独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばい日記
トラフグ編




そして海へ…


 2009年6月吉日  永遠にまわれ! トラフグ栽培漁業の環(わ) 2009.8.21掲載

今年2月から連載を続けてきました「さいばい日記トラフグ編」は,これで終了となります。
長らくのご愛読ありがとうございました。

さいばい日記はこれで終了となりますが,日記の中で紹介したのは,
親フグから得た卵を稚魚にまで育て,育てたフグ坊を海へ帰すところまでです。
しかし,栽培漁業はこれで終わりではありません!
いや,これからが栽培漁業の正念場といっても過言ではないのです。







愛知県漁業生産研究所による
トラフグ漁獲物の買い取り調査



今シーズン,伊勢湾へ放たれたフグ坊たちは,
「フグ坊たちをどのくらいのサイズにまで育ててから海へ帰すのが,最も儲かるのか?」
を明らかにするという重大任務を背負って大海原へ旅立っていきました。
この難問を明らかにするためには,まず,漁業者のみなさんに大きくなったフグ坊を,
たくさん釣ってきてもらわなければなりません。
そして,愛知県・三重県・静岡県の魚市場に水揚げされたトラフグを,
数年間にわたって詳しく調べなければならないのです。







静岡県水産技術研究所浜名湖分場による
トラフグの市場調査



東海地方で取り組んでいるトラフグ栽培漁業の環は、
(1番目)漁業者のみなさんが,立派な親フグを海から釣ってくる。
(2番目)栽培漁業センターが,立派なトラフグ稚魚を生産し海へ帰す。
(3番目)漁業者のみなさんが,海へ帰したトラフグ稚魚を大きく育つまで管理して,
計画的に魚市場へ水揚げする。
(4番目)水産試験場が,魚市場に水揚げされたトラフグを調査する。
(5番目)みんなで調査結果について話し合い,さらに望ましい栽培漁業の仕組みを考えていく。
とつながっていきます。
今シーズンのトラフグ栽培漁業の環(わ)は,1番目と2番目の段階を経て,
ようやく3番目の段階へと引き継がれたばかりなのです!

三重県水産研究所によるトラフグ天然稚魚調査


そして,トラフグ栽培漁業の環は,ここで終わるわけではありません。
一部のフグ坊たちは,大海原で大きく成長・成熟し,
新たな子孫をつくることで,トラフグの命の環がまわっていくことになります。
魚市場に水揚げされたフグ坊たちは,仲買業者,活魚輸送業者や加工業者の手を経て,
魚屋,飲食店,ホテルや旅館などへ届けられます。
そして,様々なシーンで,私たちが美味しいトラフグを味わい,
さらには,トラフグの美味しさを後世に伝えていくことで,
トラフグ栽培漁業の環は,どこまでもまわっていくのです!







トラフグと言えば,てっさ(ふぐさし)でしょう!
年に1度くらいは,ぜいたくしたいな〜



魅力的な食材であるトラフグを,いつまでも味わうことができるように,
トラフグの栽培漁業に関する取り組みを今後も進めていきたいと思います。
フグ坊たち共々,これからも応援をよろしくお願いいたします。

おわり




今年も10月から東海地方のトラフグ延縄(はえなわ)漁がはじまります。
今シーズンはどんなドラマがくりひろげられるのでしょうか・・・

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2009年7月
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        6月掲載の日記→

過去の日記
 2009年6月30日  ついにフィナーレ! 7センチグループも旅立ちます 2009.8.18掲載

フグ坊たちが卵からふ化して80日目。
今日は最後に残った7センチグループのフグ坊を活魚トラック3台に積み込み,伊勢湾まで運びます。
今日の作業が終了すれば,2月から始まった今シーズンの飼育作業はすべて終了です! \(^o^)/
長いようで短かった5ヶ月間,なんとか無事に終えることができそうです。

フグ坊の全長は昨日の測定で平均7.5センチメートルになっていました。
そして,体重はなんと10グラム!
これは3センチグループの10倍,4センチグループの4倍に相当します。
顔つきにも,親フグの風格が感じられるようになり,海へ放たれた直後でも,
他の魚に食べられてしまいそうな気はしません。







本日,伊勢湾へ旅立つ7センチグループのフグ坊です。
立派なフグになりました。



時計の針が午前7時ちょうどを指しました。
さぁ,積み込み作業のスタートです。
3センチグループ,4センチグループと同様の方法で,
イラストマー標識を付けた7センチグループのフグ坊たちを活魚トラックへ積み込んで行きます。

たくましく成長したフグ坊たちは,積み込み作業や輸送作業で死んでしまうことは,まずありません。
逆に,フグ坊たちを扱う私たちの方が,強い歯で噛みつかれないかと,ヒヤヒヤしながらの作業です。
注意しなければいけないのは,フグ坊たちを手荒に扱うと,
せっかく注入したイラストマー標識がとれてしまうことがあるので,
以前の2回と同様に,作業は慎重に行わなければなりません。
標識くっつけ隊のがんばりに応えるためにも,最後の最後まで,気を抜かずに進めていきましょう!







たくましく成長した7センチグループのフグ坊たちを
飼育水槽から活魚トラックへ送り出していきます。


今回は3台の活魚トラックでフグ坊たちを運びます。







活魚トラックの窓から外の世界を見回すフグ坊たち。
左胸ヒレの付け根には,イラストマー標識がクッキリと。



午前9時,フグ坊たちの積み込みを終えて,予定通り栽培漁業センターを出発です。
運転手のみなさん,今シーズンのラストランも安全運転で,よろしくお願いしま〜す。








午前9時30分,天城峠に入りました。
シーズン最後の天城越えは,雨の中となりました。






午前10時,天城峠を無事越えて,
いつものドライブインでフグ坊たちの様子を観察します。
異常が無いことを確認すると,
天城名物のわさびソフトで気分転換!


