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玉野栽培漁業センター 小畑 泰弘 | ||||||||
玉野栽培漁業センターではキジハタ人工種苗の標識放流を行い,放流魚の漁獲に占める割合(混入率)を調査しています。放流種苗の大きさが全長9〜10cmと小さいため,用いる標識は小型の種苗に装着可能な腹鰭切除標識を用いています。 腹鰭切除標識とは,左右の腹鰭のどちらかを鰭の付け根からハサミで切除し,切除後の腹鰭の欠損や変形を目印とするものです(写真1,2)。しかし,この標識には切除した腹鰭が完全に再生し天然魚と判別できない場合があるため,推定された混入率が過小になると指摘されていました。 そこで,切除した腹鰭の再生率(判別できなくなる割合)を把握するとともに,鰭を一部切り残した場合の再生率も調べました。 |
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標識試験 | ||||||||
標識放流に用いた種苗のうち100尾を陸上水槽で飼育して,漁獲サイズ(全長約20cm)となる2年後までの腹鰭の再生率を調べた結果,約9割が生残し,1年後の再生率は22%,2年後は32%でした。 このことから,この標識を用いた場合,放流2年後には約1/3程度の放流魚が天然魚と識別できなくなることがわかりました。したがって,放流後の追跡調査から得られた標識魚の再捕尾数を1.5倍すると放流魚の総再捕尾数と見なすことができるわけです。 次に,鰭の付け根から切除した場合(全切除)と付け根から鰭を1mm程度残した場合(90%切除)の再生率を比較しました(写真3,4)。上記の標識放流種苗と同じ方法で飼育した結果,両試験区とも2年後までに約9割が生残し,1年後の再生率は全切除が0%,90%切除が40%,2年後は全切除が17%,90%切除が63%でした。 このことから,この標識は丁寧に鰭の付け根から切除したとしても2割弱は再生すること,切り残しがあると6割以上も再生してしまうことがわかりました。 キジハタの標識放流では約5千〜1万尾の種苗全てに標識を付けるため,鰭の切除作業が雑になることもあり,完全に鰭を付け根から切除できない個体がでてくることもあります。このために,標識放流種苗の腹鰭の再生率は全切除と90%切除の間の数字(32%)になったと思われます。 |
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今後の取り組み | ||||||||
今後は,標識放流種苗の腹鰭の再生率を用いて,追跡調査から得られた標識魚の再捕尾数を補正して,キジハタ種苗放流の効果を明らかにしてきたいと考えています。 さらに,マダイやクロソイで用いられている,より鰭の再生が少ないといわれている鰭抜去(鰭を根本の骨ごと抜き取る方法)の再生試験や新たな標識手法の開発を行い,キジハタの標識放流実験を充実させていきたいと考えています。 |
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