独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばい日記
クロソイ編 2008年8〜9月の日記







市場で会いましょう
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 2008年9月29日 番外編5〜市場にて,南からやってきた,キワドイ奴ら〜

暑さ寒さも彼岸までと言いますが,宮古では数日前から一層涼しくなってきました。
特に朝は涼しいを通り越し,寒いくらいです。
一方,海の中はまだ20℃近くあります。
この暖かい海水の流れに乗ってか,今年も南からの来訪者が本格的にやってきました。
週に2〜3回は,こうした普段見られないキワドイ奴らに出会うことができます。

南からやってきた魚は,数がまとまらないことが多いため,
市場では「ヤマ」として扱われていることが多いです。
「ヤマ」とは,数がまとまらなかったため,その他大勢として扱われてしまうことです。
南の方から来た魚は,この「ヤマ」の中に紛れていることが多いのです…が,
野田にとってはこの「ヤマ」の中の珍魚を探すのが,市場での楽しみの一つです。


↑ツムブリ。宮古周辺では滅多に獲れません。

←ヤマの中に,見慣れない大きな魚が…「イセゴイ」です。


珍しい魚,食べられない魚,実は凄く美味しい魚…それぞれです。
ちなみにイセゴイの味はイマイチ,ツムブリは美味との噂です。

先日,ナガタチカマスという,ひときわ目に付く魚が水揚げされました。
50cm定規が小さく見えるほど,巨大で奇妙な体。カマスのオバケのような魚です。
知り合いの仲買さんが持ってきて下さいました。
センターでの記念撮影を経て,大学の博物館に送られる予定です。


 ナガタチカマスと一緒に


 「ヤマ」として扱われるクロソイ(矢印)

こうした作業は,仕事以外の楽しみなのですが…仕事もちゃんとしないといけませんね…

あ,あれ…?ところでクロソイの水揚げは…?
「ヤマ」の中に何匹か…?
今日のクロソイは数が少ないので,南の来訪者と一緒に「ヤマ」として扱われていました…
この日,キワドイ魚に会えた嬉しさと同時に,
言いようの無い悲しみがクロソイ担当者の野田から溢れていました…
でも,これからのクロソイの水揚げ(と,珍魚に会うこと)を信じて,明日も市場に行きます!
 2008年9月19日 番外編4〜飼育した仔魚を詳しく観察〜

まだ飼育も継続している最中,秋になると,データまとめの時期がやってきます。
今年の結果などをまとめて,資料を作らなければなりません。
さらに,出張の予定が入ることがあります。
その際,今までの飼育技術開発や放流の結果などを発表することが多いのです。
そして,今年もこの時期がやってきました…さて,どうしよう…

こうして,今年の飼育について,さらに詳しく詰めるための作業が始まります。
クロソイの飼育でバタバタしていた6月〜7月。
飼育と同時並行して,クロソイの餌食いの状態を見るために,サンプリングも行っていました。

5月20日と,23日の日記に少し書いてありますが,
初期の死亡の発生具合は,餌を食べている状態と密接な関係があることが分かりつつあります。
本当は,飼育をしながら,リアルタイムで観察を行うのがベストなのですが,
魚は星になるし,これで野田の頭はパニックになるしという状態では,
仔魚を詳しく観察するのは不可能でした…
そこで,とりあえずホルマリンに仔魚を入れ,後から観察できるようにしたのです。
現在,当時大量生産したホルマリン漬けを観察中です。
もちろん,キツネメバルやメバルの飼育も同時並行。
他の職員さんの強力なサポートに感謝感激です。

さて,今日は仔魚の観察。
全長7mmの生まれたての仔魚を,1尾1尾丁寧に並べて,顕微鏡で観察していきます。
そして,餌の食べ具合を観察するのです。

顕微鏡観察中






矢印の先にあるのが仔魚です…
が,分かりにくいですね。


餌がちゃんと見えるのは活力が良い仔魚の証拠。
しかし,今年はやはり,全体的に食べ具合が良くありません。
餌を全く食べていない魚もゴロゴロいます。

う〜ん,これでは初期死亡が起こるのも無理ないな…そんな事を思いながら,1瓶1瓶観察していきます。

そして,まだまだあるサンプル瓶の数々…近づくリミット(提出期限&出張日)…
市場のクロソイの水揚げはまだまだイマイチ…野田の悩ましい日々は続きます…

このような小さな瓶が…

こんなにあります…
 2008年9月5日 番外編3〜市場調査にて〜

宮古湾では,本格的に定置網の操業が始まりました。
毎日,大きなサケが水揚げされるようになっています。
また,秋の味覚であるサンマも今がまさに旬。
銀色に輝くサンマは,刺身で良し,焼いて良しの,美味しい食材です。

そして,クロソイの水揚げも例年通り本格的に始まり,
1日に100尾を超えるクロソイが市場に水揚げされています!
…と,良いこと尽くしで書く予定だったのですが,今年は未だに水揚げがちらほらとしかありません…