駿河湾が間近に迫る海岸道路を快走!



一般道を順調に走り,午前11時30分に沼津インターチェンジから東名高速道路に入りました。
そして,30分ほど高速道路を走ると・・・
あっ,見覚えのある風景が!
そうです,まだ冬だった2月,親フグ入手のため浜松へ向けて
小型トラックを運転していた時に見た駿河湾の風景です。
あれから5ヶ月・・・ いろいろあったな〜。







活魚トラックは東名高速道路を快走。
午後1時30分には静岡県を走り抜け,愛知県に入りました。







そして午後2時30分,愛知県も横断し,
ついに三重県に入りました。
有滝漁港まで,もう一息です!




午後4時を少し回った頃,ついに伊勢湾に面した有滝漁港に無事到着です。
運転手さん,お疲れさま〜!
早速,フグ坊たちを海へ帰す準備に取りかかります。
活魚水槽の中のフグ坊たちは,長時間の輸送にもかかわらず元気満々!
「早く海へ泳ぎ出したいよ〜!」と言わんばかりに,活魚水槽の中をグルグルと泳ぎ回っています。

活魚水槽の中を元気に泳ぎ回るフグ坊たち



さぁ,それでは早速,フグ坊たちを海へ帰すことにしましょう。
ホースを使って活魚水槽の中の海水と一緒に,有滝漁港の海中へ放ちます。
漁港の海面は,今まで暮してきた飼育水槽のように穏やかです。
これならば,フグ坊たちが環境の変化に戸惑うこともなく,
伊勢湾での新たな生活をはじめることができるでしょう。







活魚水槽の中のフグ坊を
海水と一緒にホースで吸い出していきます。








活魚水槽の中に残っているフグ坊も,残りわずか。
さぁ,いよいよ今日の作業も終了間近です。



活魚水槽の中のフグ坊をすべて海へ帰すと,最後にもう一仕事。
イラストマー標識の装着具合を確認します。
標識を装着したのは1週間前。
それから今までの間に,標識がとれてしまうフグ坊も少なくありません。
なので,フグ坊たちが海へ旅立つ直前に,標識の付き具合を確認しておく必要があるのです。
標識がとれてしまったフグ坊の割合を調べておけば,
これからはじまるフグ坊たちの追跡調査で得られた結果を,真の値に補正することが可能になります。






無作為に100尾のフグ坊を選び出し,
標識の付き具合を確認します。
観察には専用のライトとサングラスを使います。


注入した色素が完全にとれてしまっているものも・・・


標識の付き具合を確認し終えると,これで本日の作業は終了です。
そして,親フグの入手からはじまった今シーズンの飼育作業も,これですべて終了です!
よかった,よかった。これで私も肩の荷が下りました。
今晩はおいしいビールをいっぱい飲むぞ〜!!
 2009年6月24日  その2 任務完了! 標識くっつけ隊,おつかれさま! 2009.8.17掲載

イラストマー標識付け2日目の午後。
時計は2時をまわりました。
標識くっつけ隊の面々は,気合いで眠気を吹き飛ばしながら,黙々と標識付けを続けています。
もしも,本日午後からの作業で,6千尾を超えるフグ坊に標識を付けることができれば,
合計の標識尾数が2万尾を超えて,作業は完了となります。
しかし,本日午後からの標識尾数が6千尾に達しなければ,
再び明日の早朝から,飼育水槽の海水を排水したり,ポンプでフグ坊を移動させたりと,
フグ坊たちに負担のかかる標識作業をくり返さなければなりません。
フグ坊たちのためにも,どうにか今日中に作業を完了させたいところです。

みなさ〜ん,もう一息!
標識を付けて,付けて,付けまくってくださ〜い!





午後3時を過ぎたところで,作業を中断し標識を付けたフグ坊の尾数を集計します。
標識くっつけ隊の一人一人が処理したフグ坊の尾数を確認しながら,集計作業を進めます。
すると・・・
な,なんと,電卓がはじきだした数は,6千を超える値です!
ということは,1日目からの累計で2万尾を超えるフグ坊に標識を付けることができたのです。
標識くっつけ隊の面々は,2日目午後からの作業でも,相当にがんばってくれたようです。







2日目午後に標識を付けたフグ坊の数を集計します。
結果は・・・



標識くっつけ隊のがんばりにより,予定よりも短い期間で,
フグ坊への標識付けを完了することができました。
みなさん,本当におつかれさまでした!
標識を付けたフグ坊たちは,来週まで大切に育てて,
郷の海である伊勢湾に元気な状態で帰しますからね〜。

飼育作業の最大イベントである標識付けが無事に完了し,
今シーズンの飼育イベントは,標識を付けたフグ坊たちの大輸送を残すのみとなりました。
 2009年6月24日  その1 ピンチ! 標識くっつけ隊に襲いかかる魔の手! 2009.8.11掲載

