|
||||||||
|
||||||||
|
||||||||
| 五島栽培漁業センター 堀田 卓朗 | ||||||||
ブリ(Seriola quinqueradiata)は「氷見の寒ブリ」や「東の鮭,西の鰤」と言われるように,北陸および西日本での消費量が多く,日本人にとって親しみ深い魚です。また,海面養殖が盛んで,年間生産量は10万トン前後であり,海産魚類養殖の中で生産量が最も多い魚です。ブリ・ハマチ養殖では,主に4〜5月に天然の稚魚(モジャコ)を採捕し,商品サイズになるまで育てます。養殖経営では,成長が速く,肉質が良く,病気にかかりにくい種苗を使うことによって,高品質の魚を効率良くつくることが重要ですが,天然種苗に依存している限り,これらの特性をコントロールすることはできません。また,稚魚が入手できる時期も数量も限られるため,需要に合わせて生産することには困難が伴います。 そこで,水産総合研究センター五島栽培漁業センターは,飼育した親から卵を採取し,それを育てた種苗を使うことで,市場の動向に合わせた生産ができるような技術の開発を進めています。 |
||||||||
| まず,親を飼育する水槽の光や水温などを人為的にコントロールすることによって,これまでは4月頃だった産卵期を2ヶ月早期化することに成功し,さらには4ヶ月早い12月にも受精卵を取る技術(早期採卵)を開発しました。これによって,天然種苗とは違う時期に養殖を始めることが可能になり,周年出荷の態勢が取りやすくなるはずです。 卵から育てた親が産卵し,その卵から仔魚がふ化するというサイクルを確立することを完全養殖と呼びます。これが実現すれば,親魚を何代にもわたって管理でき,成長が速く,病気にも強く,食べても美味しい高品質な系統(品種)を作り出すことが可能になるため,私たちは完全養殖に取り組みました。 そして2008年1月に,人工種苗の第1世代が産んだ卵を用いて数万尾の種苗(第2世代)を生産することに成功し,初めて事業規模での養殖試験を開始する運びとなりました。ブリの完全養殖の第一歩が踏み出されたのです。 |
||||||||
| 完全養殖型の早期採卵と種苗生産 | ||||||||
五島栽培漁業センターでは,3年前の12月に早期採卵によって得られた稚魚を養成し,親に仕立てて採卵する,すなわち,完全養殖型の早期採卵を試みました。その結果,2008年1月9日に100万粒を超える受精卵を産ませることができ,81万尾の仔魚がふ化しました。その内の37.7万尾を60kl水槽に収容し,種苗生産をスタートさせました。途中,共食い防止のための大小選別を経て,3月3〜6日(日齢51〜54日)に平均全長43.6mmの種苗5.1万尾を取り上げ,うち約2.4万尾を陸上水槽で飼育を続けて全長125mm,体重19gになるまで育成しました。そして,その中から養殖試験用の種苗として1.2万尾を選別しました。
|
||||||||
| 五島から鹿児島まで種苗輸送 | ||||||||
|
||||||||
| 養殖試験のスタート | ||||||||
|
||||||||
| 今後の展開 | ||||||||
| 今回の養殖試験は,実際にブリ・ハマチ養殖が行われている海域で,トップレベルの養殖技術と厳格な管理体制のもと,事業規模での育成を行い,天然より早い時期に生産した人工種苗の産業的価値を確かめることがねらいです。今後は,飼育状態の観察と定期的なサンプリングを行い,成長の度合いをはじめとして様々なデータを集積していく予定ですが,これらの魚が大きくなって次の世代を残してくれれば,世代を重ねるごとに天然魚よりも養殖産業に適した性質を持つブリの系統を作ることができます。 この時期に生産された種苗を用いた事業規模での養殖試験は初めての試みであり,予期せぬ問題や課題も出てくるのではないかと思われますが,それらを一つ一つ解決していき,近い将来ブリ・ハマチの完全養殖技術を完成させたいと考えています。 |
||||||||
|
||||||||
(c) Copyright National Center for Stock Enhancement,Fisheries Research Agency All rights reserved. |
||||||||