独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばい日記
トラフグ編 2009年5月掲載の日記



2009年5月
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 2009年4月21日  日々のお仕事 その1 水温の測定 2009.5.29掲載

栽培漁業の対象となる魚介類の赤ちゃんは,とても小さくて弱々しいものばかり。
この赤ちゃんたちを,タモ網ですくったり,活魚トラックに乗せて遠くまで運んだりと,
少々手荒に扱うことができる大きさにまで育てることが,種苗生産の目標となります。
トラフグの場合は,全長3センチメートルにまで育てることが目安となりますが,
トラフグの成長は比較的速く,卵からふ化して50日ほどで3センチメートルに達します。
しかし,種苗生産が短期間で終わるかわりに,ひとたびミスを犯せば,
途端にフグの成長や生残が悪くなり,その遅れを取り戻すことが難しくなります。
ですから,赤ちゃんフグの様子を観察することなど,日々の確認作業を怠ることは決してできません。








専用の測定機器で
飼育水槽の水温や塩分濃度を測定します。


その最も基本的な観察項目は,飼育水槽の水温を測定することでしょう。
海の生き物たちにとって,水温1℃の変化は,
私たちにとっての気温10℃の変化に相当する,という話を聞いたことがあります。
ですから,水温の異常な変化は,まだ小さくてか弱い魚介類の赤ちゃんにとっては一大事です!
そのようなトラフグ,もとい!そのようなトラブルが決して起こらないように注意しながら,
日々の飼育作業にあたらなければなりません。
飼育水槽の水温は,水中に入れている温度センサーと連動した機械が
正確に調節してくれるのですが,機械に故障は付き物!
100%壊れない機械などありません。
そこで,毎日1回は水槽の水温を実際に測定したり,水温を調節する機械に異常が無いことを,
たびたび確認したりしながら,トラブルが発生した場合でも,手遅れとならないように心がけています。
えっ,だれですか?
あんたよりも機械の方がよっぽど確実でしょう,なんて言う人は・・・
○○君,それを言っちゃ〜おしまいョ!





飼育水槽の水温を希望の温度に調節するための制御装置。
各飼育水槽の中に入れている
温度センサーの値が表示されるので,
制御装置の前を歩く時には,必ず覗いていきます。
過去の日記

 2009年4月19日  フグらしくなってきました! 2009.5.27掲載

赤ちゃんフグが卵からふ化してから8日目。
全長は4ミリメートルになりました。
お腹の卵黄は,すっかりなくなり,すでに顔つきはフグらしくなってきました。
栄養タップリのワムシをたくさん食べて,どんどん大きくなっていきます。
ワムシを与える期間は2週間足らず。
フグの成長に合わせて,与える餌も次々に換えていかなければなりません。
今日からは,ワムシの次に与える餌を培養するための準備をはじめることにします。






ふ化後8日目の赤ちゃんフグ。
全長は4ミリメートルになりました。
なんだか,ちょっとたくましくなったような・・・









ワムシの次に与える餌(アルテミア)を培養する準備を
急ピッチで進めます。
 2009年4月17日  元気なワムシを育てます! 2009.5.26掲載

赤ちゃんフグは,モリモリとワムシを食べはじめました。
餌として与えるワムシを育て,増やす作業もフル回転です!
ワムシを育てるための毎日の作業は,ワムシ水槽の水温やpHなどの水質の測定,
水槽の中にいるワムシの数や,
ワムシがお尻に付けて持ち運んでいる卵の数を計数することからはじまります。
そして,計数した結果を前日の値と比較して,今日のワムシの調子を判断し,
水温や塩分濃度,餌として与えるクロレラの量を調整していきます。
ワムシに餌を与えれば,当然,水の中にはワムシの糞なども出てきますので,
これを取り除く作業も必要です。
これが結構な重労働!!

赤ちゃんフグに与える半日ほど前からは,ワムシに特別な餌を与えて栄養タップリに育てます。
さあ,元気なワムシをたくさん食べて,はやく大きくなってね。







ワムシは今日も元気かな?
顕微鏡でワムシの状態を観察します。









ワムシを育て,増やすための専用水槽。
緑色に見えるのはワムシの餌となるクロレラの色。









今日のごはん(ワムシ)を水ごと抜き取ります。
ネットでワムシだけを濃縮しながら,ゴミを洗い流します。








ネットで受けたワムシを,一旦大きなタルに移した後,
それぞれの飼育水槽へ与える分量を取り分けて,
さぁ,ごはんですよ!
 2009年4月15日  ごはんですよ! 2009.5.19掲載