フグ坊たちが卵からふ化して今日で74日目。
イラストマー標識の装着作業2日目です。
昨日は標識くっつけ隊の猛烈なガンバリにより,なんと8千尾近いフグ坊に標識を付けることができました。
私としてはうれしい誤算!
実をいうと,今年のメンバーはイラストマー標識の装着を経験したことのある人が,
例年よりも少なかったので,3日間で標識付けを完了できるか,ちょっと心配していたんです。
それが,初日に予定していた5千尾を,ゆうに突破し,約8千尾を処理してしまうなんて・・・・
アンビリーバボー  (゚Д゚ノ)ノ  信じられない!!
標識作業が短期間で終われば,それだけフグ坊たちに与えるストレスも少なくて済みます。
このままのペースで進めば,ひょっとして,今日中に目標の2万尾に標識を付け終えることができるかも・・・  いやいや, あまりにもガンバリすぎて,持てる力を昨日で全て出しきってしまったかも・・・
まぁ, あまり大きな期待はせずに,今日の作業に取りかかるとしますか。










赤色シリコンの調合を済ませて・・・
さ〜て,2日目の作業をはじめましょう。



午前8時半から準備をはじめ,午前9時から標識付けの再開です。
昨日の作業で,みなさん標識付けに,だいぶ慣れたようで,
「サカナくださ〜い」の声が,次々に挙がります。
フグ坊の扱いにもすっかりと慣れて,中には,フグ坊それぞれの性格を見透かしながら作業を進める者も・・・(詳しくは さいばいコラムに載ってるよ) 。 
もしや,2日目で2万尾完了も夢ではないかも・・・  


2日目もがんばっていきましょう!



標識打ちの機械は正常に作動しているか,
コンテナ水槽の中にいるフグ坊は元気か,
標識は胸鰭のつけ根にキチッと付けられているか,
標識を付け終えたフグ坊たちに異常は無いかなど,
あちらこちらを確認しつつ作業を進めること3時間,
午後0時を知らせる町内放送のチャイムが鳴り響き,標識付けは一休みとなりました。
この時間を利用して,午前中に標識を付けたフグ坊の数を集計し,途中経過を確認します。
すると・・・
午前中に標識を付け終えたフグ坊の数は7千尾弱。
昨日分と合わせて1万4千尾となりました。
うぉー! いける,いけるぞ〜! 残り6千尾。
ここまで来たら,行くしかない, Yes, we can !
今日中に2万尾を打ち終えてしまおう! 






そろそろ梅雨明け。 
夏の日差しが照りつける前に,
すべての作業を終わらせてしまわないと。




午後1時となり,標識作業を再開します。
しかし,これはどうしたことか?
ちょっと様子が変です!
標識くっつけ隊の手の動きが,明らに午前中とは違います。
そして,「サカナくださ〜い」の声が聞こえてくる間隔も,心なしか延びているような・・・ 
原因は,すぐに分かりました。
昼食の仕出し弁当がボリューム満点だったため,
激しい睡魔が標識くっつけ隊の面々に襲いかかっているようです。
こっ,これはいかん!
昨日からの作業の疲れも加わり,標識付けの作業は,一気にペースダウン!
今日中に標識付けを完了させる,というもくろみは,もろくも崩れ去ってしまうのかー!
果たして2日目午後の作業で,どれだけの尾数に標識を付けることができるのでしょうか。
みなさ〜ん,もう一息,がんばってくださ〜い!!







みなさん,もう一頑張り!
眠気に負けずがんばりましょう
 2009年6月23日  目指せ2万尾! 標識くっつけ隊 いざ出動! 2009.8.10掲載

フグ坊たちが卵からふ化して73日目。
いよいよ今日からトラフグ飼育作業の一大イベントである標識の装着作業がスタートです。
3センチグループ,4センチグループを旅立たせるために,伊勢湾の有滝漁港で一緒に作業した三重県,
愛知県,静岡県のトラフグ担当者も,栽培漁業センターへ到着しました。
さらに,私たちの取組みを応援してくれるたくさんの有志が「標識くっつけ隊」として,
南伊豆まで駆けつけてくれました。
みなさん,ありがとう!

これから3日間,みんなでがんばるぞ〜!



今回の目標は2万尾のフグ坊に標識を付けることです。
今日から3日間,みんなで協力して標識装着作業を進めることにします。
「よーし,みんなでがんばるぞ〜, えい!えい!おー!!」
総勢20名を超える「標識くっつけ隊」が,
飼育水槽の中からフグ坊をすくい取りバケツに入れる者,
バケツに入れたフグ坊をあちらこちらに運ぶ者,
運ばれてきたフグ坊に標識を付ける者と,
役割を分担して標識作業を開始します。

作業台の前にずらっと並んだ「標識くっつけ隊」の面々



フグ坊に付けるイラストマー標識は,医療用のシリコンゴムに赤色の蛍光色素を加えたもので,
これを胸鰭つけ根の皮の内側に注射器で注入します。
注入するシリコンゴムの量は,ごくわずかですが,
専用のライトを当てると色素が輝いて見えるので,
フグ坊が大きく育った数年後であっても,標識を確認することが可能です。







注射器で赤色の色素を,
フグ坊の胸鰭付け根に注入します。








赤色のシリコンゴムを注入されたフグ坊は,
目を丸くして,ビックリ!





作業台の上に置かれたコンテナ水槽。
この中へ標識を付けるフグ坊をストックしておきます。
標識付けが進み,コンテナ水槽の中にフグ坊がいなくなると,
「サカナくださ〜い」と声を挙げます。
すると,おかわりのフグ坊がバケツで運ばれてくる,というしくみ。




標識作業がスタートすると,プシュ,プシューと,
シリコンゴムを注入する機械の音が飼育棟内に響きます。
作業は始まったばかり。
まだまだ先は長いので,みなさん,無理せずがんばってくださ〜い!

