これまで9回にわたってワムシの培養技術を解説してきましたが,今回はこの流れから少し外れ,ワムシの大きさ(サイズ)に焦点を当てたお話しをします。
通常,ワムシのサイズは,被甲長もしくは背甲長(両者は同じ意味)の長さで表します(写真)。S型ワムシが100〜210μm,L型ワムシが130〜340μm1)で,ワムシのタイプでサイズが異なり,また,同じワムシでも水温2,3),塩分4),餌料5−7),及び飢餓8)などの培養条件によって,サイズが10%前後変化することが報告されています。
ワムシの背甲長測定部位
ふ化したばかりの小さな仔魚は,自分の口の大きさに合ったサイズのワムシを選んで食べることが知られています。特に,クエ・マハタなどのハタ類はふ化仔魚の全長が2mm以下とマダイやヒラメに比べて極端に小さく,口も小さいため,S型ワムシの中でもより小型のワムシを選んで食べることが報告されています9−11)。
また,仔魚は成長するにつれて,より大きなワムシを選ぶようになることも知られています10)。このため,魚の口に合わせたサイズのワムシを与えることは,飼育の重要なポイントです。
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1)大上晧久,前田 譲(1977)シオミズツボワムシの変異に関する研究−I.形態と大きさの変異について.昭和52年度日本水産学会春季大会講演要旨集,25.
2)福所邦彦,岩本 浩(1980)シオミズツボワムシの大きさの季節変化.養殖研報,1,29-37.
3)北島 力,青海忠久,小川敏行,小倉敏義(1981)大型水槽におけるシオミズツボワムシの増殖について.栽培技研,10,99-107.
4)呉羽尚寿,天下谷昭文(1978)ワムシの個体群繁殖に関する実験的研究−II.体幅の大きさの変異.水産増殖,26,88-95.
5)福所邦彦,岩本 浩(1981)シオミズツボワムシの大きさにおよぼす餌の影響.養殖研報,2,1-10.
6)Fukusho,K.and M.Okauchi(1982)Strain and size of the rotifer, Brachionus plicatilis,being cultured in Southeast Asian countries.Bull. Natl. Res. Inst. Aquaculture,3,107-109.
7)岡内正典,福所邦彦(1984)テトラセルミスTetraselmis tetratheleのシオミズツボワムシに対する餌料価値−I.バッチ式培養におけるワムシの増殖.養殖研報,5,13-18.
8)小磯雅彦,桑田 博,日野明徳(2005)短時間の飢餓がシオミズツボワムシの生残,発達,生物学的最小形および卵の大きさに及ぼす影響.水産増殖,53,1-5.
9)與世田兼三,浅見公雄,福本麻衣子,高井良幸,黒川優子,川合真一郎(2003)サイズの異なる2タイプのワムシがスジアラ仔魚の初期摂餌と初期生残に及ぼす影響.水産増殖,51,101-108.
10)田中由香里,坂倉良孝,中田 久,萩原篤志,安本 進(2005)マハタ仔魚のワムシサイズに対する摂餌選択性.日水誌,71,911-916.
11)川辺勝俊,木村ジョンソン(2007)選別した小型S型ワムシを用いたアカハタの種苗生産.栽培技研,35,11-21.
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