独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
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No.039 マンブローブ域に放流したアミメノコギリガザミ種苗の滞留と成長  2003/11/01 八重山栽培漁業センター
はじめに
 アミメノコギリガザミは亜熱帯から熱帯の河口とその前面海域に生息する大型のガザミ類の一種で,最大2.5kgにも達します。わが国では沖縄県,特に西表島等のマングローブ域で漁獲され,地域的に重要な漁業資源となっています。八重山栽培漁業センターでは昭和60年の開所当初から本種の種苗生産技術開発研究に取り組んだ結果,近年になってようやく100万尾レベルの種苗の量産が可能になり,マングローブ域で放流試験を行うことができるようになりました。ここでは,本年度調査したマングローブ域における放流種苗の滞留状況と成長について報告します。
種苗の放流

図1 西入表島における放流地点(赤丸)
 放流試験は西表島で行いました。西表島には大小様々な河川がありますが,私たちは漁業者(沖縄では海人(うみんちゅ)と呼ばれています)が熱心にアミメノコギリガザミの栽培漁業に取り組んでいる白浜・船浮地区(図1)の仲良川とクイラ川を放流地点に選びました。放流現場の近くに設置した囲い網(底網付き100m2)で中間育成を実施し(図2),6月下旬に種苗を取り揚げて,平均甲幅23mmほどの種苗約5,000尾をクイラ川に,約24,000尾を仲良川河口近くのマングローブ域に放流しました(図3)。

図2 中間育成用の囲い網と1ヵ月ほど育成した
アミメノコギリガザミ


図3 アミメノコギリガザミ種苗を放流する海人
放流種苗の追跡調査
 昼間と夜間の干潮時に,放流場とした仲良川のマングローブ域前面の干潟において,種苗の目視計数を試みました。放流種苗は主に砕波帯で観察され,放流直後には800尾ほどの種苗を計数することができました(図4)。しかし,その後の目視尾数は指数関数的に減少し,放流後118日目の調査では数尾を目視したに過ぎませんでした。目視調査時に発見した個体の一部を再捕し,甲幅を測定したところ,甲幅の平均値は放流後の経過日数にともない直線的に増大し,118日目には70mm前後まで成長していました。放流地点で再捕した多くの種苗は放流直後からカニ類や二枚貝類を捕食しており,放流種苗の天然環境への順応は早いものと考えられました。
図4 放流地点における昼間と夜間における目視尾数と甲幅の推移
まとめ
 本年度初めて放流後のマンブローブ域において種苗を目視観察した結果,その滞留状況と成長の一端を捉えることができました。種苗の目視尾数が指数関数的に減少しているのは,被食等による死亡も考えられますが,恐らくは分散して対岸等の干潟へ分布域を広げているものと考えており,今後はさらに調査域を拡大して確認する必要があると考えています。