みなさん黙々と作業中
 2009年6月19日  標識装着作業の準備 2009.8.4掲載

フグ坊たちが卵からふ化して今日で69日目。
全長は5センチメートルを超えました。
飼育水槽に残るフグ坊は,7センチグループの約4万尾のみです。
すでに伊勢湾へ旅立っていった3センチグループおよび,4センチグループを含めて,
すべての稚魚には,どのグループであるかが判別できるように,
耳石標識が付けてあります。
7センチグループには耳石標識に加えて,イラストマー標識を施すことにします。

従来フグ坊たちの追跡調査には,主にイラストマー標識を利用してきましたが,
今後の追跡調査が耳石標識を利用した方法に代わっていくことを見越して,
標識方法や調査方法が異なっても,得られる結果が一致することを確認するためです
(詳しくはトピックスNo.061No.118をご参照ください)。

今日は,成生さん,パートさんと協力して標識装着をする作業台を設置したり,
標識を装着するための機器や道具類を用意します。
来週の標識作業には,愛知県,三重県,静岡県のトラフグ調査担当者をはじめ,
大勢の方々が栽培漁業センターへやってきます。
それまでに,大勢が同時に標識の装着作業ができるように,
いろいろと準備をしておかなければなりません。


まずは,飼育水槽のそばに作業台を備え付けます。


作業台の上に,海水の配管を据え付けます。


最後に電気の配線をすれば・・・


はい,出来上がり!


これで約20名が同時に標識の装着作業を進めることができます。
 2009年6月9日  4センチグループも出陣! 2009.7.31掲載

フグ坊たちが卵からふ化して今日で59日目。
全長は昨日の測定で平均4.5センチメートルに成長していました。
さて,本日は4センチグループのフグ坊約9万尾を活魚トラック5台に積み込み,
伊勢湾まで運び海に帰す日です。
先週,伊勢湾に旅立っていった3センチグループとの全長の差は,わずかに1センチ足らずです。
しかし,その体重を比較すると,3センチグループでは平均1グラムであったものが,
4センチグループでは2.3グラムと,倍以上の違いがあります。
全長で比べれば,たった1センチメートルの違いですが,見た目の丈夫さは,くらべものになりません。







本日,伊勢湾へ旅立つ4センチグループのフグ坊です。
ボリュームのあるフグらしい体型になってきました。



先週と同様に,朝6時30分から活魚トラックへフグ坊の積み込みを開始します。
3センチグループとは違い,かなりたくましくなったフグ坊たちは,
網で巻かれようが,バケツですくわれようが なんのその!
平気な顔をして活魚トラックに積み込まれていきます。
おかげで私たちも安心して作業にあたれます。









前回と同様に巻き網でフグ坊たちを囲い集めて,
飼育水槽から送りだしていきます。
作業中,手をフグ坊に噛まれると,とても痛いです!!



活魚水槽には,次々とフグ坊たちが送り込まれてきます。


飼育水槽から活魚トラックへの積み込み作業の様子(動画)
(約22秒。別ウインドウで開きます。2,008KB)


さて,予定通りの午前9時に南伊豆栽培漁業センターを出発した5台のトラックは,
順調に天城峠を越えて,東名高速道路に入ります。
天気は晴れ晴れ,道路はスイスイ,フグ坊はイキイキで,私の気分は上々です。

再びグルグルと天城峠のループ橋を登ります。


駐車場の人気者!

道中,私たちが活魚水槽の側面に付いている窓からフグ坊の様子を観察していると,
近くにいる人は「何が入っているの?」 と,必ず寄ってきます。
今日は,バス遠足の途中で休憩していた幼稚園児が遊びに来ました。
「うぁー,フグだ! フグがたくさんいるよ〜」
活魚トラックは,まるで移動水族館のようです。


午後2時,豊田JCTで伊勢湾岸道に入ります。


今日は先週よりも30分ほど早い,午後4時に有滝漁港へ到着です。
5台のトラックが漁港の岸壁に並んで駐車すると,
早速,活魚水槽のフタを開けて,フグ坊の様子を確認します。
やはり,4センチグループのたくましさは,見かけだけではありません。
活魚水槽の中に弱ってしまったフグ坊は見当たりません。
フグ坊たちに異常がないことを確認すると,
ただちにホースを利用してフグ坊たちを海へ放ちます。

「みんながんばって大きくなるんだぞ〜」
と心の中で応援しながら,フグ坊たちを次々にホースで吸い出していきます。







有滝漁港へ到着すると,
活魚水槽のフタを開けて,フグ坊の様子を確認します。







活魚水槽の中に最後に残ったフグ坊を,
バケツに集めて,海へ放ちます。
「みんな元気でがんばれよ〜」



作業開始から30分,すべてのフグ坊を海に放ち,本日の輸送も無事終了です。
運転手さん,お疲れさまです!
さ〜て,これで南伊豆に残るフグ坊は,7センチグループのみとなりました。
今シーズンの飼育作業も,ついにゴールが見えてきました。
もう一息,最後までがんばるぞ〜!
 2009年6月2日  フグ坊たちの大輸送,そして旅立ち(後編) 2009.7.30掲載

【午後4時30分】
南伊豆栽培漁業センターを出発して7時間半,
ついに,フグ坊たちを旅立たせる伊勢湾西岸の有滝漁港に到着しました。
三重県水産研究所と愛知県水産試験場のトラフグ担当者は,すでに現場に到着していました。
あいさつを交わすのもそこそこに,岸壁にトラックを整列させると,
直ちにフグ坊たちを旅立たせるための準備にかかります。

まずは,活魚水槽のフタを開けて,フグ坊たちが弱っていないか確認します。
水面を覆い尽くしている泡を手で払いのけて,水槽の中を急いで見回します。
まだ幼さの残る3センチグループの輸送では,1割程度の死亡は覚悟の上です。
水面付近や水槽底に,弱ったり死んでしまったフグ坊がいないか隅々まで確認しますが・・・
大丈夫,大丈夫,みんな元気に泳いでいます。
死んでしまったフグ坊はほとんどいません。
活魚水槽の中を泳ぎまわるフグ坊たちに衰弱した様子は見られず,みんな力強く泳いでいます。
3センチグループの輸送は大成功です!