いよいよ今日から赤ちゃんフグに餌を与えます。
与える餌はワムシ(正式にはシオミズツボワムシ)と呼ばれるプランクトンです。
ワムシの大きさは200〜300マイクロメートル。
赤ちゃんフグが食べるのには,ちょうど良い大きさです。
ワムシの体(被甲)はチューリップの花のような形をしています。
1本の立派な足もあります。
そして,お尻の下には,楕円形の卵をぶら下げていることがしばしばです。
世の中には変わった生き物がいるものですね。

ワムシの動画
(約10秒。別ウインドウで開きます。837KB)








むむ! おいしそうなワムシちゃん。
狙いをさだめて,パクッ。



本当は,キンギョの餌(粉末状の配合飼料)のような,
私たちが扱いやすいものを最初から食べてくれると,手間がかからず楽なのですが,
生まれたばかりの赤ちゃんフグが興味を示すのは,ワムシのようにチョロチョロと動くものばかり。
キンギョの餌のような動かないものを食べてくれるようになるには,まだしばらく時間がかかります。
それまでは,餌となる活きたプランクトンのお世話も並行して進めます。








ごはんですよ〜!
飼育水槽へワムシを海水と一緒に流し入れます。
 2009年4月14日  くちをパクパク 動かし出した! 2009.5.18掲載

赤ちゃんフグが卵からふ化してから3日目。
飼育水槽の中の赤ちゃんフグに異常がないか,顕微鏡で様子を観察します。
すると,昨日までは動いていなかった口を,今日はパクパクと動かしています。
そして,お腹の卵黄もだいぶ小さくなりました。
いよいよ,食べものを見つけてパクッ,と食いつく能力が備わり,
そして,食べたものを消化吸収し,不要なものを排泄するための,
もっとも基本的なからだのしくみができ上がってきたようです。

もう,餌を与えはじめてもよさそうです。
明日からは,赤ちゃんフグに餌を与えることにします。






ふ化後3日目の赤ちゃんフグ。
全長は3.3ミリメートル。
口をパクパクと動かし出しました!
 2009年4月11日  赤ちゃんフグのお引っ越し 2009.5.15掲載

今日はたくさんふ化しているかな?
早朝に栽培漁業センターへ出勤すると,いつものように卵を管理する専用水槽へ直行です。
どれどれ,水槽の中をのぞき込むと・・・
うぁ〜! いるわ,いるわ!
赤ちゃんフグで水槽の中はごったがえしてます。
たくさんの赤ちゃんフグが卵からふ化していました。
こうなると,赤ちゃんフグをいつまでも狭い水槽に押し込めておくわけにはいきません。
今日は朝一番で赤ちゃんフグの引っ越しを決行します。







朝をむかえた南伊豆栽培漁業センター。
今日も1日がんばるぞ〜!



朝の全体ミーティングが終わると,成生さん,2名のパートさん,そして私の合計4名が,
卵を管理する専用水槽の前に集合し,赤ちゃんフグの引っ越し作業を開始します。

しかし,ここで問題が・・・
親フグたちが産んでくれた大量の卵を人工的に授精させた時刻は,ほぼ同時刻ですが,
すべての卵がそろって同時にふ化してくるわけではありません。
そのため,卵を管理する専用水槽の中には,
まだ,卵の殻を破って外の世界へ泳ぎ出す準備が出来ていない赤ちゃんフグも,たくさんいます。
このような卵に対して,強い刺激を与えてしまうと,
その弾みで,未熟な状態のまま,卵からふ化してしまう場合があります。
未熟な状態でふ化してしまった赤ちゃんフグは,残念ながら健全に育つことはできません。
なので,赤ちゃんフグの引っ越しは,これからふ化してくる卵に強い刺激を与えないように,
細心の注意を払いながら進めなければなりません。

赤ちゃんフグの引っ越しは,卵を管理する専用水槽に送り込んでいる海水と空気を
完全に停止させることからはじまります。
ふ化したばかりの赤ちゃんフグは,明るい方へ向って泳ぐ性質(正の走光性)があるので,
水槽の中に水の動きがなくなると,明るい水面付近に集まってきます。

一方,卵は水槽の底へゆっくりと沈んでいきますので,
水面付近に集まった赤ちゃんフグだけを取り出せば,これからふ化してくる卵には,
刺激を与えずに引っ越しをすることができます。

たくさんのふ化仔魚の動画
(約10秒。別ウインドウで開きます。1MB)


