独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばいコラム
No.46 三陸の海から−宮古魚市場のこぼれ話 (5)
2009.1.16
宮古の海はうんまいぞ!!・・・でも体重が
宮古栽培漁業センター 場長 有瀧 真人
宮古(岩手県宮古市)に来て12年になります。
市場に通うと様々な海産物に接しますが、秋から春先は特に美味しいものがたくさん登場し、
北の海の豊穣さと偉大さに感謝の日々が続きます。

まずは、やっぱりサケです。
西日本育ちの私は幼い頃からサケと言えば白く粉の吹いた『塩引き』しか口に入れたことがなかったのですが、
川の味を覚える前の銀毛や春先のトキシラズは紅葉色に染まった身、脂ののった皮下など全く別物です。
おまけに雌はハラコ(イクラのこと)、雄は白子が絶品です。
ばらしたイクラを丼ご飯にいっぱいぶっかけ、生醤油をさっと落としたら息ができないくらいにほおばる幸せ・・・。
パンパンに張った白子を無造作に切り分け、煮付けやフライで・・・ビールやお酒が進みます。







サケとブロッコリーのマヨネーズ炒め
イクラをのせて・・・ヨダレが


ホタテもいけます。
それまで、ホタテなんか、大きいだけで味も薄いし、小柱やタイラギの方が数段上・・・と思っていましたが、
秋口の太鼓のようにふくらんだホタテの貝柱を軽くバターソテーすると甘くて、甘くて、とても貝の身とは思えないくらいです。
宮古湾で育ったカキにも驚かされました。
カキは冬のものだと思われがちですが、ここでは4月、桜の咲く頃が旬です(宮古漁協では『花見ガキ』として時期限定出荷しています)。
産卵前に栄養をたっぷり蓄えた身はグリコーゲンでほんのりクリーム色です。
3年貝になるとむき身を一口ではほおばれません。
生もいいけど、半生くらいにあぶって熱々を口に放り込んだら・・・。








良く肥えたホタテ・・・
バターとの相性は・・・言うまでもありません







はち切れんばかりの『花見ガキ』、
ちょっと加熱してほおばると・・・
鮭は、秋、川にのぼって卵を産み、ふ化後、稚魚期まではごく沿岸域で育ちます。
地元の人は『山が茂った4年後の鮭はおがル(良く育つ)』と言います。
オリンピックのサイクルで遠く北洋まで旅する鮭たちですが、その豊貧は古里の山で決まるんでしょうか。
春先、海の色が変わるくらい植物プランクトン、動物プランクトンが発生します(プランクトンの大発生をブルームと呼びます)。
ブルームの時に海は緑がかった鈍色(にびいろ)に輝き、プランクトンネットをものの5分引くと目づまりするほどです。
この時期、カキやホタテは一潮ごとに大きくなるそうです。
たとえや誇張でなく、本当に急成長するため、漁業者は3日おきに養殖用の浮きを付け足します。

ブルームを呼ぶのは山からの雪解け水『雪代(ゆきしろ)』です。
おいしいサケやホタテの貝柱、カキの身も元を正せば山の雪や木々にたどり着きそうです。
正月、こたつに入って鮭の切り身をつつきながら遠く綿帽子をかぶった山々に目がいきます。
山の神、海の神に感謝。

追伸
おいしいものを食べすぎて、また5kg太りました。
このままここに居座り続けると私の『お腹周りや肝臓』がパンパンになりそうです。
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