独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばい日記
トラフグ編 続編!2010年10月〜2011年1月の日記

執筆者プロフィール
 2011年1月17日 大詰めです(最終回) 2011.1.18掲載
南伊豆栽培漁業センター

本日,昨年12月末までの3ヶ月間にフグ加工場で処理されたトラフグの耳石調査が終了しました。
年内にフグ加工場で処理されたトラフグは合計で約2,300尾。
そして,これらのトラフグから収集できた耳石(扁平石)の数は約4千個(採取率89%)でした。

収集できた全ての耳石について標識の有無を調べたところ,約350個に標識が付いていました。
標識魚の混入割合は約9%(350/4,000×100%)ということになります。
この調査から明らかとなった放流魚の混入割合と,
魚市場に水揚げされたトラフグの総尾数とのかけ算により,
漁獲できた放流魚(耳石標識魚)の尾数(回収尾数)を推定します。
例えば,年内に魚市場に水揚げされたトラフグが2万尾だったとすると,
これに0.09を掛けて1,800尾。
約1,800尾の放流魚が水揚げされた,と推定するわけです。
このような調査は,愛知県や三重県でも並行して行われており,
静岡県,愛知県,三重県の調査結果を足し合わせて,漁獲された放流魚の総数を推定します。

今シーズンのトラフグ延縄漁も,残すところ,1ヵ月半となりました。
フグ坊たちの追跡調査も大詰めです。

魚市場や水産加工場で調査に奮闘する試験研究員に,これからも応援をよろしくお願いいたします。


三重県水産研究所によるトラフグ調査(安乗漁港)



愛知県水産試験場によるトラフグ調査(片名漁港)




鈴木重則です

2010年10月
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2010年11月
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2010年12月
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2011年1月
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 2010年12月20日 35%が放流魚!? 2010.12.22掲載

本日,10月の1ヶ月間にフグ加工場で処理されたトラフグの耳石調査が終了しました。
フグ加工場で10月に処理されたトラフグは合計で約1,200尾でした。
そして,約1,200尾のトラフグから収集できた扁平石(きのこ)の数は約2千個(採取効率84%)でした。
これらすべての耳石について標識の有無を調べたところ,
初日(10月2日)のサンプルと同様に,約1割(200個ほど)の耳石から標識が見つかりました。
やはり,漁獲全体の10%程度が標識放流したフグ坊たちで占められているようです。


標識を確認した耳石は大きさなどを測定した後,ケースにいれて個別に保管しておきます




今シーズンの耳石サンプルも,たくさん集まってきました



魚市場や加工場の調査で見つけることのできる放流魚は,
イラストマー標識や耳石標識などを施した「標識魚」のみですが,
実のところ,標識を付けないで放流しているトラフグも,たくさんいるんです。
東海地方(静岡県・愛知県・三重県海域)で放流されているトラフグ稚魚は,
毎年70万尾前後になりますが,調査の対象となっている標識付きの放流魚は20万尾ほどです。
ということは,発見されたトラフグ標識魚の他に,
その2.5倍もの無標識魚が漁獲物の中にひそんでいることになります。
耳石標識の調査結果から,無標識魚を含めた放流魚の混入率を単純に計算すると,
10月に漁獲されたトラフグ全体の35%が放流魚ということになります。
おおざっぱな計算ですが,放流魚の貢献はかなりのものと言えそうです。

しかし,放流魚の割合が高い,ということは,
逆の見方をすれば,純粋な天然生まれのトラフグが少ないということの表われでもあります。
天然生れのトラフグが少ない海の状態は,放流魚にとっても決して居心地の良いものではないでしょう。
稚魚の放流は,漁獲量を早急に増やすことができる対策としては有効ですが,
海からの恵みを末永く受け続けるため,
そして,稚魚の放流をより効果的なものにするためには,海の環境を健全に保つことが基本ですね。




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放流情報
 2010年10月4日 その3  光る耳石,発見! 2010.12.8掲載

不純物を含むサンプルから取り出すことができた耳石の数は,
きのこ (扁平石)が193個,つのじ(星状石)が126個,おにぎり(礫石)が117個でした。
処理されたトラフグは107尾だったので,それぞれの耳石の採取効率は,
きのこが90%,つのじが59%,おにぎりが55%ということになります。
早速,採取できた耳石のうち,きのこ型の扁平石について,標識の有無を検鏡していきます。


さ〜て,いくつの光る耳石が出てくるかな?



すると,出るわ,出るわ!
光る耳石が次々に出てきます。
193個の耳石を見終わり,標識付きの耳石の数を集計すると,全部で19個!
全体の約1割に標識が付いていたことになります。


光をあてると浮かび上がる赤色のリング
これが光る耳石の正体だ!



