独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばいコラム
No.47 うっかり者が見つけた「ウッカリカサゴ」
2009.2.16
宮古栽培漁業センター 野田 勉
冬の宮古魚市場、冷たい三陸の風が吹く中、ケガニの漁が最盛期を迎えます。
オレンジ色に輝くカニの横で、野田の調査しているメバルは出産の時期を迎えます。
クロソイは5月が出産期なのに対し、このメバルは2月くらいに出産するので、そろそろ生産が始まります。
4シーズン目を迎える野田ですが、未だにとんでもないうっかりミスをやってしまい、先輩に大目玉をもらうことも多々あります…
さて、メバルやソイは、カサゴ目というグループに属しています。
その中の仲間「カサゴ」も栽培漁業の対象種で、
仔魚を出産するというメバル・ソイ類と同様の特徴を持っています。

一方、カサゴの種苗生産数は、カサゴ目の中ではダントツのトップ、
海産魚類全体でも5本の指に入ります。
その数は約350万尾、東海〜九州までの幅広い海域で行われています。
カサゴ
…さて、話が戻って岩手県宮古市。
いつものように、朝の魚市場で放流魚の確認をしていると、少し変なカサゴを発見(→)。
市場で物欲しそうな顔をしていたら、気の良い仲買さんから戴くことが出来ました。

よくよく見てみると、確かにカサゴの仲間なのですが…何かが違います。
強いて言えば顔つき…???
ウッカリカサゴ
体に散在する黒く縁取られた白い斑点が特徴
いずれにせよ、この仲間は宮古周辺では珍しいので、
一緒に研究をしている京都大学のエライ先生に連絡をとってみました。

その結果、カサゴはカサゴでも、「ウッカリカサゴ」という名前の魚であることが判明したのです。
本家本元のカサゴと似ているのですが、体の模様が若干異なります。
また、カサゴより深い場所に生息しており、40cm程度まで大きくなるとされています。
もちろん、食用となります。

なぜウッカリカサゴなどという名前が付いてしまったのか?
それは当時魚類の分類を行っていた学者が、見慣れたカサゴに別種(ウッカリカサゴ)がいることについて
論文発表を「うっかり」忘れてしまったため、とか
「うっかり」すると見分けが付かないから、とか言われています。
本当でしょうか…?
さて、うっかり者の野田が市場で見つけたウッカリカサゴですが、先生から
「もしかすると太平洋側の北限記録かも、貴重な標本となります!」
とのメールが帰ってきました。
こうして、カサゴの方のうっかり者は、岩手県三陸海岸からはるばる京都府日本海側まで送られることになりました。

…ウッカリカサゴ、意外な記録になるかもしれません…
身近な場所にも新しい発見はあるものなのですね、改めて感じました。
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