独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
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No.146 栽培漁業技術シリーズ No.14
 「ハナサキガニの種苗生産技術 −親ガニの養成,種苗生産,中間育成および放流手法の開発−」を刊行しました  2009/04/10
本部研究推進部栽培管理課 清水 智仁
クリックで目次紹介 独立行政法人水産総合研究センターでは体系化された栽培漁業に関わる技術を現場へ普及するために技術シリーズを刊行しています。
 平成5年度に製作した「太平洋北区におけるヒラメ種苗生産技術集」の発刊をスタートに,今回の「ハナサキガニの種苗生産技術−親ガニの養成,種苗生産,中間育成および放流手法の開発−」 で通巻14号となりました。
(pdfファイルはこちらから)

 ハナサキガニは冷水性の甲殻類で,分布域は日本では北海道道東などに限られており,地域の特産として重要な対象種です。昭和40年代には年間1,000トンを超える漁獲量がありましたが,200海里体制や沿岸資源の減少により平成12年以降は100トン未満に減少し,地元から種苗放流による資源の回復が期待されています。

 このような背景から,社団法人日本栽培漁業協会厚岸事業場(現,独立行政法人水産総合研究センター北海道区水産研究所厚岸栽培技術開発センター)では,種苗生産の技術開発を昭和57年から開始しました。この年に1齢期稚ガニ10万尾(平均生残率43%)の生産に成功し,平成4年度には最高の83万尾(平均生残率65%)を生産するに至りました。その後,量産試規模で稚ガニまで安定して生産できる技術を開発しました。

 放流技術の開発は,根室海域ハナサキガニ資源維持増大対策連絡協議会と共同で取り組み,根室港弁天島沖で中間育成,放流試験を行い,タマネギ袋を用いた中間育成技術の有効性や放流場所として海底に砕石マウンドを設置することで放流地点に長く滞留させることができることなどを実証しました。
 これらの成果を体系化し,後世に残して行くために技術の取りまとめを行いました。

 本書は,生物学的情報の少ないハナサキガニについて,長期・短期の親ガニ養成,幼生飼育を含め,カニ達を技術者が真摯に見つめ,技術的困難に立ち向かい,完成させた技術の塊です。本書で得られたハナサキガニの生物学的情報は,栽培漁業技術に留まらず,水産界全体の財産として遺されてゆくものと考えます。

ハナサキガニ幼生の形態(本誌より)