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はじめに |
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方法 |
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放流試験は厚岸湖内(図2)で行い,8月に全長7cmの種苗3万尾,9月に3万尾,10月に3.8万尾を放流しました。各放流群は,ALC耳石標識(図3)のリングの数で区別できます。サンプルは,北海道の協力で根室半島周辺から厚岸・釧路,十勝の水域で採集し,成長と水揚げ状況を比較しました(図2)。また放流した年には,放流点付近で摂餌や水温,餌生物の生息密度を調べました。 |
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結果と考察 |
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放流魚の成長は,放流時期の早い群ほど翌年春までの成長が良好で,この間の成長差がその後の漁獲サイズに反映されました(図4)。水揚げ量は,各水域で確保したサンプルの調査結果を漁獲量全体に引き延ばした結果,放流時期の早い群ほど大量でした(表1)。このような3群の漁獲状況の違いは,放流した翌年の春に厚岸沿岸の定置網で混獲された若魚の間で既に見られました(図5)。 |
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図6 放流魚の摂餌率 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() 図7 放流当年における放流点周辺の水温とアミ類密度 |
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このように,比較的広い水域の調査で3群の間に放流サイズと漁獲量の違いが見られたことから,放流時期はマツカワの成長と生き残りに関わる重要な要因であると推定しました。成長と生残の違いは,放流した年内におよそ決定されていたようです。
マツカワは8〜20℃の範囲で高水温ほど高成長を示すことと,湖内のアミ類は8月に卓越し秋に減少することが知られています。従って,成育に適した水温と餌生物の環境条件が比較的長続きする8月の放流が有利と考えられます。さらに本調査に用いた3群は,放流サイズを揃えるために同じ種苗生産群から選別したので,放流するまでの成長履歴も影響を与えているはずです。 一方,根室半島周辺と釧路,十勝水域における厚岸放流群(ALC耳石標識魚)の水揚げ量は厚岸水域の2.3倍以上でした。これは,タグ標識放流魚では再捕個体の88〜100%が厚岸水域に集中するという結果と異なっています。厚岸放流群の移動範囲と放流効果は予想外に大きいようで,広範な調査網を整備することの重要性を改めて認識させられました。 |
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