独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
放流情報
放流基礎知識・標識のいろいろ・放流してわかること・協力していただきたいこと・放流情報一覧
 ■放流基礎知識
 ■標識のいろいろ
 ■放流してわかること
 ■みなさんに協力していただきたいこと
 ■放流情報一覧
放流基礎知識
 放流ってなんだ?

 栽培漁業では魚などを卵から稚魚に育て上げ、その稚魚を海に放すことを「放流」と言います。
 放流して海の魚が増え、そしてそれらが漁獲されて、ようやく栽培漁業の目的が達成されるのです。

 栽培漁業の工程は放流して終わりではない

 稚魚たちが放流される自然の海は、それまで育ってきた環境とは違い、嵐もあれば敵もいます。
 水槽などで大切に育てられた魚たちが、海で生き残っていけるかどうかは、いつ、どこで、
 どのぐらいの大きさになったときに放流するかにかかっています。
 これらが適切でないと、稚魚たちはエサを見つけられなかったり、
 外敵に襲われたりして死んでしまい、 大切に稚魚を育ててきたわたしたちの苦労も水の泡です。

 そのため、放流魚が海でどのような行動をとるか、
 放流によって漁獲量が増えたかどうか(放流効果という)などを調査しています。
 また、どの大きさで放流したら生き残る率が高いのか、
 放流に適した時期や場所を調べています。
 そして、それらの結果を次の放流に生かしていきます。

 放流後の調査って?

 放流後の調査方法には
 放流魚の目印である「標識」のついた魚を捕まえた漁業者や釣り人から報告してもらった情報(再捕報告)を集める再捕報告調査と、
 市場に出向いてどれくらいの放流魚が水揚げされているか調べる市場調査(いちばちょうさ)の2通りの方法があります。

 再捕報告は放流魚がどの範囲まで泳いでいくか、また、自然の海でどの程度の成長をするか、
 という放流魚の生態に関する情報を得るために、みなさんにご協力をお願いしています。

 市場調査は魚市場で水揚げされた魚のうち、放流魚の割合はどれぐらいか、
 重量はどのぐらいかという漁業における量的な情報を得るために行っています。


再捕報告をお願いするポスター        市場調査の様子           








栽培漁業では、全国で80種類以上の
魚介類を放流しています。

魚類や甲殻類以外では、アサリが561,952万個、ホタテガイが326,668万個放流されているほか、ハマグリやアワビ、サザエなどの貝類や、ウニ類やマナマコも放流されています。
標識のいろいろ
 天然の魚と区別するために、放流する魚には「標識(ひょうしき)」をつけます。
 標識には数種類あり、調査の目的によって使い分けています。

 よく使われる標識

 種 類  特 徴
 タ グ
プラスチック製で番号や記号、連絡先などが印刷してある(写真はダート型と呼ばれるタイプ)タグを、魚体に付ける。
標識が付いていることがすぐ見分けられるため、再捕報告に適している。
魚がどこまで移動するか、どのくらい成長するか調べるのに適している。
途中で抜け落ちることもあるため、市場調査には適さない。
 イラストマー
イラストマーという無害のシリコンをヒレの付け根などに注入する。蛍光色のシリコンは肉眼でも見えるが、より見やすくするために、特殊なライトを当てて、標識の有無を確認する。
(赤い色がイラストマー。赤以外にもイラストマーにはいろいろな色がある)
慣れた人でないと見つけられないため、
一般の人は標識だと気がつかない。
タグのように途中でなくなってしまうことが少ないため、
市場調査に適している。
 ヒレ抜去
魚の行動に影響の少ない腹鰭を抜き取る。
(写真はクロソイの腹鰭部分。左側の魚がヒレ抜去をして1年経過したもの)
 耳石標識
頭部にある耳石という小さな骨を染色する。年を経ると年輪のような紋が残る。
(写真はホシガレイの耳石。中央のオレンジ色部分が標識として染色した部分)
標識を付けるときの魚へのダメージが少ないため、 1〜3が付けられない小さな魚に付けるのに適しているが、解剖しないと標識がついているかいないかがわからない。
途中でなくなることがないため、市場調査用の標識として、 2や3の方法と併用して使う。
放流してわかること
 再捕報告してもらうことによって、放流した魚がどの時期にどこまで移動するか、どのくらい成長しているのかがわかります。
 どこまで移動するかがわかると、どこの市場に市場調査をしに行ったらいいかがわかります。
 市場調査をすることによって、海の中の魚がどれくらい増えたのかがわかります。










瀬戸内海のサワラの漁獲量は年々減る一方でしたが、
1998年に放流を開始してからは、徐々に漁獲量も増えてきました。
みなさんに協力していただきたいこと
 再捕報告にご協力を!

 標識のついた魚を釣ったり、捕まえたりしたときは、ぜひ、栽培漁業センターや最寄りの水産試験場にご連絡いただきますよう、ご協力をお願いします。
 なお、捕獲した魚体は必要ありません。情報のみお教えいただければ幸いです。
 あなたの情報が、新しい発見につながります。

 【知らせていただきたいこと】
 1.標識の色
 2.標識の番号
 3.つかまえた月日
 4.つかまえた場所
 5.つかまえた魚の頭から尾の先までの長さ(全長)や体重
ダート型標識には番号や連絡先が書かれています
 小さな魚は海に戻しましょう!

 放流されて間もない小さな魚は、海での生活に慣れていないため、すぐに釣られたり獲られたりしてしまいます。
 小さな魚を捕まえても、海へ戻してあげてください。

 稚魚がすみやすい「藻場」や「干潟」を守りましょう!

 藻場や干潟は稚魚の外敵となる大きな魚がはいってこられず、稚魚の餌となる生き物が豊富なため、 稚魚たちにとっては絶好のすみかです。
 放流場所としても最適です。
 しかし、近年では埋め立てや環境汚染によって、藻場や干潟が少なくなってしまいました。
 どうか、稚魚たちの大切な育成場である藻場や干潟を守ってください。

           藻場                        干潟


 「藻場を守ろう!」などのイベントに参加しましょう!

 藻場や干潟の大切さを知ってもらうための、さまざまな催しが開催されています。
 楽しい企画も盛りだくさんですので、どうぞ、足をお運び下さい。