独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
さいばいコラム
No.21  いも〜れ! きょら海 奄美へ 〜明日に向かって、あの網の向こうへ〜
2008.03.03
奄美栽培漁業センター 武部 孝行
「パピヨン」 「アルカトラズからの脱出」 「大脱走」 …
いずれも監獄又は捕虜収容所からの脱走を画いた映画ですが
ここ、奄美栽培漁業センターでも、しばしば命を賭けた脱走劇が行われます。
養成しているクロマグロの親魚が、いけすなどの網(写真1)を突き破り、逃亡するのです。
我々は“パンチング”と呼んでおり、日々の潜水観察などで、その痕跡(写真2、3)を見ることができす。










写真1 このような網を突き破るのだ!
(糸の太さは約3mm)
写真2、3 ご覧のように網に大きい穴が!大きな弾丸が貫通したかのような跡です
クロマグロの遊泳速度は瞬間では時速100km以上にも及ぶと言われており
また、体重が数百キログラム(今までの最大が581キログラム!)ともなる個体が
猛然と網向かって突進するわけですから、その衝撃力はいかばかりでしょうか?

当然、網を突き破れなかった場合、ある意味、壁に激突することと同じことになるわけですから
鼻先周辺に傷を負うもの、下アゴが骨折してしまい、顔が醜く変形してしまうもの
最悪、首の骨を折り死んでしまうこともあるわけです。
一方、巧く網を突き破ることに成功したマグロを待つのは、自由な大海原か
もしくは、その代償として身体に傷を負うものもいるでしょうし
最悪、やはり死が待っていることになり、翌日、いけす付近で死んで浮いているか、岸に打ち上げられています(写真4)。

では、なぜマグロはこういった行動をするのでしょうか?
これについては諸説ありますが、今のところは夜間における急激な光の変化によって驚いて起こることが多いようです。
例えば、カミナリや花火大会などの翌日に多く発生するようです。
まれに、いけすが道路近くにある場合など、車のハイビームなどによっても起こるようです。
また、音(カミナリ、花火など)による影響も考えられています。
写真4 志半ばに倒れる・・・
    下アゴ付け根付近に損傷が見られる
    やはり、網への衝突の影響によるものか?
写真5 虎視眈々と脱走のチャンスをねらっているのか???
「塀の中の懲りない面々」は刑務所の出所、入所を繰り返す極道などの話をコミカルに画いたものですが
“網の中の極上たち?”の場合はシリアスなお話・・・。

逃げた極上(極道?)マグロの明日はどっちだ?!
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