市場にて。クロソイ少ないですよね〜…

あれ…どうしたのでしょうか…ま,まさか,去年のクロソイの出来が悪かったのか…?
確かに去年も初期死亡を出し,挙げ句の果てに2回ほど生産中止に追い込まれたという過去があります。
しかし,それでもちゃんと育て上げ,放流したのですが…

今年は生産でコケて,私生活でコケて,市場調査でもコケるのか…?
クロソイの水揚げのない市場で,そんなことを考えます。

一方,南からの訪問者は続々来ている様子。
海藻の姿に似ていることから名前が付いた「ソウシ(藻姿)ハギ」や,西日本の高級魚「マナガツオ」など。


         ソウシハギ                   マナガツオ

市場でお目にかかる脇役たちは充実していて,楽しいのは楽しいのですが,
クロソイの市場調査やサンプリングなど,本来の仕事がイマイチ進みません。
今書いている論文もイマイチ進みません。
文献を読めば読むほど頭の中が混乱してきます。
色々なものが滞り気味です…
 2008年8月29日 番外編2〜ソイ類の市場調査〜

宮古栽培漁業センターでは,クロソイだけでなく,
キツネメバルやメバルなどの種苗生産の研究開発も行っています。
この「ソイ・メバル類」は,栽培漁業対象種の中でも定着性が強い,
つまり元々海中であまり大きな移動をせず,地先に留まって成長するという性質を持つ魚です。
市場では,こうした「ソイ類,メバル類」は,種類ごとに区別されずに「ソイ類」として扱われています。
なので,種類別の詳しい水揚げ量がわかりません。

宮古栽培漁業センターでは、今年9月に初めてキツネメバルとメバルの放流を行います。
クロソイはこれまでに何度も放流しているので,その都度調査を行い,データの蓄積がありますが,
これまでに放流したことのないキツネメバルやメバルについては,
放流前の水揚げ量などを種類別に調べておかなければ,
後で放流した効果があったかどうか確かめることができません。
そこで,毎日行っているクロソイやホシガレイの市場調査(前回のさいばい日記参照)とは別に,
1ヶ月に何回か,職員がソイ・メバル類の調査のため,市場へ出向きます。
その日は,市場のソイ,メバル類を全て調査します。
ボイスレコーダーを装備し,「キツネメバル〜25cm,メバル〜23cm」…という具合に測りながら録音し,
後でテープを書き起こします。


           メバル               キツネメバル(タヌキメバル?)


 ソイ類。この中にクロソイ,キツネメバル,ムラソイがいます。

コラムでもありましたが,キツネメバルとタヌキメバルが良く似ているので,担当者泣かせです。
しかし,栽培漁業を行う上での基本情報である水揚げ量をおろそかにはできません。
一生懸命計測します。
こうして集めたデータは,パソコンに記録。地道な作業ですが,
これが蓄積されて,重要なデータとなっていくのです。

ところで,野田は学生時代ウツボという魚で卒論を書きました。
今でも,ウツボの類は好きな魚の一つです。
あの腹鰭も胸鰭も無いヘビみたいな特殊な形に進化してきたこと,
磯の生態系の頂点に近い位置にいること,初期の生態の謎など,魅力がいっぱいです。

先日,ぬいぐるみを発見したので即買いしてしまいました。
プレゼントとして頂いた分と合わせて3体います。
まだまだ数タイプ存在するようなので,ぜひゲットしたいと目論んでいます。
…これも地道な作業ですが,重要なデータとならないばかりか,野田の自己満足で終わりそうです…


  ウツボ。よく見るとかわいい!         野田の自己満足

 2008年8月21日 番外編1〜市場調査(クロソイ)〜

お盆が過ぎてから,宮古は一気に秋になってしまいました。
朝の気温は20℃位で,Tシャツ1枚では寒いくらいです。
少し前まで海で泳いでいたのが嘘のよう。
これだけ寒いと泳ぐ気力も起きません。そして,朝も起きられません。
まあ,朝弱いのは周年ですが…

栽培漁業では,放流した魚がどのくらい市場に水揚げされるか調査することも重要な仕事の一つです。
調査は主に専門の調査員さんが行っていますが,栽培漁業センターの職員も行います。
水揚げの状況を自分の目で見て確認するためです。

宮古魚市場には,宮古湾周辺で獲れた魚介類が集まってきます。
クロソイをはじめ,ヒラメやホシガレイ,ニシンなど,数多くの種類の魚が水揚げされています。
もちろん,その中には放流魚も混じっています。
この放流魚がどのくらいの数で,どのくらいの大きさになっているか,天然と放流の割合はどのくらいか,といったことを調べます。
魚の種類ごとに,天然魚,放流魚を区別し,そして全長を測ります。

クロソイは秋に成長期を迎えます。
例年9月の頭になると,昨年放流したクロソイがまとまって水揚げされ始めます。
そろそろクロソイが水揚げされてくるはず!と思いながら,毎朝市場に向かい,
サバやブリ,ヒラメなど,他の魚の水揚げ状況を横目に見ながら,クロソイを探します。
しかし,今の時期,クロソイはまだちらほらとしか見られません。
キツネメバルやムラソイなど,他のソイ・メバル類の方が目立っています。
これらの調査も行わなければいけないのですが,この様子は次回と言うことで… 


