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はじめに | ||||||||
栽培漁業技術の普及と定着を目的として,(社)日本栽培漁業協会では昭和62年より中央研修会を開催し,全国を対象として年度ごとに初期餌料,親魚養成・成熟と採卵,種苗生産にかかわる形態と生理の問題,放流効果と資源解析,疾病防除対策等のテーマを設けて各分野の専門家の方々に講義をお願いしてきました。本研修会は,(社)日本栽培漁業協会が独立行政法人水産総合研究センターへ統合後も引き続き開催されることとなりました。本年は「異体類の種苗生産における形態異常防除の技術的アプローチ」をテーマに,平成16年2月4日に国,都道府県や市町村の行政担当者,試験研究機関,栽培漁業センター,教育機関,公益法人等の栽培漁業関係者,等計97名が参加して開催されました。なお,本年の研修会は,(社)全国豊かな海づくり推進協会へ開催事務を委託して実施されました。 以下に講演の概要を紹介します。 ![]() |
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(1)「異体類の左右性と形態異常についてNormanに学ぶ」 | ||||||||
(講師:福井県立大学 青海忠久) | ||||||||
ヒラメやカレイの左右不相称性が古くから注目され,1934年に発表されたNormanの総説の中では異体類の左右性と形態異常についてきわめて詳しい記載がなされている。現在の種苗生産現場で出現する異体類の左右性に関わる形態異常は天然魚の標本をベースにほぼすべてが網羅されている。この総説を中心に異体類の左右性と形態異常に関わる既往知見が紹介された。 | ||||||||
(2)ヒラメ人工種苗の脊椎癒合と防除方法 | ||||||||
(講師:鳥取県栽培漁業センター 山本栄一) | ||||||||
ヒラメの天然稚魚には脊椎骨の癒合はほとんどみられないが,人工種苗には癒合個体の割合が極めて高い。人工種苗の脊椎骨癒合を主とする骨格異常は放流後の種苗の減耗要因のひとつであり,放流種苗の添加効果を高めるために脊椎骨異常の出現防止技術の確立は重要な課題である。飼育実験により脊椎骨癒合の誘導要因として,ビタミンAの過剰摂取,飼育水温,疾病の発生,生物餌料の栄養強化不足,水槽の形状等が挙げられた。 | ||||||||
(3)飼育したカレイ科魚類に発現する変態の異常 〜裏表の異常について〜 | ||||||||
(講師:独立行政法人水産総合研究センター宮古栽培漁業センター 有瀧真人) | ||||||||
カレイ科魚類の複数種の有眼側,無眼側の形質を詳細に観察した結果,形態異常は眼位や体色という部分的な異常ではなく,それぞれが密接に関連した変態の異常であること,その決定時期は変態期直前であること,飼育水温と形態異常の発現状況は種ごとに一定の傾向が認められ,それらは発育の速度と密接な関係があることが明らかとなった。正常な個体を高率で得るためにはそれぞれの種が持つ発育速度に合わせた飼育が最も重要であり,形態異常は変態のタイミングが損なわれたときに多発することが紹介された。 | ||||||||
(4)ヒラメ黒化防除技術開発の取り組みと成果 ―茨城方式の種苗生産― |
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(講師:財団法人茨城県栽培漁業協会 山田 浩) |
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(財)温水養魚開発協会(以下温水協会)で生産されたヒラメ種苗は黒化の出現率が非常に低く,飼育経過を比較した結果,温水協会の種苗の成長は異常に早いことが明らかとなった。成長がよい種苗は正常な変態をして黒化にならないことを前提に飼育試験を実施した結果,成長速度に最も影響があったのはアルテミアの給餌量であり,またエアリフト設置が稚魚と生物餌料の遭遇率の向上に効果的であった。試験区では温水協会と同様な成長が得られ,黒化の出現率も低く,成長が早いため餌料コストも安価に抑えられた。太平洋北ブロックの他県にもこの飼育方式が導入され黒化防除に効果があることが確認されていることが紹介された。 |
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(5)異体類の形態異常と甲状腺ホルモン −「いつ,どこで」によって左右性発現を説明する試み− |
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(講師:京都大学 田川正朋) |
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ヒラメを始めとする異体類の変態では甲状腺ホルモンが中心的な役割を果たすことが知られている。甲状腺ホルモンにより,目の移動に中心的な役割を果たす可能性が高いPb骨(異体類の無眼側にのみ存在する硬骨のひとつ:シュードメジアルバー)が形成され,また,変態期になると有眼側にのみ出現する稚魚型黒色色素胞の出現が抑制される可能性が示された。これらのことから甲状腺ホルモンは仔魚から稚魚への外部形態の変化を一括して誘起するのではなく,特に無眼側を形成させる役割を持つのではないかという仮説が紹介された。また,左右の体側において甲状腺ホルモンの感受性が保持されている期間が異なるため,変態のタイミングにより異常個体が出現するという仮説も紹介された。 |
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