今シーズンのように,天然魚の発生が少なかった年には,
放流魚が漁獲物中に占める割合は,非常に高くなります。
漁業だけでなく,仲卸,流通,小売業,飲食業や観光業など,
トラフグに関連する産業の安定経営に,栽培漁業は切っても切り離せない存在になりつつあります。




 2010年10月4日 その2  キノコ,つの字,おにぎり!? 2010.11.25掲載

トラフグに限らず,魚は3対(合計6個)の耳石を持っています。
それぞれの耳石には名前がついており,大きいものから順番に,
扁平石(へんぺいせき),星状石(せいじょうせき),礫石(れきせき)と呼ばれています。
でも,こんなに難しい名前では,なかなか憶えることができませんよね。
そのため,南伊豆栽培漁業センターの実験室では,
いつの間にか,それぞれの耳石を愛称で呼ぶようになりました。


トラフグ成魚の耳石
左から順番に礫石,扁平石,星状石です
何のかたちに見えますか?



耳石のかたちは,魚の種類や成長段階によって異なりますが,
トラフグの成魚では,それぞれの耳石のかたちが,大きいものから順番に
キノコ型,つの字型,おにぎり型に見えます。
そこで,その形の通り,「キノコ」,「つの字」,「おにぎり」と愛称が付いてしまいました。
標識の観察に使うのは,キノコ(扁平石)とおにぎり(礫石)の2種類です。
パートさんから「キノコの準備,できました〜」と声がかかります。
さ〜て,キラッと光り輝く標識の付いた耳石は出てくるのでしょうか・・・


キノコ(扁平石)を5個ずつ並べたスライドガラスを顕微鏡にセットして
いよいよ標識の有無を観察します
耳石表面で光が乱反射するのを防ぐため,液に浸した状態で耳石を観察します




 2010年10月4日 その1  ととのいました〜! 2010.11.24掲載

大切なサンプルと一緒に,第1回目の調査を終えて南伊豆栽培漁業センターへ戻りました。
今度は,栽培漁業センターの実験室でサンプルの処理作業が始まります。
持ち帰ったサンプルには耳石以外の不純物が大量に含まれています。
この中から耳石のみを探し出さなければなりません。
しかし,相手は2ミリメートルほどの小ささ!
1つずつ探し出していては,いくら時間があっても足りません。

そこで荒技の登場です。
サンプルに水を加えて激しく振り動かします。
シェイク,シェイク,シェイク! すると,あら不思議!
不純物よりも重たい耳石だけが,底のほうに沈みます。
沈殿した耳石のみをピペットで吸い出して,スライドガラスに並べれば,
いよいよ顕微鏡で耳石標識を観察する準備が,ととのいました〜!


沈殿物のみをピペットで吸い出して,不純物と耳石を選り分けます
米粒のように白く見えるツブツブが耳石です




取り出した耳石をピンセットで摘んでスライドガラスに並べていきます




 2010年10月2日 その4  大収穫 2010.11.18掲載

本日,フグの加工場に入荷したトラフグは全部で107尾でした。
すべてのフグから耳石周辺の組織を集めてサンプルとして持ち帰ります。
標識のついた耳石が,いくつ出てくるのか楽しみです。
早く顕微鏡をのぞきたいな〜。


アスピレーターの吸引ボトル内に,あらかじめ回収用のビニール袋をセットしておくことで,
耳石の紛失を防止しています




トラフグの身欠き作業は最終段階となりました
ひれ酒の材料となる背ビレ,尻ビレ,胸ビレも,ていねいに処理されます




 2010年10月2日 その3  耳石の採取 2010.11.4掲載

さ〜て,いよいよトラフグ加工場での私の仕事が始まります。
板前さんたちが手際よくさばいたトラフグの頭部から,標識を調査するための耳石を集めます。


トラフグの身欠き作業は第2段階に進みます
身を洗ったり,皮の部分をキレイに処理したりと,本当に手間がかかります



ただし,トラフグの耳石は非常に小さく,大きさは2ミリメートルほどしかありません。
この小さな耳石を肉眼で見つけ出すのは至難の業です。
調査のためとはいえ,厨房で耳石を探してモタモタしていては,
食材の鮮度を落としてしまうばかりでなく,板前さんたちにも迷惑をかけてしまいます。

そこで活躍するのが秘密兵器,医療用のアスピレーター(吸引機)です!
トラフグの耳石が小さいことを逆手にとって,耳石を含む周辺の組織をまるごと吸い取ってしまうのです。
あとは栽培漁業センターに持ち帰り,じっくりと耳石を探し出していく,というわけです。


耳石の採取に大活躍の医療用アスピレーター



さぁ,本日身欠き処理された約100尾のトラフグから,耳石の採取を始めます。
標識の付いた耳石がたくさん出てくることを願いながら,吸い取り作業を進めることにします。




