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小浜栽培漁業センター 山田 達哉 | ||||||||
小浜栽培漁業センターでは,平成19年11月14〜15日の2日間にわたりヒラメの親魚養成における疾病管理と言う名称で,ヒラメネオヘテロボツリウムの寄生症対策を中心とした研修を開催しました。参加は千葉県,福井県,山口県からの計3名でした。 ネオヘテロボツリウム症は,トラフグのヘテロボツリウムと同様にエラムシ症とされており,Neoheterobothrium hirameという単生虫が鰓に寄生し吸血することで貧血症状を呈することからヒラメ貧血症とも呼ばれています。特に夏期の高水温によりヒラメ親魚の活性が低下する時期に発症すると被害は大きくなり,対処が遅れるとほぼ全滅となる場合もあります。 ネオヘテロボツリウム症は1995年に,日本海の中部および西部沿岸の天然ヒラメで初めて確認されると,たちまち陸上養殖のヒラメでも寄生による被害が広がりました。10年程前には各地でヒラメ貧血症に対する話題や会議が頻繁に行われ,被害状況などの調査も行われていたようですが,現在ではあまり話題になることはなくなりました。これは,体の裏が青白くなった重篤な貧血症状の個体が,漁協や魚市場で目にすることが少なくなったことによります。 しかし,ネオヘテロボツリウムは現在でも日本全域に分布していると考えられます。小浜栽培漁業センターが行ったヒラメ0歳魚の調査では寄生率や寄生数に低下傾向はみられないことから,再度被害が拡大しないとも限りません。そのような時のためにも,この研修でネオヘテロボツリウムに関する知識を習得していただきたいと考えています。 研修では,まず,ヒラメ親魚の疾病防除に関する概要とネオヘテロボツリウム症に関する現在までの知見,および防除対策,当歳魚の寄生状況等について紹介しました。講義に続いて,1〜2歳のヒラメを用いて,10%濃塩水浴による駆虫方法について実習を行い,その中で実際にネオヘテロボツリウムがヒラメの上顎や咽頭歯等に寄生している様子を見ていただきました。 2日目は,実際の調査手法と手順に準じた実習を行いました。まず,色見プレートを用いて鰓の色を比較し,続いて採血法,ヘモグロビン量の調査,血液塗抹標本(メイ・ギムザ染色)による血球形態の観察,鰓中の未成熟虫の寄生の確認等を行いました。 研修生の感想としては, 「実技主体で充実していた」 「採血方法や成熟虫の駆除など今後に生かしたい」 「少人数だったので,その分丁寧に実技を教えていただけたのでよかった」 「ネオヘテロボツリウム症の診断方法及び駆虫法については内容として充実し,且つわかりやすい研修内容で,今後の親魚養成に非常に役立っていくと思います」 と概ね良好でした。 しかし,「親魚養成上の疾病管理については2時間講義では時間的に短く,新しい知見も特になく,残念な内容」等の厳しい意見もあり,これらのご意見を参考に,これからの研修内容をさらに充実していきたいと考えています。 |
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![]() ヘモグロビン量の測定 |
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