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宮古栽培漁業センター 藤浪 祐一郎 |
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私、栽培漁業センターの職員というのは世を忍ぶ仮の姿。
早朝と夜は本来のヘッポコアングラー(釣人)の姿に戻ります。
そんな私と「さいばい日記〜クロソイ編」でお馴染み、野田とのある日の会話。
ふ:おい野田君、秋に放流した(トピックスNo138参照)キツネメバルとメバルを捕まえたっていう報告あった?
(注 放流した魚を発見したら、放流した機関に報告してもらうようお願いしています。
放流した魚を捕まえることを再捕といい、その報告のことを再捕報告といいます)
の:まだゼロっす。
藤浪さん、そんなに釣りに行っているんだったら、
標識のついた魚(注 放流した魚には標識という目印がついているんです。標識魚ともいいます)釣ってきてくださいよ!
まぁ藤浪さんには無理だと思いますけど!!
ふ: ・・・・・。
そこまで言われて黙っているわけには行きません。
その晩、いつのも大物狙いのタックルからライトタックルに持ち替えて早速 釣り 釣獲調査に向かいました。
極小ジグヘッドにメバル用のワームをセットし、放流地点近くの根魚がいそうなポイントめがけてキャスト!
一投目、アタリなし
二投目、アタリなし
三投目、アタリなし
(中略)
数十投目・・・コツッ キタっ! ビシっ(←あわせる音) ・・・???・・・手応えなし。
あわせ損ねか?と思ったその時、小さな魚が目の前に降ってきました。
「ビシっ」の時に勢いあまって空を飛んできたようです。
釣れた魚はキツネメバル。
良く見ると背中に見覚えのある黄色いダート標識!!
昨年10月に放流したキツネメバルに付けておいた標識です。

記念すべきキツネメバル再捕第1号。
昨年10月に平均全長12.3cmで放流、
3月に13.6cmで藤浪に釣られました。 |
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標識再捕魚第一号ゲットの瞬間でした。
センターに持ち帰り、水槽へ。翌朝、早速野田に再捕の報告。
ふ:おい野田君、注文通り標識魚釣ってきたよ。
の:マジっすか!でも、藤浪さんに釣られるってことは、他のヒトにも相当釣られていますね。
ふ: ・・・・・。
再捕第一号を調べると様々な事がわかりました。
1.放流地点から200m程離れた防波堤にいたこと
2.放流後、あまり成長していないこと
3.遊漁者(漁業者ではない一般の釣り人)に釣られたこと
標識放流は我々に多くの情報を教えてくれます。
1〜2はその魚の移動範囲がどの程度なのか? どのような場所にすんでいるのか? 成長の速さは? などを推測する手がかりとなり、
今後、もっと再捕報告が増えれば、これまで謎に包まれていた生態が解明されると期待されます。
また、今回の再捕で最も注目されたのは3です。
これまで、種苗放流は水揚げ量の増加と言う形で漁業者たちに貢献していることが知られていますが、
私が釣ったように、遊漁者にも貢献しているのもまた事実です。
栽培漁業の本当の効果は広範囲に及んでおり、多くの方々に貢献しているものと考えられます。
この点については、宮古栽培漁業センターが中心となって、栽培漁業の波及効果を調べるプロジェクトを立ち上げ、
2年間かけて本当の意味での「放流効果」というものを考えていきます。
昨年10月に実施したキツネメバルとメバルの放流のことは魚市場や漁協、漁業者には伝えていましたが、
遊漁者へは特に宣伝もしていませんでした。
早速、再捕報告をお願いするポスターと藤浪が釣ったキツネメバルを持って、市内の釣具店に情報提供のお願いに行ってきました。
釣具店では近年メバル釣りが人気で(我々釣り人の間では“メバリング”と呼んでいます)、
メバル用のロッド、リール、ルアー類がよく売れていることから、
メバルの放流は釣具の売り上げ増加にも貢献してくれるだろうと言う話を聞きました。
ポスターの掲示と情報提供も快く引き受けていただいたので、今後、釣人からの再捕報告も寄せられることでしょう。

釣具店の店先に放流を知らせるポスターが! |
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数ヶ月後の藤浪と野田の会話。
の:藤浪さん、キツネメバル釣ってきたんだから、今度はメバル釣ってきてくださいよ!
まぁ藤浪さんには無理だと思いますけど!!
ふ: ・・・・・。
そしてその翌朝。
ふ:おい!野田君!!メバル釣ってきたゾっと
の: ・・・・・!!

記念すべきメバル再捕第1号。
こちらも昨年10月に放流。
放流時の平均全長は9.6cmでしたが、
5月に藤浪に釣られたときは14cmまで成長していました。 |
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メバル1号のアップ。
ちゃんと電話番号入りの標識が残っていますね。
最近になってメバルには A型(胸鰭軟条数が15本)、 B型(16本)、 C型(17本)
の3タイプあることが発表されました。
ちなみに宮古で放流しているメバルはシロメバル(C型)です。 |