 市場での一コマ。調査員さんと          クロソイ,全長測定中

以前,さいばいコラム(No.1)でも話題に上りましたが,
三陸では水温が上がる8月の終わりになると,南の海からのお客さんが数多くやってきます。
水揚げされた魚の中に混じっている「珍魚」を探すのは,調査以外の楽しみでもあります。
野田にとって,昨年度は「ウチワフグ」や「イレズミコンニャクアジ」などがヒットでした。


         ウチワフグ               イレズミコンニャクアジ

また,他の研究機関から,魚のサンプリングも頼まれています。
ちなみに,今頼まれている魚は,メイタガレイ,イスズミ,コモンカスベ,クロメダイ,ムツ…
と,メジャーな魚からマニアックなものまで多種多様。

…でも,まず優先すべきはクロソイはじめ,ソイ・メバル類ですよ。
ええ。浮気は駄目です。
 2008年8月12日 放流が終わって

無事に放流が終わった後は,片付け作業です。
水槽はメバルやキツネメバルなど,別の魚の試験に使いますが,
ホース類などは,しばらくここでお休みです。
また来年使えるように,消毒をして洗います。

一方,キツネメバルやメバル,そしてクロソイの親魚の飼育などは引き続き行われています。
クロソイの親の交尾時期も近づいています。
親魚の管理についてもそろそろ具体的に考えなければなりません。
そして,報告書,論文…


 飼育中のキツネメバルの稚魚(左)とメバルの稚魚(右)

気付けば8月も半ば。
市場では去年の放流魚の水揚げが始まっています。
栽培漁業を行う上では,
放流した魚がどのくらい市場で水揚げされるかを調べる「放流効果調査」も重要です。
自分が放流した魚が水揚げされるのは嬉しいことですが,この調査も大変です。
クロソイの飼育が終わっても,やることがいっぱいです。

この「さいばい日記」では野田が多く写っていましたが,
今年も無事に放流までたどり着けたのは,
栽培漁業センターの職員をはじめ,様々な方々の協力があったからです。
魚を育てるのも,放流するのも,調査をするのも一人では出来ません。
栽培漁業センターだけでも出来ません。
地域の協力があって,はじめて成り立つものだと思います。

先日,地域住民を対象とし,栽培漁業を知ってもらうための体験学習が行われました。
栽培漁業センターで研究している魚,放流の効果,
そして,放流場所の重要性と地域の協力の必要性についてお話ししました。
たくさんの魚を飼育し,放流したとしても,
稚魚が育つのに適した藻場・干潟(写真)といった放流場所がなくなってしまっては,
栽培漁業を展開するのは難しくなってしまうのです。
体験学習を通して,藻場や干潟を大切にしてくれるよう,地域の皆さんへ協力をお願いしました。

栽培漁業をもっと広く知ってもらいたい!

稚魚を育む藻場


栽培漁業センター3年目の野田は,いつも助けてもらいっぱなしです。
支えて下さった皆様,そして,つたない日記を読んで下さった皆様に深く感謝いたします。
この日記が,栽培漁業について少しでも理解を深める手助けになれたのであれば幸いです。

クロソイの放流は終わってしまいましたが,
もう少しだけ,宮古栽培漁業センターの様子をお伝えしようと思います。
番外編としてお楽しみ下さい☆
 2008年8月4日 いよいよ種苗放流(飼育76日目)

飼育をしてきて,2ヶ月半。
ここまで多くの魚を星にするわ,私生活でも携帯は壊すわと,
様々な事がありましたが,今日はいよいよ放流です。
まずは配付の時と同様,トラックに積んだ水槽に海水を汲んで,酸素の出具合をチェック。
そしてクロソイをバケツリレーで積み込みます。


 ここでもバケツリレー(左),輸送の途中で水温をチェック(右)

最後に輸送水槽の中で,ちゃんとクロソイが落ち着いたことを確認してから出発です。
今日の放流は,センターのある岩手県宮古市から北へ約100kmのところにある久慈市で行います。
野田も実際に現場まで同行し,酸素の出具合や水温,魚の様子に異常がないかチェックします。

こうして,久慈まで約2時間を経て,無事到着したクロソイは,
稚魚の隠れ家となる海藻や岩のたくさんある,久慈湾内の岩礁域で放流されました。
放流は,久慈市漁協をはじめ,久慈市役所,県の地方振興局の方々と一緒に行いました。
さらに,この放流の様子は,新聞などのマスコミにも取りあげられました。
様々な方に見送られたクロソイは,来年には20cm,再来年には30cm以上に成長します。


 放流風景(左),放流場所(右)。海藻や岩がある浅い場所です。

放流したクロソイは,きっと来年には漁獲されて市場に水揚げされるでしょう。
ちゃんと標識が残っていれば,すぐわかります。
市場での水揚げ量が増えることを期待したいと思います。
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