独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばいコラム
No.68 珍魚 of the year 2009 in 宮古市の魚市場
2009.12.18
宮古栽培漁業センター 野田 勉
年末のこの時期、色々なジャンルで今年のトップ○が発表されています。
宮古は今年9月に台風がいくつか三陸の沖を通り、以降も時々海が荒れています。
そのような海では魚も流されるようで、本来この界隈で獲れるような魚ではないのに、何故か市場に水揚げされるものがいます。
こうした魚は市場では「珍魚」扱いされ、放流魚の市場調査もそっちのけの傍ら、仲買さん達の人だかりができている珍魚の場所へ向かいます。

さて、今年魚市場に水揚げされた「珍魚 of the year 2009 in 宮古市の魚市場」候補を4種類、
野田が独断と偏見で「注目度」「珍魚度」「美味度」の三項目に☆を付けて紹介します。


1.9月17日:ケショウフグ
本来南の海に生息しているはずなのに、何故か三陸海岸の中心まで流されてきたフグの仲間。
目の周りに微妙な化粧。これが異性へのアピールになるかというとそうでもなく…何故ならメスもオスも同じ模様。
しかし、地域のマスコミへはアピール満点だったようで、落ちない化粧をしたフグと銘打たれ、
TVから新聞まで、地域ニュースに多く出演した魚。

なお、これは有毒魚。化けるものには要注意。

 注目度:☆☆☆☆
 珍魚度:☆☆☆
 美味度:×


  ケショウフグ                                    ケショウフグの化粧とつぶらな瞳
2.9月22日:シュモクザメ
頭がハンマーの形というだけでも変なのに、目の付き所がその先(叩く部分)という、超個性的なサメ。
このハンマーの部分は高性能レーダーであり、餌生物の微弱な電流を感知できるらしい。
魚類やエビ・カニ類のみならず、イカ類や小型のサメ・エイ、さらに時として人にも噛みつく、外見に似合わず性格が荒い。
岩手周辺では珍しいが、南の方には意外といるようである。
鰭はフカヒレの材料、体は練り製品と、意外と利用価値は高い。
しかし、レーダー搭載の頭部は使われないようだ…

 注目度:☆☆☆☆
 珍魚度:☆☆
 美味度:☆☆☆


  シュモクザメ、形そのまま、ハンマーヘッドとも呼ばれる。       シュモクザメの顔。どこに目を付けているのでしょう
3.11月11日:アバチャン
「アバチャン」
基本ボケの野田も、この名前と姿形にはツッコミを入れずにはいられない。
何の名前と思いきや、れっきとした魚の正式な名前(標準和名という)である。
「サチコ(コラム参照)」のように地方名というわけでもない。
アバチャンは「カサゴ目クサウオ科」という仲間に属し、普段は深度数百メートルの場所に生息する深海魚とされている。
そして、この魚はなんと、お腹に吸盤を持っていて、岩に張り付くことができる。
姿形といい、生態といい、人間の想像を超えた深海で生息するための「何か」を持っていると思われるのだが、
悲しいかな、市場ではクラゲの破片と間違われ、片隅に落ちていた…。
食べたことはないが、体は寒天質のため、焼いたらほとんど蒸発してしまうのではないか、と思われる…。

 注目度:☆
 珍魚度:☆☆☆☆
 美味度:?


  アバチャン。どこからツッコミを入れたらよいものやら…      顔と口。目が点です。
4.12月15日:リュウグウノツカイ
細長い形をした、神秘的な名前を持つ魚、その名も「リュウグウノツカイ(竜宮の使い)」。
浦島太郎はウミガメに乗って竜宮城へ行ったというが、本当の竜宮の使いはこの魚なのかも。
硬骨魚(サメ・エイ類を除いた魚)の中で、最も長い、世界最長の魚だが、生態などの情報は謎に包まれている。
食べても味はイマイチらしい。

 注目度:☆☆☆☆
 珍魚度:☆☆☆☆☆
 美味度:☆


  野田より長いリュウグウノツカイ。                                   この表情。竜宮城の住人?


せっかく竜宮の使いに会えたのですから、おとひめ様にも会いたいものです。
本当に美女なら特に…あ、でも、タイやヒラメが舞い踊っている光景も捨てがたいですね。
栽培漁業で何とかならないでしょうか…

リュウグウノツカイは「吉兆」を知らせるとされている地域もあるようです。
このコラムを見た人にも、この年末年始、何か良いことが起こることを願っています
(野田はこの魚とツーショットが撮れたことが「良いこと」です♪)。
ちなみに、これらの魚は全て標本として、他の試験研究機関に運ばれて行きました。
さて、あなたの判定は?
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