独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばいコラム
No.43 WFC2008世界水産学会議へ参加して
2008.12.10
志布志栽培漁業センター 今泉 均

10月20日から24日までパシフィコ横浜会議センターで第5回世界水産学会議が開催されました。
 この会議は1992年に各国の研究者らが海洋環境保全などについて議論するためにギリシャで初めて開催され、これまで4年ごとにオーストラリア、中国、カナダで開かれたそうです。
 今回のメインテーマは「世界の福祉と環境保全のための水産業」であり、その研究発表および討論の対象となる分野は、漁業と資源生物学、水産増養殖、バイオテクノロジー、ポストハーベスト、水圏生態系における物質循環、淡水・沿岸および海洋環境、生物多様性と資源管理、漁業経済と社会、水産教育と国際協力で、非常に多岐にわたります。参加した研究者の国籍は57ヵ国におよび、発表言語は英語に統一され同時通訳はつきません。

 私は、水産増養殖の分野でポスター発表を行いました。「世界で最も漁獲量の多いイカ、アメリカオオアカイカの利用について、クロマグロの養成餌料としても使えそうです」という内容のものです。事例的な内容で、データ数が少ないこともあったのですが、ポスターであれば英語でしゃべらなくてもよいのではとの考えもありました。何より、イカに詳しく、かつ会議への参加を強く推していただいた共同発表者の「私が付いているから」との言葉を信じて国際会議へのポスター発表を決心した訳です。

 ポスターの発表展示期間は2日間、このうち昼休みと重なる12時半から14時までの1時間半がポスターセッションとなっていました。少なくともこの1時間半はポスターの側にいて、質疑を受けなければなりません。発表ポスターを所定の場所に貼り、会場に来ているであろう共同研究者に携帯で連絡をとりました。携帯の向こうの彼曰く、「自分が口頭発表する原稿がまだ出来ていないので、今日は会場には行けそうもない。」とのことでした。この言葉を聞いて私の頭の中は真っ白に、そして心はブルーに変わっていきました。1時間半をどう乗り切ろう・・・。不安と共に12:30を迎えました。ポスター発表会場には徐々に人が増え始めていました。自分のポスターの脇に立ちながら質問してくる人を待ちました・・・。


←ポスター発表会場
 来ない―
 30分程度じっと待っていましたが来ません。
 私の危機的な形相が人を寄せ付けないのであろうか?と思い、少し距離を置いて待って見ましたが、皆通り過ぎていってしまうばかりでした。冷静に回りを見てみると、日本人同士が盛んに意見交換しているブースが多く、外国人もいますが、いずれも自分の研究分野に集中しているようで、色々な分野を見て回っている人は少ないことに気づいたのです。
 会場のポスター発表数は我々が行った前半2日間だけで289題あり、これは8分野、21テーマに及んでいました。さらに、同会場には水産関連企業33社の展示ブースや水産総合研究センターのブースも併設されていたため(水産総合研究センターのブースでは世界で初めて海洋で成熟ウナギを捕獲した産卵生態調査の様子がパソコン上で放映され、我々が採卵し人工的に育てた志布志産のウナギ幼生も展示されていた)、全ての内容をじっくり見て回るのは不可能だったのでしょう。
 結局、2日間、実質3時間で、私のポスターを見に来てくれた人は日本人の顔見知りばかりでした。注目度が低いという意味では少し残念な結果でしたが、無事終わった安堵感は大きなものでした。
 14時からは、分野ごとに各会場で口頭発表が行われ、ウナギ関係の発表を聴きに行きました。内容については、配られた要旨とスライドの図表から、少ない想像力をフル回転させて概要を知るのが精一杯でした。質疑の中で冗談が含まれて、皆が一斉に笑った時について行けないのは悲しいものです。

 このような英語、特にヒアリングや会話が不得意な私でも国際水産学会議へ参加することによって成果を示すことが出来、良い経験をさせていただきました。本会議では栽培センターからの参加が少なかった様ですが、皆さんも4年後にチャレンジして、成果を世界に向けて示してみてはいかがでしょうか。
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