さ〜て,それでは,引っ越し作業にとりかかりましょう。
水面付近に集まってきた赤ちゃんフグを,海水と一緒に静かにバケツですくい取り,
フォークリフトの上に乗せた引っ越し用の水槽の中へ移していきます。
卵を管理するいくつもの専用水槽のそれぞれから,
水面近くのいちばん明るい場所に集まっている元気な赤ちゃんフグたちに狙いをさだめて,
バケツで10杯,20杯,30杯と何度もすくい取っていきます。
水槽の底に沈んでいる卵に刺激を与えないように,そ〜っと,そ〜っと,すくい取っていきます。

そして,引っ越し用の水槽が海水で満杯になると,
次は引っ越し用水槽の中の赤ちゃんフグの数を数えます。
バケツで移した赤ちゃんフグの数は,ざっと数十万尾!
すべてを数えていては,日が暮れても終わりません。
なので,簡便な方法で総数を推定します。

赤ちゃんフグにはちょっとかわいそうですが,引っ越し用水槽の底から,
空気を強めに送り込み,水槽の中の赤ちゃんフグが均一となるように海水をかき混ぜます。
そして,均一となったことを見定めた後に,せ〜の,と4人が息を合わせて,
水面付近の4カ所から,カップで水槽の水をすくい取ります。
カップを平らな場所に置いて,すくった水の量を確認したら,
その中に入っている赤ちゃんフグの数をカウントします。
あとは引っ越し用水槽の水量で,カウントした数を引き伸ばし,赤ちゃんフグの総数を推定します。





引っ越し用水槽に移した赤ちゃんフグの
総数を計算するため,
海水をカップですくい取ります。
みんな息を合わせていきますよ〜!
せ〜の〜,せっ!






黒ゴマではありません!
すくい取ったカップの中の赤ちゃんフグ。
白色のカップに入れると,
赤ちゃんフグがとても見やすくなり,
正確にカウントすることができます。





カチ,カチカチ,カチ,カチ。
片手にカップ,片手にカウンターを持ち,
赤ちゃんフグを海水と一緒に流し出しながら,
数を数えていきます。
4人のカウント数がばらついてしまった時は,
最初からやり直しです。


引っ越し用水槽に移した赤ちゃんフグの総数がわかったら,
次はいよいよ,赤ちゃんフグを育てるための専用水槽(以降は飼育水槽と呼びます)へ移動です。
引っ越し用水槽の海水がこぼれないように,慎重に,ゆっくりとフォークリフトを運転していきます。
飼育水槽のそばまで移動してくると,今度は,引っ越し用水槽の水面の高さが,
飼育水槽に満たしてある海水の水面の高さよりも,少しだけ高くなるように,
フォークリフトのつめ(フォーク)を上昇させます。
この時も,水槽を周りの物にぶつけたりしないように慎重に動かしていきます。

引っ越し用水槽の位置と高さが決まると,
いよいよ,赤ちゃんフグを広々とした飼育水槽へ移していきます。
引っ越し用水槽から飼育水槽への移動には,長いホースを使います。
サイフォンの原理を利用して,
海水と一緒にホースの中を通して,赤ちゃんフグを飼育水槽へ流し入れます。

この時に,引っ越し用水槽と飼育水槽との水面の高さに,
大きな違いができてしまうと,ホースの中を海水が猛烈な勢いで流れてしまい,
赤ちゃんフグが強い流れに巻き込まれて傷ついてしまう恐れがあります。
そこで,頻繁にフォークリフトのつめの高さを調整して,
水面の高さに大きな違いができないようにしながら,赤ちゃんフグを飼育水槽へ移していきます。
引っ越し用水槽の中の海水を,すべて飼育水槽へ流し込むと,赤ちゃんフグの引っ越しは完了です! 






オーライ,オーライ,もうちょっと上!
フォークリフトを利用して,
赤ちゃんフグを海水と一緒に移動させます。










サイフォンの原理を利用して,
赤ちゃんフグを海水と一緒に飼育水槽へ流し込みます。



卵を管理する専用水槽の大きさ(注ぎ込むことができる水の量)は,
0.5キロリットル(お風呂2杯分)でしたが,
引っ越してきた飼育水槽の大きさは,その100倍の50キロリットル(お風呂200杯分)です!
引っ越しを終えた赤ちゃんフグは,広々とした飼育水槽の中で,フワフワと漂っています。
数日後には赤ちゃんフグがお腹に抱えている卵黄も小さくなり,
いよいよ餌を与えるなどの飼育作業がはじまります。

