独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばい日記
トラフグ編 2009年6月掲載の日記



2009年6月
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 2009年5月15日  日々のお仕事 その2 身体計測 2009.6.30掲載

フグ坊たちが卵からふ化して今日で34日目。
飼育期間中は,フグ坊たちの身体計測を頻繁に実施します。

水槽の中の環境や,与えている餌が,お気に召さなければ,すぐに成長がストップしてしまいます。
計測結果を過去の成長記録と照らし合わせ,
例年通りに成長していることを日々確認しつつ,飼育管理を進めていきます。
ワムシ,アルテミア,配合飼料などの餌を切り替えるタイミングを判断するためにも,
絶対に必要な情報です。

さぁ,今日も身体計測を始めます。
まずは,飼育水槽の中のフグ坊をタモ網ですくい取ります。
かわいそうですが,毎回,いくらかのフグ坊にはサイズを計測するための犠牲になってもらいます。
すくい取った数十尾のフグ坊たちを麻酔で眠らせた後,バットの上に並べて,全長を測定します。

測定にはデジタルノギスを使います。
サイズを測定しながら,フグ坊それぞれの体の色艶を観察したり,
尾鰭や,お腹に噛み合いによる傷跡がないかを調べます。

フグ坊が健康だと,体色は黄金色に輝いて見えます。
一方,調子が悪いフグ坊は,体色が黒ずんで見えます。
噛み合いが頻発すると,尾鰭がボロボロになってきます。
順調に成長していることを確認するだけでなく,

体に現れるいつもとは違うサインを見逃さないためにも,
身体計測を頻繁に実施する必要があります。




麻酔をかけたフグ坊たちを並べて,
全長(吻端から尾端までの長さ)を計測します。
計測にはノギスを使います。
体色は黄金色に輝いて見えます。
健康状態は良好なようです。







30尾の全長を測定し終わると,
ノギスと接続されているプリンターから,
平均値などの集計値が出てきます。
本日の平均全長は18.7403ミリメートル。
順調に成長しています。
過去の日記

 2009年5月10日  けんかをやめて〜♪ 二人を止めて〜♪ 2009.6.29掲載

フグ坊たちが卵からふ化して今日で29日目。
全長は1.5センチメートルになりました。配合飼料をモリモリと食べて,グングンと大きくなっていきます。
しかし,これからは,フグ坊たちがお互いに激しく噛み合いをする厄介な時期をむかえます。
もともとトラフグは,群れをつくって泳ぎまわる魚ではないので,
まわりにいるたくさんの仲間が,どうも目ざわりのようです。だからと言って噛み付かなくても・・・

フグ坊の口の中をのぞいて見ると,牙のように鋭い歯が,キラッと不気味に光っていました。
仲間に噛み付くなんて大人げないぞ,フグ坊たち!
お互いにちゃんと話せば分かり合えると思うんだけど・・・
エッ,話は噛み合わないって??? 





このまま放っておくと,目の前を泳ぐ仲間の尾鰭や,お腹に噛み付いて,
お互いに体が傷だらけになってしまいます。
なので,少しでも噛み合いをさせないような,手だてを講じなければなりません。
その対策を今日から実施します。
対策の第1弾は,飼育棟内の電灯を切り替えて,水中を薄暗くすることで,
目の前を泳ぐ仲間の姿が,少しでも見えないようにすることです。
これが案外,効果的なんです。
昨日までは蛍光灯が煌々と灯り,とても明るかった飼育棟ですが,
今日からは,すべての蛍光灯が消され,天井に向けて灯されたスポットライトだけが輝きます。
飼育棟内は,まるで地下駐車場のように薄暗くなります。
フグ坊たちのイライラは,これでずいぶんと解消されると思いますが,
私たちは足下に十分注意して,飼育作業にあたらなければなりません。







フグ坊たちが噛み合いをしないように,
飼育棟の中を薄暗くしました。
 2009年5月8日  ふ〜ぐ,ふぐ,ふぐ,ふくらんだ〜♪ 2009.6.23掲載

フグ坊たちが卵からふ化して,今日で27日目(全長は1.3センチメートル)。
配合飼料をモリモリと食べて,とても逞しくなってきました。
面(つら)の皮も厚くなり,少しくらいは水中から出たって,へっちゃらです。

