志布志栽培漁業センター 加治 俊二 |
ウナギ目魚類にはハモ,ウナギ,マアナゴなどの重要な水産資源が含まれます。彼らの仔魚は発見された時に新種の生物だと考えられたくらい親の形とはかけはなれた,葉のような形をしており,そのことからレプトケファルス幼生と呼ばれています。
これらの仔魚の飼育は難しく,未開発のままでしたが,世界に先駆け,水産総合研究センター養殖研究所がでサメ卵を主成分とする液状飼料を用いたウナギの仔魚飼育方法(プレスリリース:世界で初めてシラスウナギの人工生産に成功 ―ウナギの完全養殖の実現に目処がつく―)を開発しました。
この飼育方法は仔魚の負の走光性(光の刺激を感じると,その光とは反対の方向へ移動する性質)を利用したもので,「明りを点ける」→「仔魚が光から逃げて底に集まる」→「底に撒いた餌と出会う」→「餌を食べる」という段取りで餌を与えます。
志布志栽培漁業センターでは,この飼育方法を応用してハモの仔魚飼育を試みてきましたが,餌を与えていない仔魚と同じように弱って死んでしまい,ふ化後成長もみられず,10〜11日で全滅するという結果の繰り返しでした。
原因は,ハモはウナギほど負の走光性が強くないため,多くの仔魚が底までたどり着けず,餌を食べることができなかったためでした。
そこで,照度と餌を食べ始める時期の仔魚の走光性の関係について観察したところ,負の走光性は3000ルクスまでは照度が高いほど強くなりますが,それ以上にしても大きな変化はないことが判明しました。 |
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そこで,餌を与える時の照度条件をウナギと同じ200〜400ルクスから4000ルクスに変更して飼育を試みました。
その結果,餌を食べる個体の割合が増え,14の飼育事例のうち13事例でふ化後16〜43日まで生存させることに成功しました。
さらに,5事例では成長が明らかに認められ,最も成長した個体では1日平均0.4mmずつ大きくなり,ふ化後40日目で全長25mmに成長しました(図1,写真1)。 |
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図1 ハモ仔魚の成長(全長)
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写真1 ハモ仔魚の成長 |
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今回の結果により,ハモ仔魚はウナギ仔魚で開発された方法によって,飼育が可能であることが明らかとなりました。
しかし,ほとんどの個体が今までと同様に,ふ化後10〜11日目までに死亡し(図2),最も長く生きた例でも,ふ化後43日目で全長25mmまでしか成長していません。今後もさらなる飼育条件の検討を行い,ハモ仔魚に適した飼育方法を明らかにする必要があります。
世界でまだ例のないシラスハモの飼育を目指して,さらなる研究開発を進めていく考えです。 |
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図2 ハモ仔魚の平均的な生残状況
(ふ化後3日目の収容尾数に対する生残率)
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