 2010年10月2日 その2  耳石(じせき)標識 2010.10.29掲載

昨年,伊勢湾から旅立ったフグ坊たちは,
体の大きさごとに3つのグループに分かれて放流されました(2009年5月29日の日記を見てね)。
このうち,昨日の魚市場において調査の対象となったのは,
イラストマー標識を付けた7センチグループのみです。
その他の3センチグループと4センチグループのフグ坊たちは,
魚体が小さくてイラストマー標識を付けることができません。
そのため,魚市場での調査では,これらのフグ坊たちを見つけることはできないのです。
そこで,3センチグループと4センチグループのフグ坊たちに対しては,
頭部にある耳石という小さな骨組織を染色して,これを目印として追跡することにしました。


ふ化したばかりの赤ちゃんフグに付けた耳石標識
黒い大きな目の後ろで光っている部分が標識を施した耳石(2対)です



この耳石標識の特徴として,頭部に耳石ができていれば,
赤ちゃんフグがどんなに小さくても(卵の中にいても),標識を染め付けることが可能です。
ただし,残念なことに耳石標識は,イラストマー標識のように,魚体の外側から観察することはできません。
耳石標識が付いていることを確認するためには,フグをさばいて頭部から耳石を取り出し,
これを特殊な顕微鏡(蛍光顕微鏡)で観察しなければならないのです。
しかし,魚市場に水揚げされたトラフグをかたっぱしから購入して,
耳石標識を調べるなんてことをしたら,いくらお金があっても足りません!
そこで,登場するのがトラフグの加工場,というわけです。


耳石標識の観察に使う蛍光顕微鏡




 2010年10月2日 その1  福を追いかけて 2010.10.28掲載

作業着から白衣に着がえて,身なりパッパッと整えると,
「おはようございま〜す,今シーズンもよろしくお願いしま〜す」と挨拶をして,
消毒剤や洗浄剤の匂いがただよう厨房へ入っていきます。
ここはトラフグの身欠き処理専門の厨房です。


漁師さんの朝も早いが,板前さんの朝は,それ以上に早い!?



昨日,舞阪漁港に水揚げされたトラフグの一部は,同じ浜松市にあるリゾート温泉街へ運ばれていました。
遠州灘で漁獲されるトラフグが,リゾート温泉街の新たな名産品として観光客誘致に活用されているのです。みなさんご存知の通り,トラフグは肝臓や卵巣などに毒が含まれるために,
専門の資格を持ったプロの板前さんでなければ,扱うことが許されていません。

そこで,このリゾート温泉街では,その一角に協同のフグ加工場を設けて,
ここへ資格を持った熟練の板前さん達が集まり,
毒の部分を取り除く身欠き処理を一手に引き受けているのです。
身欠き処理を加工場で集中して行うことにより,それぞれのホテル・旅館では,
提供する料理に合わせた仕上げの調理をするのみで良いため,ホテルの特色を損ねることなく,
品質の揃ったトラフグ料理を効率的に提供することが可能となっています。

で,私はここへ何をしに来たかって?
それは,次回の日記で紹介しましょう。


加工場で身欠き処理されたトラフグ




 2010年10月1日 その10 Tomorrow is another day 2010.10.27掲載

今日は久しぶりに漁師さん達や,漁協の職員のみなさん,仲買人さん達とも会うことができたし,
それに何と言っても,大きく育ったフグ坊にも再会することができたし,充実した一日だったな〜。
だけれども,水揚げされたフグの尾数が少なかったのは,ちょっと心配です。
でも,まだ初日の漁が終わっただけじゃないですか。
Tomorrow is another dayです。
元気を出していきましょう〜!


夜をむかえた舞阪の街
今夜は祝杯をあげに街へ繰り出す漁師さんも多いのでは・・・



さ〜て,明日は水揚げされたトラフグを追いかけて,次なる調査ポイントへ向います。
明日も早朝から忙しいぞ〜!
今夜は明日に備えて早めに就寝することにします。




 2010年10月1日 その9 結果はっぴょう〜! 2010.10.26掲載

本日の競りがすべて終了し,水揚げされたトラフグの尾数や重量の集計結果が出そろいました。
東海地方のトラフグ延縄漁が解禁となった10月1日,
静岡県浜松市の舞阪漁港に水揚げされたトラフグは合計2,546尾,2.9トンでした。
水揚尾数は昨年のほぼ半分です。
残念ながら水産試験研究機関が発表した予報は当たってしまいそうです。
これから来年の2月末まで,限られたトラフグ資源を注意深く,かつ計画的に
漁獲・供給していかなければなりません。


トラフグ計量の様子
高級魚であるトラフグでは,重量とあわせて尾数も伝票に記帳していきます



一方,静岡県水産技術研究所による漁獲物の調査結果ですが,
大きさや標識の有無を調べたトラフグは合計で1,358尾でした(53.3%)。
実に水揚げされたトラフグの半数近くを調べたことになります。
報道関係者などが入り乱れた解禁初日の魚市場で,
競りの進行を妨げずに調査を進めることは,精神的にも肉体的にもたいへん疲れる作業です。
トラフグ調査担当者のみなさん,本当にお疲れさまでした。

さて,最も気になるのは,本日の調査で発見されたフグ坊の尾数です。
調査担当者に赤色イラストマーが左胸鰭に付いていたトラフグ(1歳魚)の尾数を聞いてみると,
12尾が見つかった,ということでした。
標識が見落とされている割合(50.4% 標識脱落率)と,
調査したフグの割合(標本抽出率 53.3%)から計算すると,
本日は45尾のフグ坊が魚市場に水揚げされたことになります。
水揚された尾数全体の2%弱を占めていたわけですから,フグ坊たち,かなりがんばってますね!