さあ,ついにフグ坊たちの旅立ちの時がきました。
直径が5センチメートルもある太いホースを利用して,
活魚水槽の中の海水と一緒にフグ坊たちを漁港の岸壁から海へ放ちます。
しかし,ただ単にホースを活魚水槽の中へ入れておいても,
元気に泳ぐフグ坊たちは,ホースの口元に寄って来てはくれません。
そこで,胴付長靴を履いて,活魚水槽の中へもぐり込み,
右へ左へとフグ坊たちを追いかけて,ホースで吸い出していきます。
こうでもしないと,吸い出されるのは海水ばかりで,
フグ坊たちだけが水槽の中に取り残されてしまうことになります。
活魚水槽へもぐり込んで中を見回してみると,
よくもまあ,これだけたくさんのフグ坊を元気に運んで来たもんだな〜,と感心するばかりです。
トラック運転手に感謝,感謝です。







活魚水槽の中を元気に泳ぎ回るフグ坊たちを,
ホースで追いかけて吸い出します。


フグ坊たちは,ホースを通って一気に海の中へ



ほとんどのフグ坊は海水と一緒に
ホースから吸い出されていきますが,
それでも,いくらかのフグ坊は
活魚水槽の中に取り残されてしまいます。
残されたフグ坊は,タモ網で1尾残らずすくい取り,
バケツに集めて海へ放ちます。



【午後5時】
ようやく,すべてのフグ坊を海へ帰すことができました。
長旅の疲れも見せないで,フグ坊たちは,まっしぐらに海のかなたへ泳いでいってしまいました。
「みんな元気に生きていくんだぞ〜」
しばし,フグ坊との別れを惜しみながら,海面をしみじみと眺めます。






がんばって生きていくんだぞ〜!
元気よく海に帰っていったフグ坊たちを,
みんなで見送ります。



さて,まだ南伊豆の飼育水槽には,
4センチと7センチにまで育て上げなければならないフグ坊たちがたくさん残っています。
順調にいけば4センチグループは来週,7センチグループは1ヶ月後に,
この場所から大海原へ旅立つことになります。
なんだか急に南伊豆に残してきたフグ坊たちが恋しくなってきました。
さ〜て,早く南伊豆へ戻ってフグ坊たちのお世話をしなければ・・・
 2009年6月2日  フグ坊たちの大輸送,そして旅立ち(中編) 2009.7.29掲載

【午前9時30分】
走り出して30分。
いきなり最大の難所,天城峠に突入です!
トラックの大きなハンドルを右へ左へグルグルと回しながら,峠道を登っていきます。
峠道が始まってまもなく,目の前に迫ってきたのは,峠の名物「ループ橋」です。
グルグルと回転しながら一気に高度を上げていきます。
フグ坊たち,目を回さないでがんばって!
その後も急勾配を登り続けること約15分,ついに新天城トンネルが見えてきました。
峠を登り切りきったのです。
思い起こせば,親フグたちと,この天城峠を越えてきたのは,4ヶ月前の2月でした。
あの頃は,寒々しい冬景色の峠道でしたが,6月の今は,新緑のまぶしい峠道へと一変していました。
親フグたちから生まれ育ったフグ坊たちと,再び天城峠を越えられる喜びは,
飼育担当者でなければ味わえません。 うるうる (>_<,) 







峠の名物,ループ橋。 
フグ坊たち,目を回さないでがんばって!


活魚トラックは新緑がまぶしい峠道を登っていきます。







よっしゃー 天城峠の急勾配を登りきりました!
峠の頂上である新天城トンネルに到達です。



【午前9時45分】
走り出して45分。
最大の難所,天城峠を越えたところで,フグ坊たちに異常がないか,ドライブインに入り点検します。
活魚水槽の側面に付いている窓からフグ坊たちの様子や海水の汚れ具合を観察します。
すると・・・ フグ坊たちは元気そのもの,落ち着いて泳いでいます。
海水の濁りも今のところ全くありません。
大輸送のすべり出しは順調です。







ドライブインでフグ坊たちに異常がないか点検します。
越えてきたばかりの天城の山々が遠くに望めます。







活魚水槽の側面に付いている窓から
フグ坊の様子を観察します。
フグ坊たちは目を回していないかな?



【午前11時】
南伊豆から沼津までの一般道を順調に走り,いよいよ東名高速道路に入ります。
走ったり止まったりの一般道と比べれば,一定の速度で走れる高速道路は,
フグ坊たちにとっても快適です。

沼津インターチェンジから東名高速道路に入ります。


【午後0時】
東名高速道路を名古屋方面に走ること約1時間。
パーキングエリアで昼食をとることにします。
トラックを駐車場に停めると,活魚水槽の窓からフグ坊たちの様子を再び観察します。
異常がないことを確認すると,さぁ腹ごしらえです。
勝負の前,私のお決まりメニューはカツ丼です。
カツ丼食って,勝つぞ,気合だぁー!!
って,まだしばらくはトラックの助手席に乗っているだけなんですけどね〜

