独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばいコラム
No.4  ウミガメのたまご
2007.01.18
本部業務推進部栽培管理課 清水 智仁

「あ〜、ここが頭ですね。ここが手、足はこっちです。
大事なものが見当たらないので女の子かな?」
産婦人科の診察室では、
日頃、お医者さんが妊娠したお母さんのおなかにセンサーを当てて、
ディスプレイに映し出された画像を見ながら
こんな会話が交わされているにちがいありません。

実は、水産総合研究センターでも、
同じような診察をしています。
というと、
「えっ、いつから産婦人科を始めたの」
「医師免許あるの」
と疑問視され、社会問題化する前にネタを明かしますと、
まず、対象はお母さんには違いはありませんが、
人ではなくウミガメです。
増殖を目的に飼育されているウミガメのお母さんにも
定期的に超音波診断を行ってお腹の中を調べます。
人間だと「はい、おなかを出して。」で準備ができますが、
カメさんには残念ながら、人間の言葉が通じません。
自然の成り行きで、少々手荒くなります。

水の入った容器にお母さんガメを入れて、
センサーを後ろ肢の付け根に当てますが(卵巣がその辺にあります)、
そのときのお母さんガメの、暴れること暴れること。
人間と比べて、押さえて写真を撮るのが一苦労です(写真1)。

写真2はお母さんガメをなだめながらから撮った
産卵直前のウミガメ(タイマイ)の超音波診断の画像です。

ウミガメの場合、お母さんのお腹の中には仔ガメではなく、
卵で入っているのがわかりますでしょうか。
画像はそれまで卵の黄身だけだったものが、
産卵の直前に殻を持った卵になった時のものです。
画像の真ん中にある赤丸で囲まれた白い部分が黄身、
そのまわりの黒い部分が卵白と殻にあたります。

このように超音波診断からお母さんと卵の状態を調べて、
いつ産卵するか推定します。
「順調ですよ」とお母さんガメに声をかけてあげたいのですが、
実はいつが予定日なのか、本当に順調なのか、
漠然としかわからないので、
私どもがカメのお医者さんになれるのもまだまだ先のことです。

ヒトの場合はお母さんのお腹から出てくるときは、
「おぎゃぁ」と泣いて、すでに人間の形をしていますが、
爬虫類であるウミガメは卵のままでこの世に産み落とされ
砂の中でふ化する日まで成長します(写真3)。

ふ化した後は(写真4)、最初の試練が待っています。
まず砂の中から自力で這い出さねばなりません。
うまく這い出したあとは、海へ向かって歩き出し、次の試練の待つ海へと旅立ちます。
その行き先は、竜宮城か、はたまた、外敵の胃袋の中か、
それこそ「カメのみぞ知る」でしょうか。


写真1 超音波診断の様子


写真2 ウミガメ体内の卵の超音波画像
 
写真3 ウミガメのふ化直前の卵

写真4 殻を破ってやっと砂からはい出した
カメの赤ちゃん
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