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西海区水産研究所石垣支所栽培技術研究室 武部 孝行
(2008.4まで奄美栽培漁業センター勤務) |
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クロマグロの解体作業―
飼育中に死亡したクロマグロから成熟、成長等に関する貴重なデータを入手するため、クロマグロを解体することがあります。
それは、テレビの寿司特集の番組などで放映される華々しい解体ショーとは異なり
重労働であると共に、ある意味「3K:キツイ、汚い、臭い」的作業なのです。
確かに、これを初めて経験する人や見学している人にすれば、「やはり、マグロはすごいねぇ〜!」の一言で片付けられてしまうのですが、
何体も何十体も処理してきた人間には、かなり面倒〜な作業です。
ご覧のように、成人男性が二人掛かりでも手に余る状態であり、使用する器具もノコギリであったり、刀身が長いナイフであったりします。
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写真1 ノコギリを使って解体中 |

写真2 解体に使用する刃物類 |
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また、死亡した魚の大きさのデータも残すわけで、それらに用いる器具も手作りのノギスであったり、
昔は台ばかりを2台使用して重量を量ったりなど
(現在は、クレーンで吊しながら量っています)、
あの手この手を駆使しながら作業を進めていきます。
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写真3 手作りのノギスで魚体の様々な部位を計測中 |

写真4 台ばかりを2台使用しての重量計測 |
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家庭でアジ、サバ、サンマを処理するのとはスケールが違うため、当然、手作業のみでは済まず全身を使った重労働となりますし、
ノコギリなどを使用するため、肉片が飛び散り、ものすごい量の血が流れる中で作業が進められます。
結果、体は生臭くなり、最悪、一日中臭いが取れず、その後の食事や家族へのスキンシップにも影響を及ぼすことになるのですが、
それは次回のお話ということで・・・。
そのため、奄美栽培漁業センターの職員(少なくとも筆者)は、クロマグロの死亡が確認された日はブルーな一日になります。
しかし、1尾ならまだしも、これが複数ともなると他の作業にも影響が出て、その日の仕事が停滞するのが目に見えるため
逆に諦めムードとなり、サッサと作業を済ますことに専念するのですが、
そこの境地に至るまでは、頭の中で小田和正の『さよなら』の一小節「もう、終わり〜だね」だけがリフレインされているのもの事実です・・・。
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特に今でも忘れられないのが、2004年9月の台風18号による被害で、
台風通過直後合計21尾(後日、この台風による被害は合計38尾に!)が死んだ時は、
さすがに平均体重250kg以上(体重170〜450kg)のクロマグロが並んだ光景は
壮観であり、さながら築地市場を彷彿させると同時に
職員は全員、幽体離脱状態でした。 |

写真5 2004年の台風18号により死亡したクロマグロ達
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このように解体が行われたクロマグロはどうなるのか、と言いますと
死亡して鮮度が悪く食用には利用できないので、
奄美栽培漁業センターに設置されている家庭から出る生ゴミを肥料にする機械の業務用版で発酵処理されて肥料となります。
「腐っても鯛」と言いますが「肥料になってもクロマグロ」で、
地元住民及び小中学校のために役立てられています。
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写真6 醗酵処理後肥料となったクロマグロ |
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さて今回は、まだ魚の原形をとどめているものを処理した時のお話。
次回は、世にもおぞましい(?)光景と共に、筆者に家庭崩壊の危機が訪れる???
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