お昼になり,カツ丼で腹ごしらえ。おいしそ〜


【午後1時】
南伊豆を出発して4時間,高速道路の両側には浜名湖が見えてきました。
ここで,静岡県水産技術研究所浜名湖分場のトラフグ担当者と合流して,一緒に伊勢湾へ向かいます。
ここまでの走行距離は,およそ250キロメートル,伊勢湾までの大輸送も,ようやく折り返し地点です。

間もなく浜名湖サービスエリアに到着です。


【午後2時】
5台のトラックは静岡県を越えて,すでに愛知県を快走中。
豊田JCTから伊勢湾岸道に入りおよそ15分,フグ坊たちが旅立つ伊勢湾の,
最も奥に位置する名古屋港が見えてきました。
道路は名古屋港を見下ろす高架橋が続きます。
眼下に広がる名古屋港の海面は湖のように静かです。
この様子だと,フグ坊たちは,おだやかな海へ旅び立てそうです。

名古屋港を眼下に三つの大橋(名港トリトン)を渡ります。







名古屋港の海面は,おだやかに見えます。
トラックならではの眺望に,よろこんでばかりの私です。



【午後4時】
高速道路を降りて,再び一般道へ。
さぁ,3センチグループの大輸送も残りわずか!
間もなく目的地である三重県伊勢市の有滝漁港へ到着です。



後編へつづく
 2009年6月2日  フグ坊たちの大輸送,そして旅立ち(前編) 2009.7.28掲載

フグ坊たちが卵からふ化して今日で52日目。
さぁ,いよいよ3センチグループが大海原へ旅立つ日がやってきました。
今日は約8万尾のフグ坊を活魚トラック5台で伊勢湾まで運び,海に帰します。







本日,伊勢湾デビューする
3センチグループのフグ坊です。



【午前6時】
ド・ド・ド・ド・・・ 低いエンジン音を響かせて5台の活魚トラックが動き出しました。
フグ坊たちがいる飼育棟を囲むようにトラックが並んでいきます。
それぞれのトラックが定位置に着いたところで,早速,トラックの活魚水槽へ海水を積み込んでいきます。
「おはようございま〜す。 お世話になりますので,よろしくお願いしま〜す」 
フグ坊たちを運んでくれるトラックの運転手たちとあいさつを交わします。
その後,本日の大輸送を取り仕切る親方運転手に,
運んでもらうフグ坊の尾数,正確なサイズや重さ,飼育水温,餌止めの実施状況,
健康状態などを細かく説明し,輸送方法を決めていきます。

今回は,最もサイズの小さい3センチグループの輸送です。
フグ坊たちは,ちょっとした環境の変化で,噛み合いをはじめて,弱ってしまいます。
まだ,幼さが残る3センチグループの輸送に際しては最高レベルの警戒が必要となります。
また,成魚と違い稚魚の活魚輸送は特別な技術が必要です。
さらに,稚魚の中でも噛み合いの激しいトラフグは,輸送中のトラブルも多く,
活魚輸送を専門とする運転手の中でも,プロ中のプロしか扱うことはできません。
積み込みがはじまる6時半まで,活魚トラックの水槽に異常がないか,
海水ろ過装置,水温の調整装置,送気装置など,さまざまな装置に異常がないか,
トラック運転手による入念な点検が続きます。

活魚トラックの各装備を念入りに点検します。


【午前6時30分】
いよいよ飼育水槽から活魚トラックへのフグ坊たちの移動がはじまりました。
飼育水槽の中では,まき網(大きな帯状のネット)でフグ坊たちを囲い集める者,
集めたフグ坊を一定量ずつバケツですくい取り,カゴの中へ流し入れる者,
カゴの中のフグ坊をフィッシュポンプへつながるホースの中へ押し込む者と
役割分担をして,フグ坊たちを飼育水槽から次々に送り出していきます。
約8万尾のフグ坊を飼育水槽から送り出すには2時間ほどかかります。
一方,活魚トラックの方は,それぞれの活魚水槽の中のフグ坊が均等の数となるように,
順番に積み込んでいきます。
フグ坊を積み込んだ後は,活魚水槽の海水に濁りがなくなるまで,
充分に海水の入れ替えを行います。
7〜8時間の長旅に備えて,活魚水槽の中の環境を,
最善の状態に整えておかなければなりません。


飼育水槽の中では,フグ坊たちをトラックへ送り出す作業が続きます。







トラックの活魚水槽の中は,
みるみるうちにフグ坊たちで埋め尽くされていきます。



【午前9時】
活魚トラックへのフグ坊の積み込みを完了し,
予定通り午前9時に南伊豆栽培漁業センターを出発です!
いよいよ伊勢湾へ向けての大輸送がはじまりました。
南伊豆栽培漁業センターに別れを告げて,一路伊勢湾(三重県側)を目指します。
まだまだ先は長いな〜。
運転手のみなさん,安全運転でがんばってください。







生まれ育った南伊豆栽培漁業センターに別れを告げて,
いよいよ郷の海である伊勢湾へ向かいます。


中編へつづく
 2009年6月1日  旅立ち前日(3センチグループ) 2009.7.15掲載

フグ坊たちが卵からふ化して今日で51日目。全長は3.4センチメートルです。
さぁ,ついにフグ坊たちを活魚トラックに乗せて伊勢湾まで運び,海へ帰す日が明日に迫りました。
栽培漁業センターから伊勢湾までは,およそ500キロメートル,7〜8時間の長旅になります。
旅立ちの当日,フグ坊たちは,バケツやタモ網ですくわれたり,
活魚トラックの狭い水槽に押し込まれたりと,さまざまな危険を乗り越えなければなりません。
私たちが当日の作業で,もたついてしまうと,たくさんのフグ坊たちを殺してしまうことにもなりかねません。
大きく育ったフグ坊たちを,元気よく大海原へ旅立たせるためには,
今日中に万全の準備を整えておく必要があります。






