独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばいコラム
No.55 栽培対象種に聞く長生きの秘訣?
2009.5.20
宮古栽培漁業センター 野田 勉
世界一の長寿国、日本。
こうしたニュースが年に1回は流れてきます。
海の世界にも長寿の生物がいます。
100歳を超える魚、200年生きるとされる生物…
そのほとんどが日の光の届かない深い海で生活しています。
一方、防波堤からの釣りでも釣られるような浅い場所で生活しているにもかかわらず、ひっそりと生きている長寿の魚がいます。
それが今回紹介する「ムラソイ」です。
  写真1 ムラソイ(アカブチムラソイ)
ムラソイは、れっきとした栽培漁業対象種で、刺身や煮付けなどにするとおいしい魚です。
宮古栽培漁業センターで放流しているクロソイやキツネメバルに近い仲間で、宮古周辺では「べにがら」などとも呼ばれています。
宮古栽培漁業センターではソイ・メバル類の市場調査を行っていますが、ムラソイの漁獲量は宮古魚市場で水揚げされるソイ・メバル類の中で、
キツネメバルとトップの座を争っている種となっています(クロソイは3番手)。 (成果情報参照)

さて、わたしたちが市場で買い取り調査を行って調べるものの一つに、
魚の頭の中にある小さな骨「耳石」があります(写真2)。

この「耳石」は魚の成長とともに大きくなっていくのですが、顕微鏡で観察すると線が見えます。
これは、木の年輪同様、水温が低下して成長が停滞したときにできる線で、1年に1本できます。
そのため、この線を調べることで、何年生きているか判別することができるのです。
例えば、写真3の耳石だと線が2本見えるので、2歳とわかります。
  
 写真2 耳石。小さいです           写真3 クロソイ2歳の耳石、線が2本       写真4 ムラソイ4歳の耳石。年をとると判別が難しい
クロソイは、放流して1年後には体長が20cmを超え、2歳になるころには30cmを超えるものも出てきます。
40cmを超えるものでも、3〜4歳程度です。
この成長の早さは、ソイ・メバル類の中でトップクラスです。
一方、調査のため市場で購入してきたムラソイを調べてみると…
体長20cm程度の魚で耳石に4、5本の線が見られる、つまり、4〜5年は生きていると思われるものがごろごろ出てきました(写真4)。
25cm位だと、7〜8年、それ以上の個体では線が何本あるか、普通の実体顕微鏡ではわかりにくくなります。

20cmから5cm成長するのに4年もかかるのか…と考えていたら、先日、市場で40cm以上のムラソイが水揚げされました。
成長速度の詳しいことはわかりませんが、ざっと計算すると、このムラソイは20年以上生きていることになります。
この調子だと、私より長生きしているムラソイがいてもおかしくありません。

沿岸でゆっくりと、ひっそりと生き、成長していくムラソイ。
御長寿の秘訣はこうした生態にありそうですが、
実はムラソイには「アカブチ」や「ホシナシ」など、いくつかタイプ(亜種)があり、
種類の混乱が生態の謎の混迷に拍車をかけているようです。
この謎を解明しようと、様々な機関で研究が行われていますが…
これらの答えは長生きしているムラソイのみが知っているのかも知れませんね。
写真5 40cmを超えるムラソイ。何歳?
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