専用のライトとメガネを通して見たイラストマー標識



さらに続けて,収益についても計算を進めてみることにします。
本日のトラフグの平均単価は4,500円ほどでした。
近ごろの社会情勢では,ご祝儀相場とならなくても,しかたがないとは思いますが・・・。
もうちょっと高値がついて欲しかったな〜。

フグ坊の体重は0.8キログラムでしたので,体重と単価を掛け算すると,
1尾あたりの市価は3,600円,45尾では16.2万円ということになります。
ちなみに,漁協などが放流を目的として東海地方にある栽培漁業センターから
トラフグ種苗を購入する場合,1尾あたりの金額は70円程度です(7センチサイズの場合)。
漁業経費や販売手数料などを差し引いて考えなければなりませんが,
フグ坊たちが魚市場に水揚げされて生じる水揚げ金額の増加効果(市場効果)は案外高そうです。


今日の仕事は終わりかと思ったら,傷ついた針を治したり,
次回の漁につかうエサを準備したりと,まだまだ忙しい船頭さん



漁獲されるトラフグの尾数,大きさ,市価や標識魚の混入状況は,
刻々と変化していきますので,漁期が終了する来年の2月末まで,
本日のような漁獲物の市場調査を定期的に続けていくことになります。
この調査結果を基にして,漁期を通してのフグ坊たちの水揚げ尾数や収益を推定し,
種苗放流の効果を総合的に評価していくことになります。




 2010年10月1日 その8  標識に見落としはつきものです 2010.10.22掲載

私たちがフグ坊の追跡に利用しているイラストマー標識ですが,
ごくわずかな量を皮下に注入しているだけなので,フグ坊が生活する上での負担は,とても少なそうです。
それなのに,1年と3カ月が経過した現在でも,
注入したイラストマーを見つけることができるなんて,実にスグレモノです。
しかし,だからといって,全てのフグ坊に注入したイラストマーが,
きちんと見つけられるわけではないんです。
フグ坊が成長し,皮が厚くなってくると,専用ライトを使ったとしても,
皮下に注入したイラストマーを発見できない場合が出てきます。
これは困りました!


見覚えのある顔なんだけどな〜 ???



そこで,イラストマー標識を付けたフグ坊の一部を,
栽培漁業センターの水槽で数年間にわたり継続飼育して,
標識を見落としてしまう割合の経年変化を調べました。
その結果,標識装着直後のイラストマーの見え具合(視認性)を調べることで,
1年後,2年後に,標識を見落としてしまう割合を予測できることがわかりました
栽培漁業技術開発研究34巻1号「トラフグ放流効果調査におけるイラストマー標識の適用」参照)。




みなさん,この標識(進入禁止)は絶対に見落とさないように!!



2009年6月30日の日記をふり返ってみると・・・
無作為に100尾のフグ坊を選び出し,
イラストマーの付き具合を確認している様子が掲載されています。
この時の観察結果を基にして,標識を見落としてしまう割合を予測するのです。

計算の結果,1年後では50.4%,2年後では61.9%の標識が見落とされると予測されました。
つまり,標識装着から1年後(正確には1年3カ月後)の現在,標識を付けたフグ坊のうち,
ほぼ2尾に1尾の割合で標識を見落としている,ということになります。
思いのほか,見落とされている標識が多いですが,
見落としの割合を予測する手段があるおかげで,調査を進める上で大きな問題にはなっていません。




 2010年10月1日 その7  ついに,フグ坊,発見! 2010.10.19掲載

つ,ついに出ました!
左胸鰭のつけ根に赤色イラストマーが輝くトラフグが発見されました〜!
待ちに待ったフグ坊との再会の時が来たのです。
静岡県水産技術研究所の調査員が,専用ライトで再度,標識の付いていることを確認して
「この子です」と教えてくれました。
お,おー フグ坊! こんなに大きくなって・・・(号泣)。


ついに,大きく育ったフグ坊と再会することができました!



