独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばいコラム
No.3  三陸の海から−宮古魚市場のこぼれ話 (2)
2007.01.04
謎多きババガレイは婆がれい?それとも・・・!!
宮古栽培漁業センター 有瀧 真人

お正月です。
正月料理はその土地々で特色が出ますが、
三陸地方ではババガレイ(地方名:ナメタガレイ、写真1)の煮付けが欠かせません。
数の子(ニシン)、イクラ(シロザケ)、田つくり(カタクチイワシ)など、
正月には海産物の多産をあやかろうと食材に多く用いられます。
この地方のババガレイもちょうど冬場に卵巣が発達するため
「縁起物」のおせちとして珍重されます。
年末の市場には
卵巣がクッキリ見えるように切り込みの入ったババガレイが
一等席に並びます。
立ち位置も一等席ですが、値段もそれなりで
ちょっと目を押さえておかないといけないほどです。


ババガレイの親(全長35cm)
一般にカレイ・ヒラメの仲間は、
雄が小さく雌が大きいノミの夫婦って皆さんご存じでした?
でも例外があります。
このババガレイがそうで、雄も雌もサイズに違いがありません。
また、産卵期には雄が婚姻色を身にまとい
雌を巡って大げんかをします。
おそらくサイズの性差や婚姻色は産卵の生態に関連していると思われますが、
こんなカレイは他にはあまり・・・イヤほとんど知られていません。
変なやつです。
加えてババガレイは、子供時代がほとんどわかっておらず、
天然海域でどのような生活をしているのか全くの謎です。
我々が飼育しても生まれてから子ガレイになるまで150日以上、
大きさが3〜4cm、500円玉くらいの大きさまで
ふわふわ漂いながら生活しています(写真2)。
ヒラメがほぼ30日前後、1.5cmほどで着底(変態して底に着くこと)しますから
どれほど長く、また大きいか・・・。
親も変なら子供もかなり変わっています。

ババガレイのいわれは、
粘液質を多く分泌しヌルヌル・ズルズルと「ばばっちい」から・・・とか、
ぶよぶよとたるんだ皮がおばあさんのシワに似ている(失礼)から、
とか言われています。
でも、ババガレイの歯を調べる必要に駆られ
顕微鏡で観察したとき思わず「アッ!!」と叫んでしまいました。
そこにはまさに馬のような歯が並んでいるではありませんか(写真3)。
今でも私は
ババガレイ=馬歯がれい
だと固く信じています。・・・できすぎか。

写真3 まさしく馬の歯、馬歯がれい!??
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