独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
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No.125 マダラ資源増大への挑戦−3 〜放流したマダラ種苗が続々と!〜   2008/03/31
能登島栽培漁業センター 手塚 信弘
 能登島栽培漁業センターが取り組んでいるマダラの栽培漁業に関する技術開発については,これまで「早期採卵と大型種苗の量産に成功(トピックスNo.54)」や「種苗50万尾を放流(トピックスNo.70)」でご紹介し,それ以降に「資源増大への挑戦」と銘打ってトピックスNo.85では大量放流に4年連続で成功したことを,No.104では放流した種苗がたった2尾でしたが初めて1kg以上の漁獲サイズで発見されたことを紹介しました。
 いままでは,市場で水揚げされた放流魚の数は,ほんのわずかでしたが,最近の調査で放流魚が数多く水揚げされていることがわかり,「資源増大への挑戦」が新しいステップに入りましたので,その概要をご報告したいと思います。

 種苗の放流効果があるのかないのか調べるためには,放流した稚魚が大きくなってどのくらい魚市場に水揚げされるかを調べる必要があります。このために,耳石(人間の三半規管に当たる場所にある小さな骨)に標識を付けたマダラ稚魚を,石川県の能登島町にある能登島栽培漁業センターの地先に放流し,水揚げされたマダラを解剖して耳石を取り出し,顕微鏡で標識の有無を観察することによって放流魚を確認しています(調査の方法や耳石標識についてはトピックスNo.85をご覧ください)。


 この調査は2004年から開始して,年間300〜1,600尾のマダラを調べてきました。2007から2008年にかけては石川県漁協すず支所,能都支所および七尾公設市場の職員の方々やそこに水揚げしている漁業者の皆様のご協力を得ることができ,その結果,10月から2月までの間に,なんと1万尾以上の小型のマダラ(平均全長約300mm)を集めることができました(写真1)。
写真1 冷凍庫に山積みされた調査用のマダラ  


 すず支所,能都支所,七尾公設市場で入手したマダラの耳石を当センターで調査した結果,2006年の春に全長27〜57mmの大きさで約40万尾放流した種苗が,75尾も見つかりました(表1)。
 入手した約1万尾のマダラうちの75尾ですから,2006年に放流した種苗が水揚げされたマダラに混ざっている割合(混入率)は約0.75%となります。我々が調査用に入手したマダラは実際に市場に水揚げされたマダラの一部ですから,市場に水揚げされたマダラの総数を調べて,その数に混入率0.75%を掛ければ,放流種苗の水揚げ尾数の総数を推定することができるわけです。

 また,2006年に放流した種苗の体長は現在30cmですが,マダラは今後も成長しつつ,これから数年間は漁獲されつづけるでしょうから,放流魚の再捕尾数は毎年増えて行くことが期待できます。これから数年間,この調査を続けることで,放流したマダラの何%を水揚げ魚として回収できるか(回収率)を明らかにしたいと考えています。

表1 マダラの混入率調査の結果(2008年2月1日現在)


 マダラの栽培漁業に関する技術開発は放流効果の把握という新たなステップに進んだと言えます。今後も,漁業者,漁協,市場の関係者の皆様のご協力とご理解を頂いて,さらなる努力を続けてマダラ資源の増大に挑戦して行きたいと思っています。