独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばいコラム
No.31 いも〜れ!きょら海 奄美へ 〜星に願いを〜
2008.08.15
西海区水産研究所石垣支所栽培技術研究室 武部 孝行
 あれは、夏の星座を代表するさそり座だね。
 いやいや、それよりも今日の天の川は、特に綺麗に見えるね〜。
 あっ!あれは人工衛星じゃない?
 おぉ〜、すげぇ〜!!今の流れ星、水平線の端から端まで尾を引いたよ!!願いごとを言えばよかった!

とは、クロマグロの産卵を待つひと時の会話。

クロマグロの親の養成は、その魚体の大きさからマダイやヒラメのように
陸上の水槽では行えないため、
自然の海に浮かべている直径40mの巨大な円形の生簀網(いけすあみ)や
奄美栽培漁業センターの特徴のひとつである、仕切網(しきりあみ)の中に
魚を入れて行われているのですが、
クロマグロ仔稚魚の飼育試験に使用する受精卵を得るには
他の魚の場合と違って、並々ならぬ努力と苦労が必要です。
奄美栽培漁業センターのクロマグロ養成施設
クロマグロの産卵は、2002年の例で言うと、早い時で日没直前の午後7時前後、
遅い時で午後11時頃に観察されました。
また、産卵時刻と養成水温との関係を見てみると、水温が低い時には、産卵時刻は早くなり、
水温が高くなってくると遅くなる傾向があることがわかりました。
そのため、産卵時期になりますと、これらの知見をもとに
クロマグロの受精卵を採取(採卵)するために、こういった時間帯に海上施設(生簀や筏)や作業船上などで、
クロマグロの産卵が行われるまで待機する(ワッチという)わけです。







さぁ、採卵に行こう!
それにしてもきょうは星がきれいだなぁ〜
しかし、毎日必ず産卵してくれるわけではないので、空振りも多く、手ぶらで帰ることもしばしば・・・。
午後6時30分前後から海上に待機して、2〜3時間待ちぼうけもざらで、
そんな日はクロマグロの産卵を持ち望みつつ、空を見上げ前述のような会話がなされるわけです。
さらに、そういった日が1〜2日ならまだしも、2〜3週間、1ヵ月と続きますと職員のモチベーションは下がる一方。
終わりの見えない待ち時間、明るい間は読書をしたり、仕事に関係する文献を読んだりしていますが、
周りが真っ暗になると、横になり星を眺めつつ仮眠をとる者、腕立て伏せや腹筋運動をする者、
それぞれが思い思いに時間を費やしています。
しかし、みんなの願いはただ一つ・・・

「マグロさん、どうか頼むから産卵して!」

それは、星に願う乙女の気持ちと一緒(かどうかは定かではない)・・・







きょうも産卵しないのかなぁ〜
しかし、産卵が確認された場合は、直ちに卵を集める作業に取りかかります。
夜中の11時近くに産卵があった場合、採卵してから陸上施設に戻り、卵の計数や病気を防ぐための卵の消毒など
色々と作業を行っているうち、気が付くと日付が変わっていたなんてことは数知れず・・・。
こんな時もフッと空を見上げて星に思うのは
「マグロさん!もっと早い時間に産卵して!」
でした。

チャンチャン♪
直径40m生簀網での採卵風景
仕切網内での採卵風景
←前のコラムへ | コラム一覧へ | 次のコラムへ→    
→トップページへ戻る