独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばいコラム
No.71 栽培発、地域特産品行き 〜ニシンの消費拡大に向けた取り組み〜
2010.3.19
宮古栽培漁業センター 藤浪 祐一郎
宮古・下閉伊モノづくりネットワーク水産部会   山根 幸伸
サケが産まれた川に戻ってくるというのは良く知られていますが、
ニシンも産まれた場所に戻ってくるということをご存知でしょうか?
ニシンは回遊魚であり、成長すると餌を求めて遠くまで移動しますが、
産卵期になると、ちゃんと産まれた場所に戻ってくるのです。







三陸に春を告げる魚、ニシン。

この鱗がポイントで、
仲買さんは『鱗一枚幾ら』という程の価値があると言います。


宮古栽培漁業センターでは
1984年に岩手県から宮城県の沿岸を産卵場所とするニシンの増殖に関する基礎研究を開始しました。
この研究成果を基に、地元漁協、宮古市、岩手県などから構成される
『宮古湾周辺魚類栽培漁業協議会』のメンバーの手で種苗放流や資源管理の取り組みが続けられています。
もともと宮古では産卵期である3月に少量のニシンが漁獲されるだけでしたが、
放流を続けてきた結果、現在では宮古湾だけで年間1〜1.5トンが安定的に漁獲されるようになりました。

宮古のニシンの特徴は鮮度と魚体の美しさにあります。
通常、ニシンは刺網や底曳網で漁獲されるので、漁獲された時点で魚体に傷がついてしまうことがあります。
しかし、宮古のニシンは小型の定置網で漁獲され、傷どころか鱗もほとんど剥がれていない状態で漁獲・水揚げされます。
当然のことながら味も素晴らしく、スーパーの特売に出てくるような輸入物、冷凍物とは比べ物にならない極上品です。

これ程の素材を見逃す手はありません。
地元漁協、加工業者、岩手県宮古地方振興局からなる『宮古・下閉伊モノづくりネットワーク水産部会』と
宮古栽培漁業センターがメンバーになっている『宮古湾の藻場・干潟を考える会』では
このニシンを宮古の特産品に!と商品開発を進め、
去る3月11日に一般市民を対象として『宮古のニシンを知ってもらう会』を開催し、開発した商品の試食会を行いました。



  地元の加工業者さんの作品。あ、よだれが・・・



  試食会での一コマ。加工業者さんのお話に熱心に聞き入る参加者



加工業者さんに聞いたところ、商品開発をする上で難しかったのは、小骨の多さと身の柔らかさだったそうです。
鮮度が良い→刺身と考えがちですが、刺身にするには小骨を抜かなければなりません。
数も場所も多いニシンの小骨を抜くのは、手間と時間がかかりすぎるため商売にならないのです。
この難関をいかに克服するかが腕の見せ所で、酢や酒粕などを使っているそうですが、
甘すぎず、辛すぎず、ニシンの風味を残しつつ小骨は残さない・・・という加減を見つけるのに苦労したそうです。
いやはや、モノを売るって大変なことなんですね。








ホネニシン。
ニシンやイワシのような身の柔らかい魚は
写真のような細かな骨で体を支えているのです。
このホネ全ては取れませんね・・・。



さて、ニシンの卵といえばご存知、数の子です。
『高級食材なんだから、数の子を売れば良いじゃないか!』って思いませんか?
いやいや、チョット待ってください。
数の子をたくさんとってしまっては、ニシンが減ってしまいます。
高く売れても、次世代の魚が減ってしまっては意味がありません。
ニシンは『金の卵を産むニワトリ』のようなものです。
いつまでもその恩恵を受けるためには、その卵をすぐに食べるのではなく、まず金の卵を産むニワトリを増やし、
『金の卵を産むニワトリの卵と雛を十分確保した上で、余った分を食べる』
ことが必要です。

ニシンも資源が増えたからといって根こそぎ獲るのではなく、
放流や漁獲規制で次世代の卵や稚魚を残しつつ、利用可能な資源を利用するべきですよね。
宮古栽培漁業センターでは、そのための基礎研究をこれからも続けていきます。
また、今後は生産者、消費者、魚屋さん達とも意見交換を行い、
地域が求める栽培漁業のあり方を考えて行きたいと考えています。

海をきれいに、そして豊かに!
さらに漁業者のみなさんも地元経済も元気に!!
それが我々の願いなのです。
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