独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
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No.115 ホシガレイって知ってますか?
  「干ガレイ」ではありません「星ガレイ」ですよ  2007.09.07
宮古栽培漁業センター 清水 大輔
 天日でジリジリと干したカレイの干物は大変美味しいものです。今回はその「干ガレイ」ではなく,幻のカレイである「星ガレイ」のお話です。
 カレイは白身の刺身だねとして珍重されますが,ホシガレイは別格で旬(初夏〜初秋)の2kgを超えるような大物の刺身は,非常に締った肉質,ほのかな甘みと極めて淡白な味わいで大変美味であるとされています。近年,ホシガレイの資源は全国的に減少しており,なかなかお目にかかれない超高級魚となっています(したがって担当者の私も食べたことがない)。
 宮古栽培漁業センターでは,このホシガレイを対象に資源の回復,漁獲量増大を目的として栽培漁業(稚魚を育てて放流すること)に向けた技術開発を進めており,ここではその取り組みを紹介します。
ホシガレイってどんな魚?

 ホシガレイの身はぼってりと肉厚,表側は茶褐色の荒い鱗に覆われていますが,裏側はやや黄色がかった白色で,小さな黒色の斑点があります。またヒレにも黒い斑点があり,諸説ありますが,これらの斑点を星に見立て「星ガレイ」という名前が付いたとされています(写真1)。


写真1 ホシガレイ 表側(左)と裏側(右)
 日本では主に青森県以南の太平洋沿岸に広く生息していましたが,資源が減少したため,現在資源として残っている場所は,主に三陸,瀬戸内海西部,九州西部などに限られています。このように生息する地域が限られ,その数も少ないことから,ホシガレイの生態は謎に包まれていましたが,近年,ホシガレイの稚魚は3〜4月ごろ沿岸の干潟等に着底し,主にヨコエビ類などの甲殻類(エビやカニの仲間)を食べて大きく育つことなどが明らかにされています。
 また,ホシガレイは成長がとても早く大型(全長60cm,4kgに達する)になること,市場での単価が5,000〜10,000円/kgと高いことから,新たな栽培漁業の対象として各地で注目されています。
宮古栽培漁業センターでの取り組み
 宮古栽培漁業センターでは,平成8年からホシガレイの栽培漁業に関する技術開発を行っています。基本的な飼育方法はヒラメと同様ですが,良い卵がなかなか得られないことや体色の異常などの問題が技術の進展を阻んできました。これらの問題については,大学との共同研究や水研センター内の部門間連携による研究開発を進めており,解決に向けた道筋は見えつつあります(またの機会に紹介します)。近年ではこれらの技術開発の成果を総合的に活用し,万尾単位の稚魚の安定生産が可能となってきました。
 本格的なホシガレイ稚魚の放流に先立ち,当センターでは調査を行い,底質や餌となる生物の分布などから,岩手県の宮古湾奥部の干潟域をモデル海域として選定しました。この海域でのホシガレイ稚魚の放流は平成11年から開始していますが,本年度は7月中旬に31,000尾(過去最大)の稚魚を放流しました(写真2,3)。

写真2 放流を待つホシガレイ稚魚
全長約8cm

写真3 ホシガレイの放流
宮古湾奥部の砂泥域にバケツリレーで放流しました
 ここ数年の調査結果から,放流後の移動はあまり大きくないことが明らかとなり,放流海域で成長したホシガレイは,1年後の6月頃から全長25cmくらいで漁獲が始まります。成長は特にメスが早く,大きいものは1歳で40cm,2歳で50cm,3歳で55cmになります。3歳までの回収率(放流された魚のうち,市場等で水揚げが確認できた魚の割合:再捕尾数/放流尾数×100,単位%)は5〜10%となり,魚価が非常に高いことから十分な経済効果が得られる可能性があります。

 このようにホシガレイの栽培漁業は希望のホシですが,本種の資源は非常に小さいため,人の手で育てた稚魚を大量に放流することで,天然のホシガレイの遺伝的多様性に影響を与える可能性が心配されます。そのため水研センターでは農林水産省のプロジェクトに参加し,遺伝的多様性に与えるリスクの評価とそれを低減する技術開発を宮城・福島両県の関係機関と共同で進めています。
 ホシガレイの栽培漁業に関する技術開発は発展途上ですが,良い条件で放流すれば効果も高く,魚価が非常に高いことから経済的な効果が期待できます。今後はホシガレイの遺伝的な多様性にも配慮しながら資源の回復を図り,とっても美味しいホシガレイを安心・安全に皆様のお口に届くよう技術開発に努力していきたいと思います。