独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばいコラム
No.45 ウナギの生まれ故郷へ〜調査船「開洋丸」乗船記〜 その4
2009.1.13
南伊豆栽培漁業センター 場長 加治 俊二
前回のお話→
5月24日、航海4日目、12時半、
東経141°北緯18°St.E1(ステーションナンバーE1 以下同様)に到着、
日本最南端の沖ノ鳥島より2°(≒220km)くらい南、5°(≒500km)くらい東。
「絶海の孤島」と言うが、その「孤島」も無い「絶海」。

下手くそな私の画像では伝わらないだろうか、生まれて初めて見る青、青、青。
M先生によると、究極の穏やかな海では鏡のように空をくっきりと映し込むらしいが、
残念ながら今回の航海ではそこまでの光景にはお目に掛かれなかった。

しかし、まぁ、すごい。
たとえが悪いかもしれないが、生き物の臭いがしない無機質な人工海水のような感じ。
ウナギの仔魚のきれい好きを実感として納得する。











CTDと青い海
今日は、調査ではお馴染みのアイテムである(らしい)CTD、IKMT、アイオネスという機器が登場。
CTDでこの地点の深さ500mまでの水質データを取り、 IKMTとアイオネスでプランクトン採集を練習がてらに行った。

まず、CTD。
Conductivity-Temperature-Depth profiler の略。
水中をゆっくりと降下しながら水深別に電気伝導度、水温、塩分、DO(溶存酸素濃度)などを測定して
調査室のパソコン画面にリアルタイムで表示してくれる。
さらに、ニスキン採水器という筒状の採水装置が20本付属していて、
ここぞと思ったところ、最大20ポイントで合計200Lの海水を採水することもできる。
この調査での役割は各調査地点の0〜500m水深の水質を測定することと
レプトケファルスの生息水深帯と思われる海水の採水であった。










CTD投下作業
20本の採水器の内側に高性能電子機器が隠れている
次にIKMT。
アイザック・キットさんという研究者が考案した中層トロールという意味だそうだ。
トロールと言うと私には大きなイメージしかないが、
これは開いた時の間口が縦横3m程度のかわいいもので、遊泳能力の小さいプランクトンの採集に用いている。
この調査ではウナギ受精卵と仔魚がターゲットとなる。

  IKMTの揚網作業  IKMT採集物の回収作業
そして、アイオネス。
IKMTと役割は同じだが、それよりもっと間口が小さい。
その替わりに、写真のように、採集ネットを最大9つ付けることができ、
各ネットの口を順番に開閉しながら、水深別にプランクトンを採集することが可能というアドバンテージを持つ。
と言うと簡単そうなのだが、実際は船足と延ばしたワイヤーロープの長さを微妙に変えながら調整しつつやるので
思う通りの水深帯を所定の時間曳網するのは結構難しいようだ。

  アイオネスの揚網(開口部)  アイオネスの採集器部分
この調査での最大の目標は、未だ確定していないウナギ受精卵やウナギ仔魚の生息水深を突き止めること。
15時半頃に一連の作業が終了し、16時頃から採集物処理に取りかかる。
夕食を挟んで20時頃までかかった。
採集物が適当な密度で入ったマザーボトル
(言い方はかっこいいがただの10L余りのバケツ、採集物を冷えた海水で適当に薄めたもの)から
小さな透明アクリルの容器にお玉一杯を取り入れ、得体の知れない(生物で飯を食ってる人間が言うべき言葉ではないが、
得体が知れんというのがぴったりの奴らばかりだ)プランクトンをピンセットでよけながら
ウナギらしい卵や仔魚はいないかと目を凝らす(これもかっこよくソーティングと称す)。
当然ながら、ほぼ100%ハズレで、お玉一杯を何度もおかわりして、マザーボトル全部が空になるまで同じことを繰り返す。
悲しいかな!
初老に差し掛かり、ソーティングに慣れていない私だけは唯一のルーペを使わしてもらう。












採集プランクトン
一方、船は我々がちまちまとやっている間にさらに南下し、22時には、東経141°北緯17°St.E2に到着。
ここではCTD測定と採水のみで今日の仕事は終了。
…と思いきや!これからの調査の時間帯にレプトケファルスへの給餌時間帯を合わせるため、
最後の給餌時間が23時、きれい好きのレプトケファルスのために新しい飼育容器に移す作業が午前1時。
人間も例外ではなく、みんながぼちぼち夜型に生活パターンを変えていく。

その5に続きます…)
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