フグと言えば,お腹を大きく膨らました姿がトレードマークですが,
全長1センチメートルを超えたフグ坊たちは,
上手にお腹を膨らますことができるようになりました。
もう,立派なフグですね。







ふ〜ぐ,ふぐ,ふぐ,ふくらんだ〜♪ 
まんまる お腹のフグ坊です



フグ坊たちの主食は,まだアルテミアですが,次第に配合飼料を与える量を増やしていきます。
今日は,お昼と夕方の時間帯にも自動給餌器が作動するようにタイマーの設定を変更しました。
 2009年5月5日  自動給餌器 登場! 2009.6.22掲載

フグ坊たちが卵からふ化して,今日で24日目(全長は1.1センチメートル)。
フグ坊たちが空腹となっている早朝に,大量の配合飼料を与えた続けたことが功を奏してきたようです。
少しずつですが配合飼料を食べ始めました。
こうなれば,こっちのもの!
一気に配合飼料を食べることに慣れてもらいましょう。
ここで登場するのが,タイマー仕掛けで配合飼料をまいてくれる自動給餌器です。
本日,飼育水槽の中央に向けて配合飼料を「プッー」と吹きだすように,自動給餌器を設置し,
夜明けから私が出勤するまでの時間帯に作動するようにタイマーをセットしました。
配合飼料を食べ始めると,フグ坊たちは,一気に大きく,そして逞しくなります。
さぁ,フグの飼育もいよいよ折り返し地点に到達です。







飼育水槽の中央に向けて設置した自動給餌器。
タイマー仕掛けで配合飼料を「プッー」と吹きだします。









水面付近に群がるフグ坊たち。
ゆっくりと沈んでいく配合飼料を食べ始めました。









今日はこどもの日。
ゴールデン・ウィークをむかえ,
栽培漁業センター前の岸壁は,磯遊びを楽しむ家族連れで大にぎわい。
元気に遊ぶ子供たちの声が,
フグ坊たちのいる飼育棟にまで聞こえてきます。
 2009年5月3日  配合飼料の出番です! 2009.6.16掲載

フグ坊が卵からふ化して,今日で22日目。
全長はついに1センチメートルに達しました。
昨日まではワムシやアルテミアなどの「生き餌」しか与えていませんでしたが,
いよいよ今日からは配合飼料(キンギョの餌のような粉末状の人工飼料)を与えます。

配合飼料には,フグ坊たちが健全に育つために必要なタンパク質,
炭水化物や脂質がバランス良く含まれています。
そればかりでなく,様々なビタミンやミネラルなどが配合されており,
私たちとしては,早く配合飼料をモリモリと食べて欲しいところ。

しかし,フグ坊たちは,やっぱりチョロチョロと動く「生き餌」がお好きなようです。
なので,配合飼料をパラパラと撒いて与えたからといって,
すぐにモリモリと食べてくれるわけではありません。
悪いことに,食べてくれなかった配合飼料は,すべてゴミと化し,飼育水を腐らせてしまいます。
与え過ぎると水質を悪化させるし,わずかしか与えなければ,いつまでたっても食べてくれないし・・・ 
毎年のことですが,動かない餌をどのようにしたら食べてくれるのか,思い悩む日々がはじまりました。






フグ坊たちに与える配合飼料。
フグ坊の口の大きさに合わせて,
次第に大きい粒のものに替えていきます。










配合飼料に覆いつくされた飼育水槽の水面。
飼育水の中にアルテミアがいなくなった早朝の時間帯を狙って,
配合飼料の集中砲火を浴びせます。
お願い!早く食べてちょうだい。
 2009年4月30日  育ってます! 2009.6.9掲載

フグ坊が卵からふ化して,今日で19日目。
全長は8ミリメートルとなりました。
背ビレと尻ビレが,はっきりと分かれて,泳ぐ力がとても強くなりました。
飼育水槽の中では,すばやい動きでアルテミアを食べる様子を見ることができます。
日々増していく食欲を満たすために,アルテミアの培養は,フル生産で対応します。
しばらくは,明けても暮れてもアルテミアの培養と給餌の作業に追われます。

しっかりとした背ビレと尻ビレができてきました。








ふ化したアルテミアを培養水槽から抜き取ります。
食べ盛りのフグ坊たちがお腹を空かせて待ってます。



飼育水槽の中をゆったりと泳ぐフグ坊たち
(動画。別ウインドウで開きます。約10秒。949KB)








