独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばいコラム
No.24  4年ぶりに漁業者達とアカアマダイの共同放流を行いました
2008.05.02
宮津栽培漁業センター 町田 雅春
【漁業者との共同放流】
 宮津栽培漁業センターでは栽培漁業の主体となる漁業者の手を借りながら、平成11年に930尾、平成12年に4,610尾、平成16年に5,300尾の種苗を用いて放流試験を行ってきました。
 漁業者と共同放流をするのは、アカアマダイの種苗生産に使用する卵を確保するために、伊根町、養老漁協の漁業者に大変お世話になっていたことと、アカアマダイ資源が増えることを一番希望し、私たちの試験放流に快く協力して頂けたこと、さらに自分で放流したアカアマダイならば愛着も湧き、再捕魚などに深い関心を持ってもらえると思うからです。
 しかし、平成17年からウイルス疾病(VNN)の発生(参照:トピックスNo.103)により、放流ができなくなっていました。その後、悪戦苦闘してウイルス病の発生を防除する技術を開発したことにより、今年度は4年ぶりに漁業者(伊根町漁協、養老漁協)と京都府海洋センターおよび宮津栽培漁業センター3者によるアカアマダイの共同放流を行うことができました。
【放流種苗】
 生後6ヶ月で7cmにまで成長したアカアマダイ種苗800尾を放流しました。

【おでこに標識】
 放流する種苗の“おでこ”に写真1のような緑色のイラストマー標識が付けられています。イラストマー標識(イラストマー蛍光タグ)とは米国で開発された動物用標識のことで、両生類、甲殻類、魚類の体内に蛍光塗料を皮下注入し、他と識別するための標識として利用されています。魚体への負担が少なく、低コストであり、短時間で装着が可能で、しかも長期間ハッキリと識別ができるなどの長所を持ち、魚類では米国で主にサケ類に用いられています。日本ではトラフグの標識として多くの実績があります。
 イラストマーの標識作業は京都府海洋センターの平安丸の船員さん達の協力を得て行いました。本当に助かりました。
写真1  
【伊根町】
 放流の時に関係者に集まっていただいた伊根町は、NHK朝の連続ドラマ『ええにょぼ』(1993年)で一躍知られることとなった、舟屋で有名なところです。舟屋とは漁業者の住居の一階部分に漁船を格納する場所がある家のことです。伊根町には230軒余りの舟屋が建ち並び、とても風光明媚なところで、観光客も大勢訪れています。

【凪、私のお陰?】
 放流当日、心配していた海況は凪で、しかも曇りという絶好の放流日和でした。前日の天気予報では雨でしたので、これも日頃の行いの賜物と自分だけ納得していました。伊根町漁港にはアカアマダイを漁獲対象とする延縄漁業の皆さんが集まってくれました。

「皆さんからお預かりしたアカアマダイの親魚から子供をふ化させ、海に帰すことができました」と説明した後、全員で船への積み込み作業を開始しました。(写真2)

 写真2
【バケツリレー、心を一つに】
 岸壁に横付けされた9隻の船に、種苗をバケツリレーで運びました。皆が一つになれる時でした。(写真3)

【出航、いざ放流地点へ】
 伊根港を出航すると、舟屋の風景は小さくなって遠ざかっていきます。約20分で放流海域である鷲崎の南2.3km、水深約60mの放流点に到着しました。(写真4)

  写真3

  写真4
【心配無用】
  輸送中は生簀のスカッパーから流入する海水の勢いに耐えられるのか不安でしたが、心配をよそに、アカアマダイたちは飼育水槽内では見ることのできないような力強い泳ぎをしていました。

【ウミネコ】
 世話人の海上無線から「一斉放流」の一声が聞こえてきました。この名誉ある一声は、世話人の船に乗っていた水研センターの場長からのものでした。一目散に深みへと潜行して行く稚魚と、なかなか潜行しない稚魚がいました。頭上にはウミネコが舞い、不吉な予感が。
「危ないぞ!早く潜れ!」願いも甲斐なく、何尾かはウミネコの餌食となっていました。アカアマダイはストレスを感じたときに、このような状態を示すことがあり、今後の放流方法を考える上で貴重な体験となりました。

【願い】
 放流した稚魚には、「今日からは、自分で餌をとって大きくなれよ」と願いを込めました。でも、こんな小さな稚魚が、水深60mまで潜行できるのか? また外敵に捕食されずに、海底で巣穴をつくれるのか? 願いと共に心配も尽きません。とにかく、2年後の再会に期待しましょう。

【希望】
 それぞれの漁船に種苗を積み込んでいるときに、漁業者から「マダイの放流では、まだまだたくさん入れるよ」と言われ、「・・・・」沈黙(∪_∪;)。来年こそは、漁業者に「多すぎて積み込めないよ」と言われるように頑張ろうと思いました。

 私自身、アカアマダイの放流は初めての経験でした。しかし、このような漁業者と一体となった放流を繰り返しながら、アカアマダイの栽培漁業を推進できる土壌作りをしたいと思いました。
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