思い起こせば1年と3カ月前,伊勢湾の有滝漁港から大海原へ旅立っていったフグ坊。
しかし・・・,配合飼料を食べて育ったフグ坊が,海の中で食べ物を見つけて生きていけるのか,
はたまた,世間慣れしていないフグ坊たちが,岩陰に潜む大きな魚に食べられてしまうのではないか,
と心配していたのですが,そんな不安は今日の再会で吹き飛んでしまいました。
よくぞがんばって生き抜いてくれました。

昨年の6月30日,海へ旅立った時のフグ坊は,全長7センチ,体重は10グラムほどで,
私の手の中にすっぽりと収まるほどでしたが,今のフグ坊は全長35センチ,体重は800グラムです。
もう,私の手の中にはとても収まりきれません。
さぁ,フグ坊,これからはトラフグにかかわる地域産業の活性化にしっかりと貢献するんだぞ!
活魚水槽の中を泳ぐフグ坊を見つめながら,しばしの再会を喜びました。


静岡県水産技術研究所によるトラフグ漁獲物調査
耐水紙の上にトラフグを置いて大きさを測ると同時に,標識の有無などを記録します
(2008年10月撮影)




 2010年10月1日 その6  タイムリミット迫る! 2010.10.18掲載

時計の針が11時30分を指しました。
競りの開始時刻です。場内にセリ人さんのかけ声が響き,
活魚水槽に所狭しと並んだトラフグの競りが始まりました。
仲買人さんは,トラフグの太り具合や活きの良さなどを見定めて,
競り落としたい単価(トラフグ1キログラム当りの値段)を札に書き込み,セリ人さんへ渡します。
すべての仲買人さんから札を受け取ったセリ人さんは,書き込まれた単価を見比べて,
最高値を付けた仲買人さんの屋号と金額を読み上げます。
「ごせんよんひゃく きゅうじゅうはちえん,まるみつ〜」

こうしてフグが次々と競り落とされていきます。
競り落とされたトラフグは,ただちに活魚水槽から取り上げられて,
それぞれの仲買人さんの元へ引き取られていきます。
なにしろ,漁港には,活魚水槽の空きを待つ漁船が順番待ちをしているのですから。


セリ人さんが最高値を付けた仲買人さんの屋号と金額を読み上げます



金網で仕切られた生け簀ごとにトラフグが競り落とされていきます



静岡県水産技術研究所によるトラフグ漁獲物の調査は,
帰港した漁船から荷揚げされたトラフグが,魚市場の活魚水槽に収容されてから,
競りがはじまるまでのわずかな時間で進めなければなりません。
できるだけたくさんのトラフグを測定して,より正確な調査結果を得るために,
トラフグ調査担当者は,生け簀の中のトラフグを次から次へとつかまえて,
胸鰭付近の標識を一心不乱に確認していきます。
しかし,競りの進行に従って,仲買人さん達の集団と,調査担当者との距離は
少しずつ縮まっていきます。

トラフグ調査に許された時間は残りわずか!
はやく出て来いッ,フグ坊!


競りの進行状況をうかがいながら,漁獲物の調査を手早く進めます




 2010年10月1日 その5  ロボコップ,現わる!? 2010.10.15掲載

レディーガガ風のサイバーサングラスをかけ,手に持つライトからは青いレーザービームが輝きます。
なんとも異様な4人組が魚市場に現れました!
ロボコップ?,X-MEN?
いえ,いえ,静岡県水産技術研究所のトラフグ漁獲物調査を担当されているみなさんです。
漁初日の本日から,今シーズンのトラフグ漁獲物調査がスタートしたのです。
ライトとサングラスはフグ坊たちの胸鰭付け根に注入したイラストマー標識を
見つけるための調査道具だったのです。


怪しい姿の4人組みが,水揚げされたトラフグの大きさや標識魚の混入状況を調べていきます



1尾たりとも逃すまいと,活魚槽のトラフグを片っ端からつかまえて,
胸鰭の付け根に輝くであろうイラストマー標識を探します。
昨年6月に伊勢湾から旅立ったフグ坊たちは,果たして,この中に潜んでいるのでしょうか?
出て来い,フグ坊!


胸鰭の付け根にライトをあてて,イラストマー標識の有無を調べます




 2010年10月1日 その4  芸能人,帰港!? 2010.10.14掲載

今切口に架かる浜名大橋をくぐり抜けると,漁港はもうすぐです。
漁港に併設されている魚市場の様子が少しずつ見えてくると・・・
む,むっ,何だかとても賑やかです。
そう,本日は今シーズンの出漁初日のため,大勢のテレビ取材班が港に駆けつけていたのです。
船を港に接岸すると,アッという間に何台ものテレビカメラに囲まれてしまいました。
まるで,芸能人がやって来たみたい!


たくさんのテレビカメラに囲まれる船頭さん



船のデッキでは,テレビカメラが回る中,船頭さんが釣り上げたトラフグを船の活魚槽からすくい上げ,
大きさ別に選り分けながらカゴへ移していきます。
そして,カゴを台車に乗せて魚市場へ運び入れ,トラフグを魚市場内の活魚槽へ収容します。
これで早朝からはじまったトラフグ延縄漁は,ようやく終了です。

船頭さん,お疲れさまでした。
さて,魚市場では,まもなく競りが始まります。
仲買人さん,どうか,ご祝儀相場でお願いしますよ〜!


