイは20年以上生きるの。
だから私はまだまだ若い方。
でも3歳の時にはじめて子供を産んでいるから,今年でもう4回目。
結構ベテランでしょ?
毎年5月ごろ,大体同じ時期に産むわね。
産む数は20万尾くらい。
水槽内にはもう少し年上のお姉さん魚もいるけど,彼女らは30万尾以上産む時もあるわ。

若い頃は産める数が少なかったの。
だからある程度子供が産めるまで,控え組だったけど,
今年から本格的に親魚の仲間入りを果たしました♪
そういった点では,私も担当の野田同様新人ね。

本当の好物は,生きたカタクチイワシやマアジなんだけど,
最近は冷凍物のサバとサンマが中心で少し食傷気味・・・

そして,最後に私達の子供を育てる頼りない担当者(→野田
魚好きなのはいいけれど,技術や研究のみならず,その他全般まだまだヒヨッコの半人前。
某先輩からは「素人に毛が生えた程度」と酷評され,毎日が試練の連続。

こんな人に,私の子供たちを任せていいのっ!?

ということで,連載の始まった「さいばい日記」クロソイ編
でも,ちったぁ真面目にやれと,皆さんハッパかけてやって下さいね☆
 2008年5月2日 自己紹介

宮古栽培漁業センターの野田です。はじめまして。
クロソイの飼育日記を書くことになりました。
まずは自己紹介。
1982年生まれで,埼玉県出身。血液型O型。水瓶座。
独身ですが,家では十数匹の魚たちと同居。
趣味は離島で遊ぶこと。特に南の島。現実島逃とも言います。
センター職員の中では一番の若手です。
宮古栽培漁業センターに来る前は水産庁で働いていました。

異動して来たちょうど2年前,「1ヶ月後に子供産むからよろしくね」と言われて
水槽の中をのぞくと,お腹も体も大きな魚が水槽の底にわらわらと・・・
こうして出会った魚がクロソイでした。

栽培漁業を行うには,早く大きくなる魚が向いています。
「クロソイ」は,あまり名前を聞かない魚かもしれませんが,
日本のメバルの仲間では最も成長が速い上に,約60cmの大きさになるため,
東北や北海道では需要が多く,種苗生産(稚魚を育てる)が行われています。
その数は全国で約200万尾にもなります。
また,卵を産むのではなく,直接子供を産む「胎生魚(たいせいぎょ)」であることも大きな特徴です。

宮古栽培漁業センターでも,このクロソイの種苗生産を行っています。
しかし,野田が来てから,万事順調に行ったためしがありません・・・
まだまだ勉強することが多々あります。

そして・・・
今年もこの時期になり,出産を控えたお母さんクロソイが水槽の中を泳いでいます。

栽培漁業の推進の可能性を秘めたこのクロソイを育て上げるため,頑張りますので,
みなさん,応援よろしくお願いします!







クロソイの親

出産が近くなり,
お腹が大きくなってきています
2008年6月の日記へ