独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
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No.145 眉間にイラストマー標識をつけたアカアマダイを放流!!  2009/04/06
宮津栽培漁業センター 町田 雅春
 京都府ではアカアマダイの市場価値が極めて高く,丹後半島で漁獲されるアカアマダイを「丹後グジ」としてブランド化するよう取り組んでいます。しかし,京都府のアカアマダイの漁獲量は1980年の85トンをピークとして減り続け,昨年は32トンにまで減少しています。そのため,地元漁業者からの種苗放流による資源回復への期待が高まっています。
 宮津栽培漁業センターでは,これまでアカアマダイの種苗量産技術開発に重点を置いて取り組むとともに,放流技術開発の一環として,標識方法や行動生態については水槽内で実験的に研究を進めてきました。しかし,今後は地元の漁業者,関係団体の協力を得ながら,実際に放流して,アカアマダイの放流技術開発を進めることにしました。

 本年3月9日,わたしたちは眉間に赤色のイラストマー標識を施し,さらに右の腹鰭を抜去した(写真1)全長9cmのアカアマダイ2,000尾を若狭湾に放流しました。この放流にあたっては,伊根町や宮津市養老,江尻のアカアマダイの資源回復を願っている漁業者の皆さんにご協力いただき,漁船11隻(写真2)で行いました。


写真1 アカアマダイ種苗の積み込み風景

写真2 イラストマー標識をつけたアカアマダイ
 2〜3月の若狭湾は,最低水温が10℃前後にまで低下しますが,逆にこの水温の低い時期に放流できれば,捕食生物もまだ活動が活発になっていないため,放流直後の食害が軽減できると思われます。
 また,全長3cm以上の種苗であれば巣穴をつくる能力があるため,巣穴への逃避行動も可能となります。
 ただ,この時期の天候はめまぐるしく変わる冬型の気圧配置により,時化が多いという問題がありました。放流日を決めるにあたっての漁業者との調整は難航しましたが,放流当日は運良く,絶好の放流日和となり,伊根町鷲岬沖の水深40〜50mの海域に放流することができました(写真3)。
写真3 アカアマダイ種苗の輸送
 昨年の放流では,輸送中にスカッパー(活け間の換水用の穴)を通して入ってきた海水にアカアマダイが翻弄され,その影響で一部の魚が放流後も表層を泳いだため,カモメに捕食されてしまいました。そこで今年は,活け間のスカッパーを閉めたまま輸送することにしました。アカアマダイは輸送中も落ち着いた状態を保ち(写真4),放流直後から潜行を開始し,今回,カモメによる食害は全くありませんでした(写真5,6)。

 今後も漁業者や組合職員の皆さんにご協力いただきながら,放流試験を進め,市場での調査を進めることにしています。放流したアカアマダイは2年後には20cm位まで成長し,漁獲サイズに達します。旗本退屈男ならぬ眉間にイラストマー標識のあるアカアマダイがたくさん市場に並ぶことを期待しながら,市場通いに励みたいと思っています。

 写真4 輸送中のアカアマダイ種苗

写真5 アカアマダイの放流

 写真6 放流直後の状態