|
西海区水産研究所石垣支所栽培技術研究室 武部 孝行 |
|
あれは、夏の星座を代表するさそり座だね。
いやいや、それよりも今日の天の川は、特に綺麗に見えるね〜。
あっ!あれは人工衛星じゃない?
おぉ〜、すげぇ〜!!今の流れ星、水平線の端から端まで尾を引いたよ!!願いごとを言えばよかった!
とは、クロマグロの産卵を待つひと時の会話。
クロマグロの親の養成は、その魚体の大きさからマダイやヒラメのように
陸上の水槽では行えないため、
自然の海に浮かべている直径40mの巨大な円形の生簀網(いけすあみ)や
奄美栽培漁業センターの特徴のひとつである、仕切網(しきりあみ)の中に
魚を入れて行われているのですが、
クロマグロ仔稚魚の飼育試験に使用する受精卵を得るには
他の魚の場合と違って、並々ならぬ努力と苦労が必要です。
|
|
奄美栽培漁業センターのクロマグロ養成施設 |
|
クロマグロの産卵は、2002年の例で言うと、早い時で日没直前の午後7時前後、
遅い時で午後11時頃に観察されました。
また、産卵時刻と養成水温との関係を見てみると、水温が低い時には、産卵時刻は早くなり、
水温が高くなってくると遅くなる傾向があることがわかりました。
そのため、産卵時期になりますと、これらの知見をもとに
クロマグロの受精卵を採取(採卵)するために、こういった時間帯に海上施設(生簀や筏)や作業船上などで、
クロマグロの産卵が行われるまで待機する(ワッチという)わけです。

さぁ、採卵に行こう!
それにしてもきょうは星がきれいだなぁ〜 |
|
|
|
しかし、毎日必ず産卵してくれるわけではないので、空振りも多く、手ぶらで帰ることもしばしば・・・。
午後6時30分前後から海上に待機して、2〜3時間待ちぼうけもざらで、
そんな日はクロマグロの産卵を持ち望みつつ、空を見上げ前述のような会話がなされるわけです。
さらに、そういった日が1〜2日ならまだしも、2〜3週間、1ヵ月と続きますと職員のモチベーションは下がる一方。
終わりの見えない待ち時間、明るい間は読書をしたり、仕事に関係する文献を読んだりしていますが、
周りが真っ暗になると、横になり星を眺めつつ仮眠をとる者、腕立て伏せや腹筋運動をする者、
それぞれが思い思いに時間を費やしています。
しかし、みんなの願いはただ一つ・・・
「マグロさん、どうか頼むから産卵して!」
それは、星に願う乙女の気持ちと一緒(かどうかは定かではない)・・・

きょうも産卵しないのかなぁ〜 |
|
|
|
しかし、産卵が確認された場合は、直ちに卵を集める作業に取りかかります。
夜中の11時近くに産卵があった場合、採卵してから陸上施設に戻り、卵の計数や病気を防ぐための卵の消毒など
色々と作業を行っているうち、気が付くと日付が変わっていたなんてことは数知れず・・・。
こんな時もフッと空を見上げて星に思うのは
「マグロさん!もっと早い時間に産卵して!」
でした。
チャンチャン♪
|
|
|
|
 |
 |
直径40m生簀網での採卵風景 |
 |
 |
仕切網内での採卵風景 |
|