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玉野栽培漁業センター 津崎 龍雄 | ||||||||
全国のガザミ類の漁獲量は近年2,600〜4,200トンの範囲にあり,漁獲金額は約35〜55億円となっています。このうち,瀬戸内海の漁獲量は1,200〜2,500トン,漁獲金額は約22〜32億円であり,全国の5〜6割を占める重要な漁場です(図1)。ガザミ類の漁獲の大部分を占めるガザミの種苗生産技術開発は,昭和30年代後半に本格化し,昭和61年以降,北は秋田県から南は鹿児島県までの二十数機関の栽培漁業センター等で年間5,000万尾前後の種苗が生産され2,000万尾以上の種苗放流が行われるようになりました(図2)。しかしながら,ガザミは放流ガニを天然ガニと区別するための有効な標識がなかったため,放流効果の把握は困難でした。 | ||||||||
図1 ガザミ類の漁獲量の推移 | ||||||||
図2 年度別のガザミ放流状況 | ||||||||
ガザミの放流効果の把握が困難な理由 | ||||||||
一般的に,放流効果を正確に調べるには,放流魚に印(標識)を付けておく必要があります。しかし,ガザミを含むエビ・カニ類は,脱皮を繰り返しながら成長するので,標識を付けても脱皮とともに脱落してしまい,放流効果を把握することが困難でした。したがって,これまでガザミの放流効果については,漁獲量の増加から大雑把に把握するにとどまっていました。 | ||||||||
玉野栽培漁業センターのガザミ放流効果調査の取り組み | ||||||||
玉野栽培漁業センターでは,正確な放流効果調査のために,ガザミに有効な標識の開発を行っています。 クルマエビの尾扇(尻尾で扇状に広がる部分)の一部を切除する方法をガザミに応用して,全甲幅約3cmの稚ガニの遊泳脚指節(甲の一番下に位置する脚の先端部)にハサミで切れ込みを入れて標識とし(写真1),天然環境に近い,広さ7,500m2の素堀池(百島実験施設)に放して調査を行いました。その結果,2ヵ月後に平均全甲幅10cm以上に成長したガザミの75%に,はっきりと標識が残っていました(写真2)。 全甲幅3cmサイズの稚ガニにこの標識を付けて,天然海域の人工干潟(写真3)で放流を行い,放流4ヵ月後からガザミ漁の解禁と同時に市場調査を実施しました。その結果,商品サイズ(全甲幅13cm以上)として水揚げされるガザミの一部に標識痕のある個体を確認しました(写真4)。こうして,標識により放流ガザミが確認できるようになりました。 |
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今後の進め方 | ||||||||
この標識技術を活用し,ガザミの放流効果を把握しながら最適な放流方法,適正な放流サイズ等を詳しく解明して行きたいと思っています。また,天然海域で調査ができない部分については,百島実験施設の素堀池を利用して放流初期の死亡原因等を解明しながら,ガザミの栽培漁業をさらに推進したいと考えています。 | ||||||||
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