独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばいコラム
No.70 アカアマダイのイラストマー標識作業をお手伝いしてきました
2010.2.24
奄美栽培漁業センター 樋口 健太郎
2010年2月1日、雪のちらつく京都は宮津。
私は、今回はるばる奄美大島からアカアマダイへのイラストマー標識作業の応援をすべく
宮津栽培漁業センターへとやってきました。
とにかく寒い・・・一週間も作業できるのだろうか、
「標識作業がはじめて」というよりも「寒さに耐えられるか」という不安が正直なところだったのです。

宮津栽培漁業センターは、今シーズン7万尾のアカアマダイ種苗の量産に成功しました。
アカアマダイは京都では「クジ」と呼ばれ、ハモと並ぶ京料理の代表的な食材です。
日本近海では、「アカアマダイ」、「シロアマダイ」、「キアマダイ」の3種のアマダイが生息していますが、
その中でもアカアマダイが最もおいしいとされ、非常に市場価値の高い魚種となっています。
しかし、近年、その漁獲量は減少し、種苗放流によるアカアマダイ資源の回復が期待されています。


放流の効果を検証するためには、放流した魚であることが後々わかるように目印(標識)をつけなければなりません。
アカアマダイ種苗への標識は、イラストマーを用いた方法が開発されており、
その有用性が実証されています(トピックスNo.145参照)。

簡単に説明いたしますと、
5〜10cmくらいのアカアマダイ種苗の眉間に注射器を用いてイラストマーを注入します。
あたま・・・?なぜ眉間!?と、驚くかもしれませんが
アカアマダイは3〜4cm以上に成長すると、眉間に透明なゼラチン質のようなものが発達し、立派な“おでこ”ができるのです。
ちょうどここが絶好の注入ポイントってわけなんですね。
ちなみに、イラストマーを注入している時のアカアマダイはいつもこんな顔をしています。


アカアマダイ種苗へイラストマー注入!




イラストマー標識(青色)を施されたアカアマダイ種苗



さて、冬季に標識作業を行うにあたって重要なこと、それはより多くのカイロを身に付けることです。
とにかく朝から夕方までずっと作業を行うわけで、寒さへの対策は十分でなければなりません。
ということで、私も両足、腹、腰にカイロを装着。
そして寒さに負けない強い心を持って作業に臨んだのでした(←こっちの方が重要かも)。

それでも、作業を行っていくうちに、体がだんだん冷えてくるのですが、やっぱり手が一番冷たいんです。
水温は10℃ちょっと。
利き手が右の私は左手で魚を持ち、イラストマー入りの注射器は右手で打ちます。
となると、常に左手は海水中、もしくは、濡れた状態。
さすがに手にカイロは使えません。
終盤に近づくと魚がうまく持てないほど左手が動かなくなってしまいました。
これが正直一番きつかった・・・。

しかし、周りを見渡せば、みなさん黙々と標識作業に没頭しています。



標識作業風景


今回の標識作業には宮津栽培漁業センターの隣りに位置する京都府海洋センターの方々も
大勢応援にかけつけてくれていました。本当にありがとうございました。
このなんというか、ある意味熱気あふれる雰囲気に
私も、寒さに怖じ気づいている場合ではないと気合が入り、
「もうひとがんばりするぞ」
と、やる気が出ました。

また、各々が標識した種苗の数を1つの計数用カウンターでカウントしていくのですが、
どんどんカウント数が増えていき、その計数用カウンターを見るたび
みなさんの努力の跡に“自分もがんばらなければ”と思いました。



計数用カウンターには皆さんの努力の証が!



こうして、一週間かけて目標の7万尾にイラストマー標識を施すことができました。
今回、私は新人ということもあり、遠方からではありましたが、勉強も兼ねて参加させていただきました。
宮津栽培漁業センターを訪れたのは初めてだったのですが、
作業の合間には私の担当魚種(クロマグロ)とは違う魚やその施設を見学し、
また、いろいろな方々とお話しでき、たいへん勉強になりました。
初めは寒い中での作業にどうなることかと思いましたが、なんとか作業を完了し、充実した出張となりました。

また、滞在中は奄美の鮮やかな赤色や青色の魚とは違った日本海のふつう(?)の魚たちを久々に食し、
お腹も充実、満足して帰路についたのでした。

みなさん本当にお世話になりました。
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