独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばい日記
クロソイ編 2008年6月の日記





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 2008年6月30日 6月の終わり (飼育41日目)



職場にミヤマクワガタが現れました。





ところで,このミヤマクワガタ。
「ミヤマ」は「深山」で,山奥を指す言葉のようですが,
この時期の山々は青々として,「美山」という言葉も似合います。
まだ梅雨のはずなのですが,夏はもうすぐそこまでやってきているようです。
遊びに出かけたいのですが,クロソイ達が許してくれません。

あっという間に6月が終わりました。
この時期になると,魚が死んだ分だけ,野田の体重も減少します。
宮古に来てから,毎年この時期は60kgを切り,脱メタボに一歩近づきます。
ある意味ダイエット効果なのですが,あまり健康的な痩せ方とは言えないかもしれませんね。

さて,最近のクロソイ達は底掃除のときに回収される死亡魚も少なく,
一見すると大した問題が無いように見えます。
しかし,これが落とし穴でした。
水槽の端を見れば,他よりも一回り小さな魚たちが。
配合飼料を食べられないので,なかなか大きくなれず,大きい魚にいじめられて
隅に追いやられてしまっている魚たちです。

さらに,底掃除では配合飼料の糞に混じって,何やら黒いものが。
これは,共食いをしたときに出る糞です。
と,いうことは,底掃除のときに計数される死亡魚の数は少なくても,
死体の上がらない,共食いされている魚がかなりいるということ。
取り上げをすれば,大きい魚(平均32mm)と小さい魚(平均22mm)を
選別することができるのですが,現在平均全長は27mm。
取り上げ時の目標サイズの30mmまで,もう一回り大きくしたいところです。
あと数日ですが,気の抜けない日々が続きます。



底掃除機で吸い出された食べ残しの餌や糞。その中に共食いの残骸が…
 2008年6月25日 さらに成長 (飼育36日目)

野田の身長は約163cm。
悲しいことに大学に入った頃(約8年前)からほとんど伸びていません。
しかし,配合飼料を食べ出したクロソイは,どんどん大きくなっていきます。

少し大きくなりました


前回の日記の写真と比べてみても,少したくましくなったように感じます。
この頃のクロソイは,今まで無かった鱗ができてきたり,
背鰭の棘が完成したりと,体のつくりが劇的に変化します。
半透明だった体にも色が付いてきました。
現在平均サイズは18mmですが,大きい魚は25mm以上になっています。
しかし,小さい魚はまだ15mm程度。
写真で見ると,その差は一目瞭然です。

格差拡大中…


1日の死亡数も1,000尾以下になってきました。
あとは共食い対策や水質管理を行いながら大きくするだけです。
そして,ここまで来ると,取り上げ(より管理がし易いように網生け簀に移す作業)までの
カウントダウンがはじまります。
飼育開始から45〜50日目くらい,平均の大きさが30mmに近くなり,
鱗が完成すると,タモ網ですくうなどの取り上げ作業にも耐えられるようになります。
おそらく7月上旬には,取り上げしても大丈夫なのではないでしょうか。

アルテミアより栄養たっぷりの配合飼料に餌付いた魚は,どんどん大きくなっていきます。
しかし,餌付けがうまくいかなくて,アルテミアしか食べない魚が多かった場合,
このような魚はどんどん成長が遅れていきます。
そして,最終的には共食いの餌食となったり,大きな魚にいじめられ,
餌が十分に食べられなかったりして,また死ぬ魚が増えてしまうでしょう。
このカウントダウンの期間は,今シーズン最後の勝負所です!
 2008年6月19日 少しずつ大きく (飼育31日目)

種苗生産を開始してから1ヶ月が経過しました。
40万尾いた仔魚たちは今や15万尾(推定)…
しかし,調子の良くないクロソイの世話にバタバタしている間も,
生き残っている元気なクロソイたちは,少しずつ,でも着実に成長しています。

現在の大きさは約16mm,だいぶ魚らしくなってきました。
小さいうちは,万能投影機という機械を使い,拡大して全長を測ります。











全長測定中。大きくなったね〜
(Tシャツに突っ込みはナシよ☆)



