独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
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No.161 クロソイの種苗生産技術,世界へ発信!
              〜Aquaculture Europe 2010に参加して〜       2010/12/16
宮古栽培漁業センター 野田 勉
 シンポジウム「Aquaculture Europe 2010 Sea farming tomorrow」が,2010年10月5〜8日の4日間,ポルトガル北部のポルト市で開催されました。
 日本における養殖生産量は,近年では110〜130万トンで推移していますが,ヨーロッパにおける養殖生産量は増加傾向にあり,2008年には250万トンを越えています。このように大規模なマーケット(流通市場)を持つヨーロッパの養殖産業ですが,海域の環境変化,養殖魚種の多様化,経済的な問題など,養殖を取り巻く情勢は日本と同様に変化しています。
 そこで,各国の新しい研究成果や技術の発表を通して国際化する水産物市場に対応するための方法とその可能性を探る,という趣旨で本シンポジウムが開催されました(主催:European Aquaculture Society )。
発表会場となったアルファンデガ会議センター
 シンポジウムの参加国は51カ国,参加人数は1,076人でした。数多くの国や研究者が集まるこの場で,日本の栽培漁業に関する研究成果を発表し,世界へアピールすると同時に,海外の研究者と意見を交わして最新の情報を収集することは,今後の研究開発を進めていく上で重要なことです。
 今回,私は,魚の種苗生産や飼育管理に関するセッション「Finfish hatchery production」で,宮古栽培漁業センターが開発した「クロソイのワムシ収穫槽利用飼育」(詳しくはトピックスNo.160参照)について発表する機会を得ました。
 私が行った発表はポスター発表といい,研究成果を大きなポスターにして,参加者と対話しながら行う形式です。発表では,日本ではクロソイが栽培漁業や養殖の重要な対象種であること,この方法は従来の飼育方法と比べて大幅に作業時間を削減できる上に,魚の成長差を少なくし,生残率を高める効果があることを説明しました。
ポルト市の夜景(上)と学会会場のすぐ隣を流れるドウロ川
 多くの研究者から,この方法がクロソイ以外の魚種にも使えるのか,という質問を受けました。宮古栽培漁業センターでは,収穫槽飼育を既にヒラメやキツネメバルにも応用しており,その他の魚種への応用の可能性や方法について議論しました。

 海外の研究者は,仔稚魚の成長と内臓の発育の関係など,生理学的分野の研究成果を多く発表していました。私が発表した収穫槽飼育では,結果的に生残率の向上などの効果が見られましたが,「なぜ,この飼育方法がよかったか?」を生理学的な側面から研究していくことも重要と考えました。
 また,植物由来の油で栄養を強化した魚の餌に関する研究など,新たな飼料開発に関する報告もあり,海外における新しい研究のトレンドを知ることができたのも大きな収穫でした。

 今回シンポジウムに参加して多くの研究発表を聞くことができました。得られた知見を今後の調査研究や技術開発に生かしていこうと考えています。
発表ポスターと著者