私がゆっくりとしていられるのも,あとわずか。
いよいよ,赤ちゃんフグたちを育てるための奮闘がはじまります。







赤ちゃんフグを一人前のフグに育てるための飼育水槽。
今年はどんなフグが育つかな?
 2009年4月10日  赤ちゃんフグ誕生! 2009.5.12掲載

今日はふ化しているかな?
早朝に栽培漁業センターへ出勤すると,真っ先に卵を管理する専用水槽へ向います。
水槽の中をよ〜く,よ〜く,のぞいて見てみると・・・

アッ,いたっ!
たくさんの卵と一緒に,白っぽい糸くずのような赤ちゃんフグが百尾ほど,水槽の中を漂っていました。
ついにふ化がはじまったようです。

赤ちゃんフグ誕生の動画
(別ウインドウで開きます。約10秒。956KB)


卵の中から出てきたばかりの赤ちゃんフグ。



赤ちゃんフグの大きさは約3ミリメートル。
まだ,フグらしい格好はしていません。
餌を食べ始めるのは,生まれて3日ほど経ってから。
しばらくは,お腹に抱えた卵黄からの栄養で育ちます。







赤ちゃんフグのお腹につまった3日分のお弁当(卵黄)。
宝石のようにキレイに輝いています。



これから2日間ほどで,赤ちゃんフグが一斉に卵からふ化してきます。
卵から出てきた赤ちゃんフグが,強い水流にまかれて傷つかないように,
水槽内に勢い良く送り込んでいた空気の量を減らします。
さあ,いよいよ明日は,大量にふ化してくる赤ちゃんフグのお引っ越しです。
今日は,引っ越しに向けた準備を進めることにします。







赤ちゃんフグを育てるための水槽。
消毒・洗浄をすませて,
引っ越しの準備は,もうすぐ整います。
 2009年4月9日  卵の中で動き出した! 2009.5.11掲載

ヘビー級の親フグ3尾が産んだ卵の管理をはじめてから,今日で5日目です。
人工授精した直後の卵は,中にいくつかの分裂した細胞(割球)が見えるだけでしたが,
5日間でずいぶんと魚のかたちに近づいてきたようです。
はやく外へ泳ぎ出したいのでしょうか,クルクルと卵の中で活発に動きはじめました。
お腹のあたりには黒い色素のまだら模様がはっきりと見えるようになりました。
2つの眼らしきものも,うっすらと透けて見えます。
卵の中から赤ちゃんフグが出てくるのも,もうすぐです。

人工授精から5日が経過したトラフグの卵。


卵の中で動き出した!動画
(別ウインドウで開きます。約10秒。968KB)








この時期,
南伊豆栽培漁業センター前の藻場には,
アオリイカが産卵のためにやって来ます。
当然,それを狙う釣人も。
海の中も産卵シーズン真っ只中です。
 2009年4月5日  卵のお世話 2009.5.8掲載

親フグたちが産んでくれた大量の卵は,赤ちゃんフグがふ化してくるまでの間,
卵の管理に適した専用水槽の中で過ごします。
トラフグの卵は直径が1.0〜1.2ミリメートル。
一番の特徴は,卵がクリーム色をしていて,中の様子がとても見にくいことでしょうか。
卵がちゃんと生きているのか,ちょっと心配になるくらいです。

水温を18℃に保って管理すると,約1週間でふ化がはじまります。
あたりまえですが,卵の間は餌を食べたり,糞をしたりすることはありません。
私たちのすることは,それほど多くはありませんが,
新鮮な海水や,空気(酸素)が全体に行き届いているか,
水温が一定に保たれているか,卵の発生が正常に進んでいるか,などを日々観察します。
管理がずさんだと,途中で死んでしまう卵が増えてしまうので,気は抜けません。

どうか,たくさんの赤ちゃんフグが生まれてきますように!