配合飼料に餌付いた魚は,元気に水槽の中を泳いでいます。
食欲も旺盛で,クロソイたちは,配合飼料を1日に1kgほど食べます。
今まで主食だったアルテミアは,既におやつ同然です。
それでも飽き足らない大きな魚は,小さな兄弟をくわえて共食いしていますが…

この頃になると,動きに変化が。人に反応して逃げるようになります。
流れに逆らいながら,群れになって気持ちよさそうに泳いでいる姿を見に行くと,
さっと散ってしまうのです。
その他にも,観察のためのカップ,底掃除機など,色々なものに反応するようになります。
餌をやりに来たっていうのに,さっと逃げるクロソイ…
これには女性に何回も振られている野田でも軽くショックを受けます。

しかし,これらの反応は元気な証拠です。
今,生き残っている魚は死守しなければ!
このまま,順調にどんどん大きくなって行ってくれれば良いのですが,
油断すると共食いがより激しくなる可能性があります。
また,餌の量を増やしているので,水が汚れやすくなります。
バランス感覚の無い野田が,餌の量と水の交換量のバランスをとらなければいけないこの時期,
まだまだ気が抜けません。


メバルの仲間なので目が大きいのですが,微妙に目つきが悪いです
 2008年6月15日 生存競争 (飼育26日目)

昨今,格差社会が問題となっています。
野田も,職員の中では底辺に位置する給料で何とか食いつないでいます。
残業も多いのですが,残業代などはスズメの涙で,
手取りの給料を時給換算すると悲しいことになります。学生時代のバイト代に勝てません。
米と納豆は安くて健康的なので欠かせない食材です。

クロソイの水槽内でも格差が問題化してきました。
飼育の途中で魚の調子がおかしくなったりすると,
成長の足並みが崩れ,大きさに差が出てきてしまいます。
そして,あるレベルまで差が広がってしまうと,
大きいものが小さいものを餌として食べてしまう共食いや,
たべきれずに両方死んでしまう共倒れが起こるのです。

こうした現象は,死亡魚の増加ばかりでなく,
さらに進むと病気の発生を引き起こしてしまう可能性があります。
この共食い防止のため,今年はワムシを与える期間を延ばしたり,
配合飼料を早めにやったりと,対策を進めてきたつもりでした。
しかし,初期死亡やエア食いで,もう何回か調子を崩しています。
昨年度,共食いはふ化後15日目から見られ始めたところを,
今年はもっと遅い段階まで発生を遅らせることはできました。
でも,とうとう大小差が激しくなり過ぎ,共食いが始まってしまいました。
少し前から調子が悪かったので,心配してはいたんです。
万単位の死亡が続いているこの状況で共食いまで。まさに泣きっ面に蜂です。

水槽内には,小さい魚を狙っている,一回り大きな魚の姿があります。
ふらふらしている兄弟は,格好の餌食。餌として見られています。
今年も見たくなかった光景が目の前に広がり,厳しい現実を突きつけられます。

しかし,諦めるわけにはいきません。
上司,先輩達のアドバイスを聞きながら,これ以上共食いが進まないように,
餌を入れる時間を変えたり,頻繁に観察を行ったり対策を講じます。

これが第3の修羅場です。
これ以上死亡が増えると,生産目標を達成することも厳しくなります。

今日は父の日です。
野田家には兄弟が3人いるので,時々自己主張をしないと忘れ去られてしまいます。
そこで,とりあえず生存報告をして安心させるため,父親にウニとホタテを送りました。
しかし,クロソイの育ての親(野田)は安心できない日が続きます。


 共食い。ショッキングな光景
 2008年6月10日 不穏な気配 (飼育21日目)

先日,高校時代の部活の友人の結婚式に行ってきました。
名字が「山下」から,「奥澤」に変わり,画数が5倍程度に増えたそうです。
懐かしい顔を見ることができ,1/3ぐらいは同窓会の雰囲気でした。

そんな幸せそうな雰囲気とうって変わって,
本日,クロソイの飼育水槽では,1日の死亡数が5倍に増えました。
2千尾程度であった死亡魚が,今日は約1万尾。非常に嫌な予感がします。

