独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばいコラム
No.49 愛しのサチコ様
2009.03.02
宮古栽培漁業センター 野田 勉

  ←サチコ(=イソバテング)
友人が結婚しました。
幸せな新婚生活を送っているのでしょうか?
かくいう私は魚との共同生活を満喫しています。家で魚、職場で魚ですから☆
そんな私を虜にしそうな魚に、サチコという魚がいます。

サチコといえばNHK紅白歌合戦ですさまじい、いや、素晴らしい衣装に身を包んで出現されるお方が
真っ先に浮かぶかもしれませんが、今回のサチコ、実は宮古周辺の魚の地方名。
本当の名前はイソバテングと言います。

何か山盛りのご飯が印象深い日本昔話に出てきそうな名前ですが、
宮古湾の藻場・干潟に生息する魚の1種です。
知り合いの漁師さんに「何でサチコなの?」と聞いたら、
「綺麗な魚、だからかなぁ?」という答えが返ってきました。
確かに惚れそうなくらい綺麗な大きい鰭をしているのですが、
この魚、ヒゲが生えています。

昨年の春、調査で1.5〜2.5cmほどの子供を偶然発見したのですが、小さいときは全く違う形をしていました。
ヒゲもなければ、鰭も大きくありません。
最初は何の魚かわかりませんでした。
獲れた場所が少し沖合だったことから、この頃の子供は、表層に浮いて生活しているようです。
徐々に大人の形に近づいていき、5cmくらいになると、完全に親と同じような形になって、
藻場などを生活の中心として暮らすと考えられています。
しかし、その移動の方法や生態などは、まだ良くわかっていないのが現状です。

謎のまだまだ多いこの魚ですが、目にするのは比較的容易で、
夏になると、宮古の有名な観光地「浄土ヶ浜」の海水浴場でも見られます。
また、宮古湾のヒラメやクロソイの調査でも、10cm程度の個体が時々混じってきます。
身近でありながら不思議なことが多いと言う点でも魅力的ではないですか?

このサチコ、分類では「ケムシカジカ科」という科に属しています。
サチコという可愛らしい名前と完全に矛盾しています。
そんなサチコ、コラムのネタになっていることなど知るよしもなく、宮古湾の藻場で今日もゆっくりと泳いでいることでしょう。

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