人工授精をしてから4時間が経過したトラフグの卵。
2,4,8と次第に細胞の数が増えていきます。









人工授精したトラフグ卵を管理するための専用の水槽。
※実際には,周囲を暗幕で覆い,薄暗い中で卵を管理します。
 2009年4月4日  でたぁー! ヘビー級トリオ,奇跡の同着のゴールイン! 2009.5.1掲載

今日は排卵誘発剤を投与してから11日目。
まだ産卵日をむかえていないのは,体重6キログラムを超えるヘビー級の親フグ3尾です。
「さあ,お願いだから,そろそろ卵を産んでちょうだい!」 と親フグたちに言い聞かせながら,
今日も採卵に向けた診察をはじめます。
日に日に体重が増えている親フグたち。
そうでなくても重たい3尾なので,水槽から取りあげるのもひと苦労です。
おりゃー! と気合いを入れて,水槽から引き上げます。

診察のために親フグたちを水槽から引き上げます。


水槽から取りあげた3尾を,いつものように診察していきます。
まずは,ピンクリップスから。
麻酔をかけて静かになったところで,成生さんが,エラ孔に指を入れて,
親フグを水面から少しだけ持ち上げます。
そして,おなかをムニュ,とかるく押してみます。
すると,ついに総排泄腔から黄金色の卵が漏れ出してきました。
ヨッシャ〜! ピンクリップスは今日が産卵日のようです。
よかった,よかった。ようやく卵を産んでくれるようです。
ひとまず,ピンクリップスは残り2尾の診察が終わるまで個別の小さな水槽で待機です。 








産卵日が直前に迫ってきた親フグに対しては,
お腹をかるく圧迫して,卵がもれ出てくるかを確認します。



続いてカミカミクイーンを診察します。
いつもながら,暴れん坊のカミカミちゃんは気も強いようで,なかなか麻酔にかかりません。
もしも,私たちがタモ網のように親フグに噛みつかれてしまったら,大けがをしてしまいます。
ですから,診察前の親フグには,しっかりと麻酔を施す必要があります。
カミカミクイーンが麻酔液の入った水槽の中で,静かに横たわったことを確認した後に,
診察作業にとりかかります。
体重を測定してから,ピンクリップスと同様に,おなかをムニュ,とかるく押してみます。
すると,な,なんと!
カミカミクイーンの総排泄腔からも黄金色の卵がもれ出してきました。
カミカミちゃんも今日が産卵日のようです。

さて,最後に残ったのはランチバイキング。
麻酔を施した後に,さきほどの2尾と同じように,おなかをムニュ,と押してみます。
すると,エッ,まっ,まさか!
ランチバイキング,あなたも・・・

なんと,3尾が同じ日に産卵日を迎えました。
こちらとしては,願ったり叶ったりの3尾同着のゴールインです。
トラフグ稚魚の生産をスタートさせるためには,充分すぎるほどの卵が確保できそうです。
まさか,こんな結末が待っているとは・・・
親フグたち,私たちの願いを聞いてくれて,ありがトゥース!

祝! ランチバイキング,ご出産(っていうか、ご産卵)



3尾の診察が終わると,すぐに親フグたちから卵を搾り出して授精させるための準備に移ります。
卵の授精にはオス親フグの協力も必要なので,
7尾のオス親フグを水槽から取りあげて,精子を採取する準備も進めます。
3尾のメス親フグから搾り出した卵を小分けする容器や,
精子が運動を開始するために必要なキレイな海水も必要です。
現場は一気に慌ただしくなります。
卵を授精させるための準備がすべて整ったところで,
いよいよ,ヘビー級トリオのお腹の中から卵を搾り出します。

まずは,ピンクリップスから。
いつもの要領で,左右両側のエラ孔に指を差し入れて,親フグをぶら下げるように持ち上げます。
そして,タプタプに膨らんだお腹から少しずつ卵を搾り出していきます。
体重が2キロ台だったヤングフーチャンや,サクラちゃんと違い,
6キロ台の親フグともなると,ぶら下げるように持ち上げ続けるのは一苦労です。
それでも,良い卵を得るための苦労はおしみません。
私たちの情熱が通じたのでしょうか,ピンクリップスは,キレイな完熟卵をたくさん産んでくれました。
卵の総重量は1.66キログラム,およそ100万粒の大量の卵です。

続くカミカミクイーンは1.42キログラム,
最後のランチバイキングは1.54キログラム,
3尾の卵を合計すると4.6キログラム,約300万粒もの大量の卵を産んでくれました。

祝! カミカミクイーン,ご出産



前日に産卵したサクラちゃんの卵と合わせて,
4尾のメス親フグから得られた卵を使えば,稚魚の生産をスタートさせることができます。
遠州灘から元気な親フグを入手することが1つ目のハードルだとすれば,
入手した親フグから大量の卵を得ることが2つ目のハードルです。
今日で,どうにか2つ目のハードルを越えることができました。
さぁ,明日からは元気なトラフグ稚魚を育てるための作業が本格的にはじまります。
3つ目のハードルも無事に越えられますように!
とりあえず,今晩はおいしいビールが飲めそうです。
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