空っぽになった自動給餌器。
私たちがフグ坊に配合飼料を与えるのは,
今日でおしまいです。



フグ坊たちに餌を与えるのは,今日の朝でおしまいです。
活魚トラックの水槽は,フグ坊たちが暮らしてきた飼育水槽と比べれば,
とても狭い上に,新しい海水が次々と流れ込んでくるわけではありません。
なので,活魚トラックの水槽の中で,たくさんのフグ坊が糞をしてしまうと,
水槽の中の海水がアッという間に汚れてしまいます。
フグ坊たちは,汚れた海水の中では,すぐに弱ってしまいます。
そこで,輸送の前日からは,必ず「餌止め」をして,フグ坊たちのお腹の中を空っぽにしておきます。
食べ盛りのフグ坊たちには,ちょっとガマンしてもらわなければなりませんが,
こうしておけば,活魚トラックの中の海水をキレイな状態に保ったまま,
フグ坊たちを遠くまで運ぶことができます。






飼育水槽の大掃除。 
サイフォンを利用して,
水槽底にたまった汚れを吸い出します。



最後の給餌が終わると,今度は飼育水槽の大掃除です。
フグ坊たちを飼育水槽から活魚トラックへ移すためには,私たちが飼育水槽の中に入って,
フグ坊たちを追い回し,バケツやタモ網ですくい取らなければなりません。
飼育水槽の中が汚れたままの状態で,私たちが水槽の中を歩き回ってしまうと,
巻き上げた汚れにより,フグ坊たちを弱らせてしまいます。
そこで,私たちが飼育水槽の中に入る前には,飼育水槽の底にたまった餌の食べ残しや,
フグ坊たちの糞を,あらかじめキレイに吸い出しておかなければなりません。






フグ坊たちを海水と一緒に
活魚トラックへ送り込むための準備。
フィッシュポンプと呼ばれる特殊なポンプを利用します。



さらに,フグ坊たちを飼育水槽から活魚トラックまで,
海水と一緒に送るための特殊なポンプの準備,
たくさんの活魚トラックに素早く海水を積み込むための支度,
伊勢湾へ到着した後に,活魚トラックからフグ坊たちを降ろすための道具も
用意しておかなければなりません。
今回旅立つフグ坊たちの最後の身体計測も,今日中に済ませておかなければなりません。
すべてのフグ坊たちを事故なく元気に旅立たせるため,
手落ちのないように万全の準備を進めることにします。






夕方には,
フグ坊たちを伊勢湾まで運んでくれる活魚トラックが,
次々と栽培漁業センターへ入ってきました。
 2009年5月29日  重大任務を命ずる! 2009.7.14掲載

フグ坊たちが卵からふ化して今日で48日目。
全長はついに3.0センチメートルに達しました。
そして4日後には,いよいよフグ坊たちが大海原へ旅立ちます。

南伊豆栽培漁業センターで育てられたフグ坊たちは,
毎年,重要な任務を背負って旅立っていきますが,
ここで今年,フグ坊たちに与えられる重要な任務を説明しましょう。



いい仕事,してきまっせ!
( ←水研イメージキャラクター ふっくん)


今回フグ坊たちに与えられる任務は,
「フグ坊たちをどのくらいのサイズにまで育ててから海へ帰すのが,最も儲かるのか?」
を明らかにすることです。
ここでのサイズは,「フグ坊たちの生き残る見込みが最も大きいサイズ」とは少し違って,
「フグ坊たちによりもたらされる漁業生産額が,フグ坊たちを育てあげる経費を差し引いて,
最も大きくなるサイズ」を指します。

おそらく,大きく育てれば育てるほど,海へ放たれた後も,
フグ坊たちが生き残る見込みは大きくなるでしょう。
しかし,フグ坊たちを育てるには,いろいろとお金がかかります。
大きく育てようとすればするほど,餌はたくさん必要です。
手間(人件費)も余計にかかるし,大きな水槽(施設)も必要となってきます。
だからといって,小さくて弱々しいうちに海へ帰してしまえば,大きく育たないうちに,
他の魚に食べられてしまったり,新しい生活の場に馴染めずに弱り果ててしまったりと,
私たちの役に立たないまま,海の食物連鎖の中で消え去ってしまうことになります。
なので,フグ坊たちをどのくらいのサイズにまで育てあげてから,海へ帰したら良いのか,
を調べることは,効率的な栽培漁業を進める上でとても重要なのです。

そして,「どのくらいのサイズにまで育ててから,海へ帰すのが,最も儲かるのか?」は,
フグ坊たちが暮らしていくことになる海の条件
(例えば,餌となる生物の種類や量,外敵となる魚食性の魚類や鳥類の数)などの
生物学的な面ばかりでなく,その地域でのトラフグの価値や利用形態,
さらには,その地域でのトラフグに関わる漁業,食産業,観光業などの実情といった
社会経済的な側面も含めて考えなければなりません。
これらの条件は地域により少しずつ異なりますので,
それぞれの地域に合った適正なサイズを明らかにしていかなければならないのです。






食べごろサイズに育ったトラフグ
生まれてから約1年半で全長40センチメートル,
体重1キログラムになります



具体的な調査の方法は,全長3センチメートル,4センチメートル
および,7センチメートルの3段階のサイズにまで育てあげたフグ坊に,
それぞれのグループが区別できるように,別々の標識(目印)を付けて,
同じ場所から海へ旅立たせます(4日後に旅立つのは全長3センチメートルのグループになります)。
そして,これから数年間にわたり,伊勢湾,熊野灘や遠州灘で漁獲されるトラフグについて,
標識の種類を調べて,それぞれのグループの生き残りや成長具合を比較し,
適正なサイズを明らかにしていくことになります。
なお,漁獲されたトラフグを魚市場などで調べる仕事は,
三重県,愛知県,静岡県の水産試験研究機関が主体となって進められることになります。