今年のトラフグは丸々と太っていて美味しそう


 2010年10月1日 その3 トラフグ大漁! 2010.10.13掲載

船を走らせること約15分。
最初のブイ投入した位置までもどってきました。
船の速度を落としてブイにゆっくりと近づいていきます。
ブイをつかんで船の中へ引き上げ,ブイからつながる幹縄をラインホーラーで巻き上げていくと,
いよいよ揚縄の開始です!

餌の無くなっている数本の釣針が巻き上げられた後,
海中から白い大きな影が浮き上がってきました。
ついに最初のトラフグが釣れたのです。

深場から釣り上げられたために,浮袋の空気がパンパンに膨れて身動きがとれず,
フグは暴れることもなく,あっけないほど簡単に船に引き上げられました。
釣り上げたトラフグから釣針を外すと,すぐに上下の歯をペンチで切り折ります。
食材としてのトラフグは,透き通るような美しい白身が持ち味。
船に備えられた活魚槽の中でトラフグ同士が噛み合って,
美しい身に傷がついてしまっては大変です。
高級食材を提供するための心遣いは,釣り上げられた直後からはじまっているのです。


浮袋をふくらませたトラフグが次々と釣り上げられていきます



本日は2回の操業を行い,合計で70本ほどのトラフグを釣り上げました。
「漁模様は悪そうだ」という予報が出されていたわりには,それなりの釣果をあげることができました。
今シーズンの初漁を終え,ちょっとだけホッとした気分で,漁の片づけを進めます。
港では関係者がトラフグの水揚げを,今か今かと待ちかねているはずです。
片づけを終えた漁船は急いで港へもどります。


70本のトラフグを釣り上げて,船は港へもどります
今切口に架かる浜名大橋が見えてきました




 2010年10月1日 その2 やってくに〜! 2010.10.12掲載

午前5時15分,港を出てから30分ほど沖へ向かって走ると,目指す漁場に到着しました。
あたりはまだ,真っ暗です。
船を止めて操舵席から下りてきた船頭は,早速,操業の準備にとりかかります。
漁場の水深に合わせて,ロープをつなぎ合わせたり,仕掛けを海底に沈めるためのアンカーや,
海上での目印となる旗付きのブイを結びつけていきます。

本日,私が乗船した漁船は,底延縄という漁法でトラフグを漁獲します。
餌の小アジを付けた600本もの釣針が10メートルほどの間隔で一列に並んだ仕掛けを使います。
これを海底に沈めてトラフグを狙うのです。
ちなみに,歯が強いトラフグに仕掛けを噛みちぎられないように釣針と幹縄はワイヤーでつながれています。
操業の準備が終わる頃には,東の水平線上に黒く広がる雲の上から,青白い空が姿を現し出しました。
いよいよ日の出の時刻が迫ってきたのです。


トラフグ底延縄漁の仕掛け



まもなく日の出を迎えます



仕掛けの準備を終えると,次は仲間の漁船と無線で連絡を取り合いながら,風向き,
潮の向きや流れの速さ,海水の温度や海水の濁り具合など,漁場全体の様子を入念に調べていきます。
そうこうしているうちに,日の出の時刻を迎えました。
デッキで作業をしていた船頭さんが操舵席に戻り,船をゆっくりと回頭させます。
遠くに見える仲間の船も漁の開始に備えて動き出しました。
操舵席にあるレーダーの画像には,最も西側の漁場を選んだ漁船群が,
整然と一列に並んでいく様子が映し出されます。


漁の開始に備えて一列に並んだ漁船群がレーダー画像に映し出される
私の乗船している船は円の中心に位置しています



そして時計の針が5時40分を指した頃,ついに世話人さんが全船に無線で呼びかけます。
「それじゃあ,やってくに〜」
無線を聞いた周りの船から「了解」,「放り込むよ〜」などと次々に返事が返ってきます。
今シーズン初のトラフグ漁がいよいよ始まりました!
一列に並んだ漁船の軍団が,同じ方向に一定の速度で走りながら,仕掛けを海中へ投入していきます。
さすがにベテランの漁師さん達です。みんな息がぴったりです。


ついに延縄漁の仕掛けが海に投入されました。漁の開始です!