南伊豆は,ひじき採りの季節となりました。
栽培センター前の港は,一面のひじきで真っ黒に
 2009年4月26日  離乳食は卒業です! 2009.6.5掲載

フグ坊が卵からふ化してから15日目(全長は5.2ミリメートル)。
離乳食とも言えるワムシの給餌は,いよいよ今日が最後となりました。
4月15日から今日までの12日間,計画通りにワムシを与え続けることができました。
拍手〜! パチパチパチ (^o^)//

でも,この間,内心はハラハラドキドキだったんです。
ワムシが育ち増えるスピードはとても速いのでが,減るときのスピードも,また速いんです。
昨日まであんなにたくさんいたワムシが,次の日には,ほとんど死んでしまった! という急減現象が
まれに発生し,稚魚の飼育が大打撃を受けることがあります。
フグ坊たちが大きく成長してくれば,大きな食べ物,硬い食べ物,
消化の悪い食べ物を与えてもだいじょぶ,だいじょぶ〜!ですが,
生まれたばかりの赤ちゃんフグに安心して与えることができるのは,
ワムシのような,小さくて柔らかい食べ物だけです。
そのワムシがいなくなってしまう,ということは,赤ちゃんフグの生死に関わる一大事なんです!!
ですから,稚魚の飼育がうまくいくかどうかは,
ワムシを計画的に育て増やすことができるかに懸かっている,といっても過言ではありません。

それほど大事なこの時期を,どうにか乗り越えることができました。
これでフグの飼育も第1段階をクリアーです。
最後となったワムシを給餌する準備を進めながら,
今日までのワムシのお世話と赤ちゃんフグの成長をふり返ります。

「いゃ〜,今シーズンのワムシ培養も無事に終わりましたね〜」
「よかった,よかった」

とりあえず安堵感に浸りたいと・・・
いやいや,フグの飼育は序盤戦が終わったばかり。
まだまだ,気を引き締めて,がんばらないと!!







ワムシを育て,増やすための専用水槽から,
最後となったワムシを抜き取ります。









今シーズンのワムシ給餌もこれが最後です。
このまま何事も無く,飼育ができますように!
 2009年4月24日  もう赤ちゃんフグとは呼ばないで! 2009.6.1掲載

赤ちゃんフグが卵からふ化してから13日目。
全長は5ミリメートルになりました。
もう,赤ちゃんフグと呼んではかわいそう。
これからしばらくは,“フグ坊”と呼ぶことにしましょう。

今まで餌として与えていたワムシですが,大きくなったフグ坊には,ちょっと物足りなくなってきました。
そこで,いよいよ今日からはワムシに替わる,もう少し大きな餌を与えはじめることにします。
その餌の名はアルテミア!
アルテミアの名前には,あまり馴染みがないかもしれませんが,ブラインシュリンプ
またはシーモンキーの名前で,観賞魚の稚魚の餌として販売されていたり,
生きた学習教材として利用されていたりと,実はけっこう身近な存在です。
それもそのはず。
なんと,アルテミアの卵(耐久卵)は,缶詰や袋詰めの状態で長期保存が可能な上に,
その卵を水に浸けておくと,およそ1日で卵から幼生がふ化してくるのです!
なんとも便利な生き物です。







フグ坊に餌として与えるアルテミアの幼生
きれいなオレンジ色をしています。



フグ坊に与えるのは,卵からふ化したばかりのアルテミアの幼生です。
その大きさは,600〜800マイクロメートルで,ワムシの約3倍です。
これからフグ坊たちは,食べ盛り&育ち盛りの時期をむかえます。
飼育作業は,ワムシのお世話にかわって,アルテミアの培養と給餌の作業が中心となってきます。
フグ坊たち,アルテミアをいっぱい食べてグングン大きくなってちょうだいね。





アルテミアを培養する水槽群。
1つの水槽で1〜2億尾のアルテミア幼生を培養します。
水の色がオレンジ色に見えるのは,
アルテミアの幼生が高密度で入っているため。








給餌に向けた作業は,
ワムシと同じように,
ネットでアルテミアだけを濃縮することからはじまります。









濃縮したアルテミアを飼育水槽へ流し入れます。
さぁ,ごはんですよ〜!
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