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No.052 宮古湾をモデルとした種苗放流および効果推定技術の開発 2004/04/30 |
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1.効果推定技術って何? |
1) 考え方 |
栽培漁業の効果を高めるには,安定して放流できる技術とその効果を的確に判定することが重要で,調査結果を元に技術改善を繰り返す必要があります。そこで,宮古栽培漁業センターでは,宮古湾(図1)をフィールドとしてヒラメ,クロソイ,ニシン稚魚の放流を行い,毎日,市場で水揚げされた全ての魚を調査(図2)し,高い精度で放流魚の回収率(漁獲された放流魚の数/放流した尾数)を推定することを試みました。さらに,天然海域における稚魚の生態調査を通して初期の減耗要因等を推察し,回収率とあわせて,次年度の放流試験に反映させています。
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図1 宮古湾
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図2 市場調査
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2) 平成15年度に行ったこと
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放流した稚魚には全数標識を装着し,市場で全日,全漁獲数の調査を行いました。特に,クロソイでは適正放流サイズを把握するため,安定した回収率が得られている全長10cmを基準群に全長 8cm,6cm,4cmの各群を放流し,回収率を比較しました。あわせて放流初期の生態調査を実施し,回収率に差が生じる原因について検討しました。
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図3 ヒラメ;無眼側(裏側)の黒化
上は天然魚,下が放流した魚
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図4 クロソイ;腹鰭抜去標識
左は放流魚,右は天然魚 |
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図5 ニシン;ALC耳石標識
中央のオレンジ色が標識 |
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2.調査の結果明らかになったこと |
平成15年1月〜12月に宮古魚市場が開催された287日間,放流した3魚種,約34,000尾の調査を行った結果,それぞれの放流魚が全漁獲物のうち8.6〜37.0%の割合で含まれていることが明らかになりました(表1)。この中でクロソイの調査デ−タを解析したところ,10cm群の回収率は13.9〜20.7%であったのに対して8cm群は9.5%,6cm群は10.9%,4cm群では3.1%まで低下していました(表2)。また放流直後から1年間調査した結果,クロソイ稚魚の成育場と考えられる藻場に現れる各放流群の出現率は,市場調査で得られた回収率の値と大きな差がありませんでした。これらのことから,小さなサイズにおける回収率の低下の原因は,放流してから藻場に達するまでのごく短い期間に起こっていることが明らかになり,放流場所を検討するための貴重なデ−タが得られました(図6)。
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表1 市場調査の概要 |
魚 種 |
調査尾数
(尾) |
うち放流魚尾数
(尾) |
放流魚が占める割合
(%) |
備 考 |
ヒラメ |
14,883(全数) |
1,275 |
8.6 |
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クロソイ |
8,567(全数) |
3,169 |
37.0 |
標識の再生は未補正 |
ニシン |
10,550(全数) |
2,478 |
23.5 |
産卵ニシンが対象 |
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表2 クロソイサイズ別放流試験の結果
年 |
放流群 |
放流尾数 |
回収尾数 |
回収率(%) |
H11 |
10cm
8cm |
12,400
11,800 |
1,719
1,126 |
13.9
9.5 |
H12 |
10cm
6cm |
14,800
15,000 |
3,066*
1,526* |
20.7*
10.2* |
H13 |
10cm
4cm |
21,000
18,500 |
4,211*
579* |
20.1*
3.1* |
*回収中
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図6 クロソイの場所別採捕状況
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次へのステップ |
今後,宮古栽培漁業センターでは,クロソイを用いて小さなサイズでも放流の効果が得られる技術を開発するため,天然の稚魚が育っている藻場とそれとは異なる場所の2箇所にそれぞれ全長4cmの魚を放流し,適正な場所の検討を行います。また,ニシンでは放流時期を変えて稚魚を放流し,2年後産卵に帰ってきた魚の回収率から,いつ頃放流すればよいかを調べる予定です。 |
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