独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
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No.134 ガザミ種苗の標識放流を行いました           2008/07/29
玉野栽培漁業センター 小畑 泰弘
 平成20年7月1〜3日に玉野栽培漁業センターでガザミ種苗への標識の装着を行い,広島県福山市の人工干潟へ放流しました(写真1,2)。

 一般的に,放流効果を正確に調べるには,放流魚に天然魚と識別するための印(標識)を付けておく必要があります。しかし,ガザミを含むエビ・カニ類は,脱皮を繰り返しながら成長するので,付けた標識は脱皮とともに脱落してしまい,放流効果を把握することが困難でした。
 このため,これまでガザミの放流効果については,漁獲量の増加や資源学的手法により把握するにとどまっていました。
↑写真1 標識装着作業

←写真2 稚ガニを放流した干潟
 玉野栽培漁業センターでは,稚ガニの遊泳脚指節にハサミで切れ込みを入れて脱皮後に発現する指節の変形を標識(写真3の丸で囲んだ部分)とし,広島県福山市田尻地先の人工干潟へ放流して,ガザミの放流効果調査を行っています。

 これまでの調査結果から,商品サイズ(全甲幅13cm以上)として水揚げされるガザミの一部に標識のある個体(写真3)を確認し,得られたデータから放流ガザミの回収率を約4%と推定しました。
 本年度は平均全甲幅32.4mmのガザミ標識(左側遊泳脚指節への切れ込み)種苗15,300尾(3日間通算)を放流しました。放流後の追跡調査では,放流ガニを多数発見できました(写真4)。
 写真3↑
標識ガザミ


写真4→
放流翌日に脱皮していた稚ガニを発見
 今後は,大潮干潮時に行う追跡調査において,放流ガニの干潟への定着尾数及び成長などを調査するとともに,9月中旬以降には放流効果を把握するため,漁獲物に占める標識ガザミの割合を調査する予定です。
 この標識は,全甲幅約25mm以上の大型の種苗にしか用いることができませんが,本標識を用いることにより初めて天然ガザミと放流ガザミが識別できるようになったことから,今後も調査を継続し,ガザミ栽培漁業の有効性を明らかにして行きます。