静岡県水産技術研究所浜名湖分場による
トラフグ漁獲物の調査 
(平成20年10月 舞阪漁港にて)
 2009年5月26日  診断結果,はっぴょ〜う! 2009.7.9掲載

フグ坊たちが卵からふ化して今日で45日目。
全長は2.7センチメートルになりました。
飼育水槽の前で,おも〜い気分に包まれたまま,元気に泳ぐフグ坊たちを,ボーッとながめます。
検査所へ送付したフグ坊たちの診断結果は,5日を経過した今日も,まだ届いていません。
まさか,悪い診断結果が出たのでは・・・ 

夕方の4時。
フグ坊たちのお世話が中休みとなる時間です。
事務所のデスクに戻り,「ふぅー」とため息をひとつ。
いつものように,パソコンでE-mailを確認します。
すると・・・
アッ,
診断結果を知らせるE-mailが,ついに届いてしまいました。
見るべきか,見ざるべきか,しばし考え込みますが・・・

勇気を出して,診断結果を知らせるE-mailを開いてみると,
「お送り頂きましたトラフグ種苗の診断結果をご報告いたします。
各水槽のそれぞれ60尾につき,RT-PCRおよびnested PCR(TPNNV型)による検査を行ったところ
全て陰性(病原体は見つからなかった)でした。」 

検査所から良い診断結果が届きました



ヨッシャー!  \(^ ^)/
さきほどまでの重い気分はウソのように何処かへ吹き飛んでしまいました。
よかった,よかった。
なんだか,体も軽くなったような!! (単純な人間です)。

これで晴れて,フグ坊たちを大海原へ旅立たせることができます。
さぁ,明日からはフグ坊たちを海へ帰すための準備を,急ピッチで進めることにします。
 2009年5月24日  アルテミア,卒業します! 2009.7.8掲載

フグ坊たちが卵からふ化して今日で43日目。
全長は2.6センチメートルです。
3日前に検査所へ送付したフグ坊たちの診断結果は,まだ届きません。
ゆううつな気分は,未だに晴れないまま。
もしや,悪い診断結果が出たのでは・・・
いや,あんなに元気に泳いでいたフグ坊たちです。
そんな事は絶対に無いはず。
絶対に・・・(冷汗)。
いまさらジタバタしても仕方がありません。
余計な心配はしないで,大きく育ったフグ坊たちを,元気に海へ旅立たせるため,
今日も飼育作業に専念しましょう!




身体計測や病気の診断のために犠牲となった
フグ坊たちの死は,絶対に無駄にはしないぞ!

フグ坊たちのふるさとである
伊勢湾の漁業中心地(豊浜)にある「ふく供養の碑」




フグ坊たちに毎日与え続けてきたアルテミアは,いよいよ今日で給餌を終了します。
作業棟内には空っぽになったアルテミア培養水槽が並びます。
明日からフグ坊たちに与える餌は,配合飼料のみとなります。
これで餌を与えるための私たちの作業は,ずいぶんと楽になります。







今日でアルテミアの給餌はおしまいです。
空っぽになったアルテミア培養水槽が並びます。
 2009年5月21日  いよいよ大詰め! 勝負の診断 2009.7.7掲載

フグ坊たちが卵からふ化して今日で40日目。
全長は2.5センチメートルになりました。

ここで,フグ坊たちは大海原へ旅立つ前の重要な検査を受けなければなりません。
それは,フグ坊たちの体の中に,病気を引き起こすウイルスなどが
潜伏していないかを確認するための診断です。
もしも,体内に病原体が潜伏したまま,フグ坊たちを海へ帰してしまったら,
大海原を元気に泳いでいる野生のトラフグにまで,病気をうつしてしまうことになります。
そうなっては大変です!
そこで,フグ坊たちを海へ帰す直前には,
フグ坊たちの体内に悪い病原体が潜んでいないか診断します。

今日は,数百尾のフグ坊を水槽から取り上げて検査所へ送る日です。
検査の結果は数日で判明します。
もしも,フグ坊の体内に悪い病原体が潜んでいることがわかったら,
すべてのフグ坊を殺処分しなければなりません。
診断結果が判明するまで,ゆううつな気分が続きます。






検査を受けるフグ坊を,
1尾ずつ小さなビニール袋に詰めていきます。
検査所へは,冷凍した状態でフグ坊たちを送ります。







検査所では,眼や脳などの神経細胞が
集中的に調べられます。

どうか,良い診断結果が届きますように!!
 2009年5月19日  そろそろ恋しい郷の海 2009.7.6掲載

フグ坊たちが卵からふ化して今日で38日目。
全長は2センチメートルを超えるまで育ちました。
水槽の中は大きくなったフグ坊たちでいっぱいです。
きゅうくつそうな飼育水槽から,はやく広々とした海へ帰してあげたいなぁ〜。

このまま順調に成長すれば,6月上旬には全長が3センチメートルとなり,大海原へ旅立てそうです。

飼育水槽の中をきゅうくつそうに泳ぐフグ坊たち








フグ坊たちのふるさとである伊勢湾は今日も穏やかです。
(三重県水産研究所によるトラフグ天然稚魚調査
鼓ヶ浦海岸にて)
2009年6月掲載の日記へ