|
宮古栽培漁業センター 野田 勉 |
|
久しぶりに後輩と会い、一緒に築地の寿司屋に行った時の出来事です。
寿司屋で目にした「黒ソイ」という肩書きと、生け簀内で泳ぐクロソイに
「お前もメジャーになってきたんだなぁ〜」
とクロソイ担当者の私としてはたまらず、感傷に浸りながらメニューを見ていると、
ある品書きに目が止まりました。
その名は「八角(はっかく)」。
こういったマニアックな魚が好きな私は黙っていられず、即注文。
一緒に行った後輩はどんな魚かわからなかったようですが、正体は多分この魚(写真参照)。
|
|
|
|
 |
 |
←オス 鰭が大きい
|
|
|
 |
←メス 鰭が小さい
|
正面から見た顔
六角形に見える?でも八角 |
|
|
|
|
|
|
この「八角」、正式にはトクビレと言います。
名前の由来は、特に背鰭と尻鰭が大きいから、と知り合いに聞きましたが、本当でしょうか???
今の時期、宮古魚市場で水揚げされた魚達を見ていると、このトクビレ達が目に入ります。
ちなみに、鰭がとても大きい方がオス、そうでない方がメスです。
オスの大きな鰭は、繁殖期にメスへのアピールに使われると考えられています。
また、雌雄共に口元にはヒゲが生えています。
最大では全長40cm程度、体はちょっとゴツゴツしています。
マグロなどのように泳ぐのが得意な魚には見えないので、海底でひっそりと暮らしているのでしょう。
トクビレの仲間には何種類かいますが
ほとんどが東北や北海道沿岸の沖合のちょっと深場に生息しています。
しかし、最近、宮古湾の稚魚調査でトクビレの仲間の稚魚が捕れました。
深い場所にいる魚なのに、岸の近くで見つかるとは・・・。
|
|

トクビレのこども(約2.5cm) |
|
ただ、このようなことはよくあることで、
沿岸の浅い場所にある藻場や干潟は子供の魚が育つ場として適しているため、
本来浅瀬を棲みかとしていない魚たちも、子供の時期であれば藻場や干潟で見られることがあります。
藻場や干潟は人間で言うところの“幼稚園”にあたるのでしょうね。
調査で見つかった魚は、他にもアジ、スケトウダラ、クロソイ、ニシン、ヒラメ・・・と多数。
一方、沿岸の藻場や干潟は埋め立てや環境汚染などの影響を受けやすいので、
こうした場所の保護が、実は多くの魚の保護につながるのかもしれません。
ところで、その寿司屋では、藻場干潟幼稚園の同級生(かもしれない)、
ヒラメやクロソイなどを食べてきましたが、後輩曰く、
「八角が一番美味しかった」
とのこと。
・・・クロソイ、負けるな・・・!!!
|