独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
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No.064 長期育成したタイマイが産卵し,309頭の仔ガメが生まれました   2004/11/01
八重山栽培漁業センター
成果の概要
 タイマイの産卵については,本年6月に『世界初,長期育成したタイマイの産卵に成功!』のタイトルでプレスリリースしました。親ガメの入手経路や飼育方法などはその中で説明しましたが,ここではその後の産卵とふ化の結果について報告します。
1.産卵の結果
 平成16年6月3日に,成熟した3頭の雌ガメ(超音波診断装置で卵胞を確認)と雄1頭を人工海浜付の循環水槽(250 トン)へ収容し,9月30日まで毎日産卵状況を観察しました。その結果,卵胞が卵殻卵(超音波で確認)にまで発育した甲長79.0cm,体重56.2kg (No.1)と甲長82.4cm,体重60.7kg (No.2)の2頭が産卵しました。No.1は6月7日〜7月26日の間に5回産卵し合計563個の卵を,No.2は7月21日と8月12日の2回産卵で合計331個の卵を産みました(表1,写真1)。平均卵径は,3.5cm(3.2〜3.9 cm)でした。初回の産卵以降は7〜22日(平均14.4日)の間隔で産卵し,飼育条件下での結果ですが,1尾の雌の産卵回数は1シーズンに複数回であることを確認しました。

写真1 タイマイの産卵の瞬間
表1 長期育成したタイマイの産卵結果
雌ガメ
産卵
回数
産卵日
産卵数
(個)
卵経(cm)
No.1
1
6月7日
103
3.5(3.2〜3.8)
2
6月14日
141*(84)
3.6(3.2〜3.9)
3
6月25日
159
3.5(3.2〜3.9)
4
7月8日
160
3.5(3.2〜3.9)
5
7月26日
132(水中で産卵)
3.4(3.3〜3.6)
小 計
563

No.2
1
7月21日
153
3.4(3.2〜3.6)
2
8月12日
178
3.4(3.2〜3.6)
小 計
331

合 計
894

* 総産卵数141個のうち58個は,産卵時に破損。取り上げは84個。
 No.1の親ガメでは,7月26日に水中で放卵(132個)しているのを発見しました。これは,水槽の補修工事で海水の水位を3日間落としたため,親ガメが産卵したくても砂浜に上陸できずに水中で放卵したものと思われます。
 一方,卵殻卵の確認ができなかった甲長69.5cm,体重45.7kgの雌(No.3)では,一度も産卵が見られなかったことから,卵殻卵の形成が産卵に至る指標となるのは,ほぼ間違いないと思われます。
2.ふ化の結果
 産卵された卵は,すべて29℃に設定した孵卵器で管理しました。孵卵器内の環境は,平均気温29.0℃ (27.6〜29.4℃),平均湿度92.9% (80.0〜96.0%)でした。No.1が産卵した563個の卵からは168頭の仔ガメが生まれました。また,No.2が産卵した331個の卵からは141頭がふ化しました(写真2,表2)。平均ふ化率は34.6% (0〜98.8%)と,産卵個体の産卵日毎に大きく異なっていることから,ふ化率の安定と向上が今後の大きな課題の一つです。
 ふ化した仔ガメの平均甲長と平均体重は,それぞれ3.8cm (2.8〜4.2cm)と12.6g (10〜15g)でした。ふ化までに要した平均日数は57.5日で,今のところふ化した仔ガメに形態等の異常は観察されておらず,元気に水槽内を遊泳しています(写真3)。

写真2  タイマイのふ化の瞬間

写真3 水槽内を元気に遊泳する
タイマイ
表2 孵卵器で管理したタイマイ卵のふ化結果
雌ガメ
産卵
回数

産卵日

産卵数
(個)
ふ化日
ふ化までに
要した日数
ふ化数
(頭)
ふ化率
(%)
仔ガメの大きさ
甲長(cm)
体重(g)
No.1
1
6月7日
103
8月3日
57
20
19.4
3.8(3.3〜4.1)
12.2(11〜14)
2
6月14日
84
8月19日
66
83
98.8
3.9(3.5〜4.1)
13.2(11〜14)
3
6月25日
159
8月22日
58
6
3.8
3.7(3.6〜3.9)
12.5(11〜14)
4
7月8日
160
9月5日
59
59
36.9
3.6(3.3〜3.6)
11.5(11〜14)
小 計
563

168

No.2
1
7月21日
153
9月15日
56
141
92.3
3.9(2.8〜4.2)
13.4(11〜14)
2
8月12日
178
-
-
0
0
-
-
小 計
331

141

合 計
894

59.2
309
34.6
3.8(2.8〜4.2)
12.6(11〜14)