船をゆっくりと走らせながら,小アジの付いた釣針を1本ずつ順番に海中へ投入していきます。
600本の釣針を全て投入し終えるまで,一定のリズムを崩さずに淡々と作業を続けなければなりません。
鋭利な釣針に指などを引っかけてしまえば,大けがをしてしまいます。
しばし,気の抜けない時間が続きます。


漁船を走らせながら,小アジの付いた釣針を,1本ずつ順番に海中へ投入していきます



仕掛けの投入を続けること30分。
何事も無く,すべての釣針を投入し終えると,
最後に仕掛けの末端を示す旗付きのブイを海面へ投げ込みます。
これで全長数キロメートルにも及ぶ一連の仕掛けを投入し終えました。船頭さん,お疲れさまです!
ホッと一息付くのかと思いきや,船頭さんは休む間もなく操舵席に乗り込み,
ハンドルとスロットルレバーを握ります。
船を180度Uターンさせると,昇ってきたばかりの朝日に向かって全速力で船を走らせます。
最初のブイを投入した数キロメートル先の位置までもどり,今度は仕掛けを揚げていくのです。
さぁ,釣針にトラフグは喰らい付いているのでしょうか・・・





すべての仕掛けを投入し終えると,船は180度Uターンして,
最初にブイを投入した位置まで全速力でもどります。




 2010年10月1日 その1 トラフグ漁 解禁! 2010.10.8掲載

昨日の冷たい雨は,夕方までには上がりました。
今日の天気は,朝のうちは雲が残るものの,日中は汗ばむくらいの快晴となる予報。
風も弱く,トラフグ漁には絶好の日和となりそうです。
延縄漁は日の出がスタート時刻。
10月上旬の日の出は朝5時40〜50分ですが,
その1時間ほど前の午前4時30分から出漁前の漁業者集会が行われます。
私も漁業者集会に参加するため,朝3時に起床して身支度を済ませ,
まだ真っ暗な港町を民宿から歩いて集会場へ向かいます。
親フグの活け込みでもお世話になった浜名漁協の漁師さん達と,久しぶりの再会となります。
みなさん元気にしているかな〜?


集会場にはすでに灯がともり,漁師さん達が何やら雑談中



解禁初日ということもあり,すでに集会所にはたくさんの漁師さんが集まって,
今から始まるフグ漁について雑談中でした。
「おはようございます,今シーズンもよろしくお願いします!」
と挨拶をして,私も漁師さん達の雑談の輪の中へ入れていただきます。
今年の夏は暑かったこと,フグ漁の操業に備えてヘルニアの治療を済ませた苦労話,
今シーズンの漁模様は思わしくなさそうなことなどを話していると,いよいよ集会開始の4時30分となりました。
トラフグ漁の世話人さんから,操業に関する注意などの連絡事項が伝えられます。
それが終わると,いよいよ各船が操業する持ち場を決めるための「くじ引き」がはじまります。
延縄漁では全長数キロメートルにも及ぶ長〜い漁具を使いますので,
互いの漁具が絡まないようにするためにも,規律正しい操業が求められるのです。

くじ引きの方法は,いたって簡単!
たくさんのピンポン玉が入っている暗箱に,各船の船頭が腕を入れて,
ピンポン玉を1つずつ引き抜いていきます。
全員が引き終えると,最後に世話人さんが残りのピンポン玉の1つを暗箱から抜き取ります。
それぞれのピンポン玉には数字が書いてあり,最後に世話人さんが引いたピンポン玉の数字から順番に,
それぞれの船頭が自分の好きな持ち場を選んでいく,というわけです。
出漁日には毎朝くじ引きによる漁場決めが行われます。
当たり外れは,みんな平等のはず。くじ運が良くても悪くても恨みっこなしです。

「くじ引いてよ〜」
と世話人さんの声がかかると,入れ替わり立ち替わり
船頭さんが暗箱の中へ腕を入れてピンポン玉を取り出していきます。
全員がピンポン玉を引き終えると,いよいよ「山」と呼ばれるスタート玉を世話人さんが暗箱から取り出します。
「はい,でました! 27番」
番号が読み上げられると集会場の中が,ざわめき立ちます。
みなさん自分の引いたピンポン玉の数字を見ながら,「お〜!」と嬉しさを噛み殺すように声をあげる人
「なんだよ〜 こりゃダメだ」と落胆する人,無表情に「うん,うん」とうなずく人など,反応は様々です。
今日のスタート玉は27番ですから,28番のピンポン玉を持っている人から,
順番に持ち場を選んでいくことになりました。


出ました! 今日のスタート玉は27番



漁場全体を模したボードに並ぶフックのうち,
自分が操業したい位置のフックへ,船名の書かれた札を掛けていきます



好不漁に大きく影響するだけに,持ち場の選定は真剣そのものです



1番くじを引いた船頭から順番に,船名が書かれた札を,
漁場全体を模したボードに並ぶフックのうち,操業したい位置のフックへ掛けていきます。
例年同様に伊勢湾に最も近い西側の漁場に人気が集中します。
私が乗船する船も,最も西側の漁場を選びました。
全員が持ち場を選び終え,互いに各船の持ち場を確認し合うと,
ただちに集会場を後にして漁船に乗り込み,出漁に向けた最終準備を進めます。
私も漁船に乗り込み,カッパを着るなど身支度を整えます。
午前4時45分,エンジンがかかり前後の係留ロープが外されると,いよいよトラフグ延縄漁に出漁です!