水槽を覗くと,野田を幾度となく悩ませてきた「キラキラ」があちこちに見られます。
魚が大きくなったので,不安定に泳いでいる魚がより目立つようになってきたのです。
魚はわけもなくそんなに大量に死んだりしません。
1万尾も死ぬということは,絶対に何か原因があるのです。

ワムシからアルテミアへの餌の切り替えが,上手くいってくれなかったのか?
それとも別の原因か?
嫌な予感が頭をよぎります。

急いで顕微鏡で観察します。
案の定,調子の悪い仔魚は餌を食べてくれてはいませんでした。
そして,なぜか胃の中には空気が入っています。

お腹の空いたクロソイの仔魚が,餌と間違えて空気を飲み,
体が浮いて,上手く餌を食べられないせいで調子を崩していたのです。

これを「エア食い」と呼び,病気ではないのですが,
このままだと死んでしまう仔魚がどんどん増えてしまいます。
少し前に,飼育水中の酸素濃度が低くなったため,
仔魚が酸欠を起こさないように,エアーストン(金魚の水槽などに使う,空気の出る石を大きくしたもの)
を細かい泡が出るものに取り替えたり,空気の量を上げたりしたのですが,
それが仇となってしまったようです。
急いでエアーストンを元のものに取り替え,空気の排出量を調節しました。

しばらくは,慎重に様子を見なければなりません。
ここに来て,初期死亡に続く第二の修羅場がやってきてしまいました。
野田は無事に乗り切ることができるのか!? クロソイの明日はどっちだ!?



 魚をすくって観察。魚は大丈夫かな?1日に何回も繰り返します
 2008年6月4日 餌の切り替えとお母さんの移槽 (飼育15日目)

こんにちは,ご無沙汰しています。クロソイの母です。

クロソイと同時並行でやっているホシガレイのさいばい日記はご覧になって?
ホシガレイは,そろそろ放流する日が近くなってきたみたい。
野田の大先輩が育てているホシガレイは,すくすくと大きくなりながら放流の時を待ってるようです。

一方,私の子どもたちは現在13mm。
飼育開始時と比べて2倍に成長したけど,
人間が触っても大丈夫な大きさになるには,まだまだ時間がかかるの。
残念なことに,たくさんの子どもたちが星になってしまったんですって。
その上,担当者はまだワムシからアルテミアや配合飼料への餌の切り替えに苦労しているって。
水は汚れてくるし,でも新しい水を入れすぎてしまうと環境を急変させてしまう,
このバランスをとるのはすごく難しいの。
あの人,そこんとこ,ちゃんとわかっているのかしら?

最近は子どもたちの話題ばかりで,私達母親の存在は忘れ去られていたかもしれないわね。
10tという小さめの水槽で出産を終えた私達は,また元の大きな水槽(150t)に戻りました。

今年は出産までに冷凍のサバやサンマが多くて,あまり新鮮な餌が食べられなかったせいか,
元気な子どもを産めなかったお母さん達が多かったみたい。
そこは次への課題として生かしてもらうとして,これからはおいしい餌をいっぱい食べさせてもらうわ。
特に産後はちゃんと栄養をとらなきゃいけないし♪
子どもたちの飼育にばっかり気を取られているみたいだけど,
来年いい子が産めるかどうかは,私たちの世話をちゃんとしてくれるかどうかにかかってるんだからね!

私達は1年に1回しか子どもを産まないの。
だから,たとえ産まれた子どもが元気なくて飼育に適さなかったとしても,
やり直しはききません。
なのに,もう今年の出産シーズンはほとんど終わってしまった…
結局,私の出産予定日は外し,仔魚の初期死亡も起こしてしまった担当者。
追い込まれちゃって,まさに背水の陣。

こんなことで,まだまだ山場がいっぱいの飼育を続けていくことができるのかしら?
無事に,とはもう言えない。でも,満身創痍でいいから何とか頑張って育て上げて!



  写真左:感謝の気持ちを込め,親魚水槽へ
  写真右:フォークリフトだって運転します!
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