岸壁を離れて漁船がゆっくりと港の中を進むと,なま暖かい潮風が顔にあたりはじめます。
あたりを見回すと,港のあちらこちらからも次々と漁船が出漁していきます。
しばらくは何隻もの漁船が私の乗っている船と並走しながら,
沖を目指して進んでいましたが,そのうち,近くに見えていた漁船の灯もなくなり,
周囲は真っ暗闇の海に包まれてしまいました。
日の出の時刻には,まだ1時間ほどあります。
今シーズンのフグ漁を占う解禁初日の漁模様に,期待と不安を膨らませながら沖の漁場を目指します。


夜明け前の港から,漁船がつぎつぎと出漁していきます




 2010年9月30日 再び,浜松へ 2010.10.6掲載

伊勢湾に泳ぎ出したフグ坊たちの生活の場は,
愛知県と三重県に囲まれた伊勢湾および三河湾,三重県沿岸の熊野灘,
そして,愛知県から静岡県の沿岸に広がる遠州灘です。
これらの海域で操業する東海3県(静岡県・愛知県・三重県)のトラフグ延縄漁は
毎年10月1日が解禁日です。
伊勢湾に泳ぎ出したフグ坊たちの追跡調査も,漁期に合わせて明日からスタートです!

毎年,解禁初日にはトラフグ延縄船に乗船して,
漁模様を実際に体感することを恒例にしています。
明日の乗船を引き受けていただいたのは,親フグの確保でもお世話になった,
静岡県浜松市の浜名漁協所属船です。
明日の早朝からの出漁に備えて,本日中に浜松市まで移動しておきます。

今日はあいにくの雨模様。
濡れた路面に注意しながら,南伊豆栽培漁業センターから浜松へ向けて車を走らせます。


再びやってきました天城峠の名物「ループ橋」



東海3県の水産試験研究機関では,南伊豆栽培漁業センターや
各県の栽培漁業センターで生産・放流されたトラフグ人工種苗の追跡調査,
そして,天然発生したトラフグの資源状態等を調査しています。
昨年のトラフグ天然稚魚の発生状況が思わしくなかったことなどから推測すると,
今シーズンの東海3県のトラフグ漁獲量は昨年の半分程度,
静岡県内の漁獲量は30トン前後に落ち込んでしまうのではないか,との予報が出されています。
今シーズンもトラフグがたくさん獲れて欲しいと思う反面,
詳細な調査結果から導き出される水産試験研究機関の予報が外れてしまうのも困ります。
今日の天気のようにモヤモヤとした気分で,東名高速道路を浜松へ向けて進みます。


雨の東名高速道路を浜松へ向けて西進(日本平PA付近)




 2010年9月  さいばい日記トラフグ編,続編のスタートです! 2010.10.4掲載

みなさま,たいへんご無沙汰です!
南伊豆栽培漁業センターの鈴木です。

2009年の2〜8月にかけて連載しました
「さいばい日記トラフグ編」を憶えていますか?
トラフグ飼育の担当である私が,親フグを活け込み,
人工授精により得られた卵から稚魚を育て,
元気に育ったフグ坊たちを海へ帰すまでの奮闘の様子を
紹介させていただきました。

当時の連載では,
「1番目:漁業者のみなさんが,立派な親フグを海から釣ってくる」
「2番目:栽培漁業センターが,立派なトラフグ稚魚を生産し海へ帰す」
ところまでを紹介させていただきました
2009年6月吉日 永遠にまわれ! トラフグ栽培漁業の環(わ))。

しかし,栽培漁業は稚魚を海へ帰せばおしまい,ではありません。
「3番目:漁業者のみなさんが,海へ帰したトラフグ稚魚を大きく育つまで管理して,
計画的に魚市場へ水揚げする」
「4番目:水産試験場などが,魚市場に水揚げされたトラフグを調査する」
「5番目:みんなで調査結果について話し合い,さらに望ましい栽培漁業の仕組みを考えていく」
とつながっていくのです。

昨年の6月に海へ放たれたフグ坊たちが,大海原でたくましく成長していれば,
この10月から解禁となる東海地方のトラフグ延縄漁で漁獲され,
魚市場に水揚げされてくるはずです。
そこで,これから翌年1月までの4カ月間に渡り,
大きく育っているであろうフグ坊たちに再会するための調査の様子を,
さいばい日記トラフグ編の続編として紹介していきたいと思います。
短い期間ではありますが,みなさま,おつき合いの程よろしくお願いいたします。



まだ,あどけなさの残るフグ坊(昨年6月)。
あれから1年が経ち,どんなにたくましく成長しているのか,再会が楽しみです。
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